『システム英単語』中学版[改訂版]—レベル・難易度・評判・特徴【レビュー】

タイトルシステム英単語 中学版
出版社駿台文庫
出版年・価格2021/3/1 1760円
著者霜 康司
目的・分類中学英単語
問題・ページ数
(完成日数)
372ページ 562例文 1824単語(熟語含む)
総合評価
対象・到達レベル
(偏差値目安)
中学復習
(ALL)
教科書基礎
(40~45)
教科書標準
(45~50)
入試基礎
(50~55)
入試標準
(55~65)
入試発展
(65~70)
※[入試基礎=日東駒専・共通テスト・地方国公立] [入試標準=MARCH・標準~上位国公立(地方医学部含む)] [入試発展=早慶・旧帝大・医学部・一橋・東工大(科学大)]

対象・到達レベル

・難関高校(偏差値65程度)までの入試に対応する中学英単語・熟語を網羅

・中学版システム英単語はキーセンテンス(ミニマルフレーズは無し)

 全国有数の難関高校を除くほとんどの高校入試に万全の対応ができるだけの網羅性があります。英語は年々重要性が増しているため、大学入試まで視野に入れるなら(中学生のうちから)システム英単語Basicまで取り組んでも良いかもしれません。英語の先取りは大学入試をかなり有利に進められます

2024年10月に『DUO-BASIC』という中学生向けDUOが発売されました。現役中学生なら例文も学年に応じて段階的に難易度を上げる本書の方がオススメですが、高校生以降の復習、大人の学び直しには『DUO-BASIC』をオススメします。

システム英単語とは?

 システム英単語も有名な参考書の一つです。最大の差別化はミニマルフレーズによる汎用性の高さなのですが、中学版ではキーセンテンスとして1800語を562の例文にして覚える仕様になっている点は注意が必要です。

 価格が少し高めの理由は、一冊で完了できるように内容の充実が図られているためです。中学ターゲットでは単語と熟語で2冊必要ですが、システム英単語なら1冊で済むことを考えると価格も納得できると思います

 速読英単語ほど長文を重視しているわけではなく、ターゲットほどシンプルすぎない。システム英単語はバランスの良い単語帳と言えます。大人の学び直しを謳う中学生向け参考書はシステム英単語くらいなので、日常会話に必要な単語・熟語・文法をチェックする意味でもコスパの良い一冊になっています。

システム英単語Basicとの違い

 高校生向けのシステム英単語Basicは高校基礎~共通テスト、地方国公立、中堅私大までを網羅し、システム英単語の代名詞であるミニマルフレーズもしっかり備えています。システム英単語(中学版)とBasicの単語レベルを比較すると、中学版は大学入試で言うところの偏差値40~55まで網羅しているのに対して、Basicはおおよそ45~60まで網羅しています。Basicには中学英単語の復習が多少含まれているため、高校偏差値50~60の現役生はBasicから始めるのがベストかもしれません。

 もし、高校入学前にシステム英単語(中学版)を完璧にできた、あるいは高校偏差値65以上であれば、Basicを経由せずにシステム英単語に接続してしまっても問題ありません。システム英単語は大学偏差値50~65までを網羅しています。もちろん、「中学版→Basic→システム英単語」とあえて重複部分を残しながら進むのも有効ですが、個人的には速読英単語のような文章形式を除き、単純暗記型の単語帳は冊数を少なくする方針が好みです。文章を通じて覚える方が単語に対する問題意識が芽生えやすく、記憶の定着にも有効に働くと思われます。

中学版はキーセンテンスによる高速周回(562例文)

 単語を覚える方法や形式は様々ありますが、もともとキーセンテンスによる暗記はDUOが有名です。例文の中に覚えるべき単語熟語が網羅されているため、例文と共に覚えられるだけでなく、例文音声による高速周回が可能です。本書は一周40分。効率良く周回できる形式がまさにシステムと冠される理由なのだろうと思います。

 また、単語は一語一訳で完結させず、できるだけ文章を生きる単語に触れ、単語の意味(概念形成)を行った方が長期的には効率が良くなります。一つの意味を完璧に覚えるというより、コアイメージを捉える方が重要です。

 注意点としては、2021年の最新版1800語に対して、2014年の旧版が1700語になっています。大人の学び直しなら気にすることはありませんが、2020年度から小学校での英語必修化の流れを受けて、多くの中学生向け参考書の内容は改訂されました。これは学習指導要領に示される「中学卒業までに学習する1200語」が「2200語~2500語」と増加した背景があります。とは言え、急に新しい英単語が生み出されるわけではありませんから、高校から中学校、中学校から小学校への前倒しがあったものと推測されます。

接続先のオススメはDUO

 システム英単語は高校版と中学版では特徴が異なるため、同じシリーズでありながらも実は接続先として有力ではありません。そこでシステム英単語[中学版]に慣れた人にとっては『DUO』がオススメです。システム英単語[中学版]を完璧に仕上げたのなら、大学偏差値で言うところの55程度までには到達していますからDUOに取り組むレベルとしてベストです。しかもなぜだか例文の数もDUOとシステム英単語[中学版]はほぼ同じ。

 特に「熟語」の暗記に苦戦している人にはキーセンテンス形式を推します。単語を覚えるためには高校生向けシステム英単語のミニマルフレーズが優秀なのですが、熟語はできるだけ文章に近い形式が覚えやすいと思います。その点で速読英熟語も候補に挙げられますが、速読英熟語[改訂版]は最初から英文のレベルが高く、大学の過去問ベースでもないため、個人的には積極的に薦められるものではないと考えています。

 それに単語と熟語を分けて冊数が増えるよりも、現役生にとっては単語と熟語が一つになっている方が時間効率から取り組みやすいでしょう。昔はかなり有名な単語帳だったDUOも、今となっては微妙な位置付けというか、あまり注目されなくなっていますが、派生語・関連語含めた収録語数は圧倒的なものがあり、補足情報も充実し、その完成度の高さは色褪せないものがあります。「システム英単語[中学版]→DUO3.0」によって、おおよそ大学偏差値60~65まで到達可能です。ただ、キーセンテンスとは言え、文法知識があってこそ真価を発揮する点と音声は別途有料という点は注意が必要です。

単語を覚えるときのコツ

・1周目から完璧に覚えようとしない

・短期間で同じ単語帳を同じように周回しない

・音声(音読)を活用して聴覚からの記憶も深める

・覚えにくい単語は脳への刺激を増やす

1周目から完璧に覚えようとしない

 まず、短期間で詰め込むより、ある程度長めの期間で復習しながら覚えた方が長期的な記憶定着にはプラスです。1日10時間やるより、毎日1時間を10日やった方がより良い。早い時期から毎日コツコツ勉強した方が良いのも、睡眠効果然り、実は時間というより日を開けないと進まない部分があるからです。

 次に、1日20単語をじっくりと覚えるより、1日100~200単語を大雑把に覚えた方が記憶定着にはプラスです。単語暗記はイラストの工程と似ています。最初の目標は「ラフ絵=なんとなく見たことがある」という程度のおぼろげな記憶で問題ありません。次の目標は「線画=見たことがある、たしか意味は〇〇だった気がする」、その次の目標は「ペン入れ=確実に見たことがあるし、意味は〇〇だったと思う」、そして最後の目標は「色塗り=この単語の意味は〇〇だ」という具合に全体を少しずつ完成に近づけていくイメージです。

 ただし、大雑把すぎるやる気のない姿勢では効果がほとんどありません。気持ちとしては一度に覚えるつもりで取り組むことで、脳が必要な情報として英単語を認識します。自分にとってどうでも良い情報にはしない意識が大切です。

短期間で同じ単語帳を同じように周回しない

 単語帳は一冊をとことんやり込んだ方が良いとよく語られますが、毎回同じように1ページ目から復習する必要もなく、また記憶への刺激を考えると複数冊の利用も決して悪いことではありません。1冊目の単語帳を終えたあと、2冊目の単語帳で同じ単語を見かけたときに「1冊目にもあった単語だ!」と記憶の定着が促されている感覚があると思います。ただ、記憶定着に効果的な複数冊の利用は同じレベル帯のものに限ります。

 もし仮に、同じ単語帳を復習するにしても、少し忘れた頃に多少の変化をつけてした方が効果は大きいと言われています。この点においてはエビングハウスの忘却曲線の考え方が有名ですが、忘却には個人差があるため、「忘れてしまったかもしれない」と思ったら復習するを繰り返すのがオススメです。思い出す行為が記憶の定着を促します。

音声を活用して聴覚からの記憶も深める

 未だに単語帳の音声を軽視する人もいるかもしれませんが、記憶と刺激の関係で言うと、刺激は多い方が記憶の定着が促されると言われています。例えば、子供の頃に慣れない病院で痛い注射を打った記憶を大人になってからも覚えているように、単語を覚えたいならその単語の刺激(情報)を増やすことが重要です。単語帳の音声はリスニング対策にもなり、記憶の定着も促されて一石二鳥です。

 単語の刺激(情報)も個人差がありますから、自分にとって何が新鮮で強い刺激になるのかを探してみるのも大いに有効です。特に現役生はまだまだ手段としての大学受験、勉強という義務的な見方が強い人が多いと思うので、自分の好きな物事と英語を結び付けてみるだけで一気に記憶定着が促される可能性があります。好きこそものの上手なれ。好きになること、楽しむことが何より大切です。ゲームが好きなら言語設定を英語にしてみたり、イラストが好きなら海外のイラストレーターをSNSで探してみたり、音楽が好きなら洋楽の歌詞を眺めてみたり、そんな工夫ひとつで記憶の定着率は大きく変わります。

自分がよく覚えているものを参考に、英単語の暗記も攻略する!

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