タイトル | システム英単語 中学版 | |||||||||||
出版社 | 駿台文庫 | |||||||||||
出版年 | 2021/3/1 1760円 | |||||||||||
著者 | 霜 康司 | |||||||||||
目的 | 中学英単語+熟語 難関高校(偏差値65)まで | |||||||||||
対象 | 現役生から大人の学び直しまで | |||||||||||
分量 | 372ページ 562例文 1824単語(熟語含む) | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
AI | 例文の構造分析 | |||||||||||
レベル | 中学復習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
中学版はDUO3.0と同じ例文形式
本書は2021年に駿台文庫から出版されたシステム英単語の中学版です。システム英単語と言えば「ミニマルフレーズ」が有名ですね。ミニマルフレーズとは、単語が複数集まってひとまとまりの意味を持つ慣用的な言葉の塊のこと。ターゲットで言うところの単語に応じた例文がフレーズとして各ページに一覧でまとめられてあります。フレーズ単位で覚えられるメリットは単語の有機的な記憶を促進し、一語一訳に囚われなくなること、フレーズをパーツとして英作文や英会話にも応用しやすくなるなどが挙げられます。
古くは単語帳と言えば『ターゲット』シリーズが有名でしたが、より発展的な理解を促せるフレーズ暗記が流行して以降進学校での採用率も高く、高校生向けの単語帳と言えば『システム英単語』が筆頭候補に挙げられるようになりました。しかし、中学版はミニマルフレーズを備えておらず、キーセンテンスによる562例文による高速周回を売りにしています。『DUO3.0』と同じ例文形式。「なぜ、中学版は例文形式なのか?」というと、(個人的な推測ですが)例文形式は高速暗記が可能な上に単語と熟語を一緒に覚えられるからです。基本単語中心の中学英単語においては効率的な方針と言えます。フレーズ暗記は覚えにくい単語を覚えやすくなる利点が際立ち、高校以降の難易度の上がった単語を覚える上でより有効に働きます。
他方で、例文形式では2024年10月に『DUO-BASIC』が本家『DUO3.0』と近い質を備えて発売されました。であるなら本書よりも『DUO-BASIC』に優位性があるのかというと、中学1年生に合わせた例文から徐々に難易度が上がる本書に比べて『DUO-BASIC』にはそうした配慮があまりありません。つまり、現役生なら本書の方が間違いなく使いやすくなっています。なお、この点で言うと本書の競合は『320例文で効率よく覚える 中学英単語・熟語2000』です。
AIによる例文の構造分析
本書の例文は徐々にステップアップするため、決して難しくはありません。しかし、文法知識の曖昧な人は“知っている単語を拾い上げるだけの読み方”に陥り、理想的な例文暗記の効果を発揮できません。文法知識も何もない状態で単語を覚えるなら『ターゲット』シリーズがオススメです。単語の一語一訳だけ覚えることにデメリットがないわけではありませんが、そうは言ってもその段階なら特別なテクニックの必要ない単語帳の利点が際立つからです。
例文暗記というのは例文を覚えることで、それに含まれる単語と熟語も自然と覚えられるという理屈です。が、それだけではなく、例文の主語や文型の把握、動詞の語法、名詞に係る形容詞、動詞を修飾する副詞、時には接続詞などを意識できるかどうかによって情報の質に雲泥の差が生まれます。情報の質の差は記憶の定着率の差となり、延いては学習効率の差です。自分にとって意味のある対象については自然と思考と記憶が働きますが、意味のない対象と認識したものについては人間は全く考えずに覚えもしませんよね。
ただ、今ならAIによる構造分析で曖昧な文法知識を復習しながら取り組めます。しかも本書には文法事項の重要な論点がまとめられているため、本書だけで中学英単語・熟語・文法を全て押さえられます。すでにある程度仕上がっている状態で中学英語を復習するなら『速読英単語[中学版]』がオススメですが、その前の段階までは本書が引き上げてくれるでしょう。本書は高校生以降の中学英単語の復習としてもちょうど良い。理想を言えばリーディングやリスニングまでチェックできる『速読英単語[中学版]』をしっかりと終えて高校英語に入りたいところですが、中学英語の知識のみに絞れば本書だけで十分です。高校入試で言うと、本書だけで偏差値65までの高校に合格できる下地になります。
システム英単語Basicとの違い
高校生向けの『システム英単語Basic』は高校入門~共通テスト、地方国公立、中堅私大までを網羅し、ミニマルフレーズも備えています。おおよその偏差値で比較すると、中学版は大学入試で言うところの偏差値40~55までを網羅し、Basicは45~60まで網羅しているイメージです。Basicには中学英単語の復習が多少含まれているため、高校偏差値60未満の中学復習が必要となる層にはちょうど良いと思います。ほとんど中学英語を忘れてしまっているなら本書から取り組むべきです。
もし、高校入学前に本書を完璧にできたのであれば、Basicを経由せずに『システム英単語』に接続してしまって問題ありません。『システム英単語』は大学偏差値50~65までを網羅しています。「中学版→Basic→システム英単語」とあえて重複部分を残しながら進むのも有効です。しかしながら本書(例文形式)からシステム英単語(ミニマルフレーズ)への接続は理想的とは言えません。後述する『DUO3.0』がオススメです。
接続先のオススメはDUO3.0
システム英単語は高校版と中学版では特徴が異なるため、同じシリーズでありながらも実は接続先として有力ではありません。そこで本書に慣れた人にとっては『DUO3.0』がオススメです。本書を完璧に仕上げられたのなら、大学偏差値で言うところの50~55までには到達していますから『DUO3.0』にちょうど取り組めるレベルに達しています。しかもなぜだか例文の数も本書とほぼ同じ。
特に「熟語」の暗記に苦戦している人にはキーセンテンス形式を推します。単語を覚えるためには高校生向けシステム英単語のミニマルフレーズが優秀なのですが、熟語はできるだけ文章に近い形式が覚えやすいと思います。その点で『速読英熟語』も候補に挙げられますが、『速読英熟語』は最初から英文のレベルが高く、大学の過去問ベースでもないために積極的に薦められるものではないと考えています。
それに単語と熟語が一冊になっている利点は現役生にとって大きなものでしょう。昔はかなり有名な単語帳だった『DUO3.0』も、今となっては微妙な位置づけというか、あまり注目されなくなっていますが、派生語・関連語含めた収録語数は圧倒的なものがあり、補足情報も充実し、その完成度の高さは色褪せないものがあります。「システム英単語[中学版]→DUO3.0」によって、おおよそ大学偏差値65以上まで到達可能です。ただ、音声は別途有料のCDが必要な点は注意です。