単語帳の特徴を解説—ターゲット・システム英単語・速読英単語・LEAP・DUO・キクタン【レビュー】

ターゲット・システム英単語・LEAP・速読英単語・DUO・キクタンの特徴

ターゲット―シンプルだが、使い込める要素もある

 ターゲットは一語一訳一例文のシンプルな形式で万人に使いやすい単語帳になっています。シンプルな形式の利点は文法知識がほとんど必要ないところにあります。単語帳と言えども、文法知識の欠如が効率を下げてしまいかねませんが、ターゲットなら文法学習前に取り組んでもその弊害は小さくて済みます。今では無料音声も手に入り、大学入試を徹底分析した上で出る順にまとめられた構成は点数に直結しやすいと言えるでしょう。

 もし、文法知識を十分に備える人がターゲットを使うなら例文をフル活用することをオススメします。「例文を読む→わからない単語を把握する→該当する単語の意味を確認する」という順序で行うことで問題意識から記憶の定着率の高い覚え方ができます。さらに例文暗記から英作文対策まで取り組めたら、約2000近いフレーズをストックすることもできます。ここまで使い倒せたら単語帳の枠を超えた実力が手に入るでしょう。

システム英単語―汎用性の高いミニマルフレーズ

 ミニマルフレーズとは、単語をよく使われる短いフレーズでまとめた形式のこと。ターゲットの一語一訳よりもパーツを意識できるため、スピーキングやライティングにも活用しやすい形で覚えられます。これはフレーズの分だけより多くの単語を覚えられることも意味しているため、かなり効率が良く、大学受験用の単語帳の中では一番人気かもしれません。この意味では全ての単語に例文がついているターゲットはより優れていると言いたいところですが、例文暗記はフレーズ暗記よりもハードルが高く、現実的にフレーズ暗記が落としどころとしてはちょうど良くなっているのではないかと思われます。

 また、多義語(180語)を章単位でまとめられている点も助かります。おそらく多義語をまとめて収録している単語帳は本書だけです。難関大では重要単語の意外な意味を出題することも多い。なお、大学受験用システム英単語はミニマルフレーズが最大の特徴ですが、中学版にはそれがありません。中学版はキーセンテンスと呼ばれるDUOに近い形式になっています。

LEAP―単語帳+文法書のようなつくり

 LEAPの特徴は、文法書を組み合わせたかのような情報量の多さです。単語によって押さえておきたい知識を余すことなく補足情報として盛り込んでいます。例文を載せることはもちろん、フレーズで覚えるべき単語ならフレーズを、文法語法問題として頻出ならその用法を、スピーキングで活用される単語ならそのヒントを掲載しています。ただ、大学受験用の単語帳というよりCEFRに基づく実用的な現代単語を基準に選定されているため、ターゲットやシステム英単語とは単語の傾向が異なります。

 その点を考慮すると、どちらかと言えば大人の学び直し向きですが、だからと言って大学受験に役に立たないということは全くありません(重複する部分はかなり多い)。また、情報量の多さをどう捉えるかは使う人次第です。単語帳は単語を覚えられれば良いという人にとっては情報量の多さはマイナスに働いてしまうかもしれません。

速読英単語―長文・リスニング対策もできる多読参考書

 速読英単語の特徴は、長文形式で単語を覚えられることです。長文には無料音声も付いているため、リスニング対策としても機能します。しかし、長文を淀みなく読めるだけの文法力と単語力がないと本領を発揮できません。速読英単語は純粋な単語帳というより、多読参考書に近い位置づけです。大学受験用の単語を収録こそしているものの、出る順でまとめられているわけでもないので、最後まで使い倒してからようやく成績に反映されます。

 長文は大学の過去問ベースで質は高く、少しでも多くの英文に触れたい受験生には使い勝手が良いでしょう。つまり、受験期終盤の隙間時間に使う単語帳としてはベストな選択となります。大人の学び直しの場合、英語が得意だった人が勘を取り戻すには良いとは思いますが、英語を勉強し始めたばかりの初心者には全く向きません。

DUO3.0―単語と熟語を例文で覚える

 DUOの特徴は例文ごとに覚えるべき単語と熟語を網羅し、それらの対義語、関連語、派生語、用法などの情報を掲載していることです。システム英単語(中学版)と同様に、音声には例文が収録され、例文を聴いているだけで単語と熟語を記憶できるようになっています。周回速度は約60分。覚えにくい熟語も単語と一緒に例文で覚えられる点は、単語帳の冊数を減らせる最大の魅力となっています。

 しかし、DUOは2000年に出版されてから目立った改訂もなく、もともと大学受験を意識した単語帳というよりLEAPに近いコンセプトでした。そのため、今の受験生にオススメできるかと言われると微妙なところもありますが、「システム英単語(中学版)+DUO」の2冊だけで中学~早慶準備レベル(偏差値65程度)まで網羅できる時間効率の良さは唯一無二です。現役生にどれか一冊を薦めるなら、意外と本書かもしれません。それだけ単語と熟語を一度に覚えられる点は時間の無い現役生にとって想像以上のメリットとなるでしょう。

キクタン―音声の利便性は随一のフレーズ・センテンスも備えた万能型

 キクタンはシステム英単語のミニマルフレーズとターゲットの例文まで備えたハイスタンダードな単語帳です。知名度では少々劣りますが、総合力では他の単語帳よりも頭一つ抜けているのではと思うこともしばしばあります。特に音声の利便性は随一。キクタンの音声ファイルはチャンツ・フレーズ・センテンスに分かれており、用途別に分けて利用しやすく、フレーズとセンテンスは英語のみの音声となっている点も評価できます。チャンツ独特のBGMは好みですが、個人的には不要派です。※フレーズとセンテンスのみ利用しています

 現代受験英語では、共通テストのリスニング得点比率が50%になったことで音声学習の重要性が強く意識されるようになりました。しかし、単語帳付属の音声は使いやすいものもあれば使いにくいものもあります。進学校や予備校での指導もなければ、おそらく現役生は音声学習を軽視しがちです。使いにくいものだったら、あっさり使わなくなるでしょう。その点でキクタンの音声はチャンツを除けば癖がなく、システム英単語とターゲットの特徴を併せ持つ単語帳として高い評価を得られるものになっていると思います。

オススメ単語帳ルート※2024年6月現在

 結論から述べると、現役生にも大人にも『システム英単語(中学版)→DUO3.0』です。中学と高校それぞれ一冊目の単語帳にはできる限り時間をかけずに重要単語を覚えてしまう方が良い。そして、それらを仕上げたあとに『速読英単語』シリーズ(入門、必修、上級)で多読しながら単語力をさらに確認・向上させていきます。英語は最終的に「語彙力と慣れ」なので、その点で速読英単語は優れた単語帳です。音声学習を重視したいなら『キクタン』を加えるのもあり。

 また、暗記がなかなか進まないという人は単語なら「語源図鑑」、熟語なら「DUO elements」といったイメージを加えられる参考書を挟みましょう。他方で早慶向けの上級英単語が乏しいと感じるなら、速読英単語(上級)を終えたあとに『ドラゴンイングリッシュ必修英単語1000』『速読英単語(上級)の最新版以外』、分野別なら『ACADEMIC(人文・自然)』を加えると良いと思います。『単熟語EX英検準1級』『TOEFL上級英単語2500』なども悪くない選択肢ですが、追加するには量が多いために時期を選びます(例文に目を通す程度なら気軽に)。ドラゴンイングリッシュは今までの確認と入試重要単語の理解に重きが置かれ、速読英単語は最新版以外の入手も比較的容易ですから、使い勝手も変わらずに難単語を増やすことができます。『ACADEMIC』は速読英単語と同じ形式で分野別の単語を中心に学べます。

 なお、当サイトでは単語以前に最低限の文法を押さえておく方針を推奨しています。システム英単語(中学版)の前に『高校とってもやさしい英文法』で英文の基礎構造を理解し、ゆっくりでも読めるようになっておくこと。それによって単語を覚える際に、品詞や用法、例文を正しく意識できるようになります。本当にゼロから単語帳に触れてしまうと、アルファベットの羅列と意味を強引に結びつける作業に意欲も時間効率も下がると考えています。言い換えれば、基礎の基礎単語は単語帳を用いずに「とってもやさしい」を通じてなんとなく把握しておくだけで十分です。

単語帳の複数冊利用も有効

 単語帳は冊数を増やさずにとことん一冊を使い倒すように言われます。確かに下手に複数冊に手を出して参考書コレクターにでもなってしまったら目も当てられません。しかし、記憶の定着に関して言えば、複数冊の利用が好影響を与えることも研究結果によって示されています。同じ場所で同じものを何度も見続けるよりも、違う場所で同じものを見る方が記憶定着への寄与度は高いのです。

 つまり、単語帳を複数冊利用すれば「違う場所で同じものを見る状況」を構築でき、頻出の重要単語は特に記憶の定着が促されるようになるということ。さらに当然のことながら重要単語の選定は単語帳によって異なりますから、複数冊の利用によって網羅率も向上します。複数冊の利用は負担が大きくなるという見方もあるかもしれませんが、実は同じレベル帯の単語帳なら重複する部分の方が多いために負担は大きくありません。例えば、ターゲット1900とシステム英単語、速読英単語(必修編)、LEAPの4冊なら、全体のうち約80%は重複しているため、2冊目以降は平均して約200語ずつ増やすイメージになります。

 全ての単語帳を完璧にするのではなく、主軸にした単語帳を完璧にするための補助教材として複数冊を利用するなら心理的な負担もよりいっそう小さくなるでしょう。それなら必ずしも最新版ではなくとも有効ですから、中古で安く手に入ります。覚えにくい単語ほど様々な場面で触れること。もちろん、これも記憶法の一つに過ぎないため、複数冊の利用は面倒と感じるなら、英作文やスピーキングに意識して用いてみるなど方法は他にもたくさんあります。

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