タイトル | SKYWARD総合英語 | |||||||||||
出版社 | 桐原書店 | |||||||||||
出版年 | 2022/3/7 | |||||||||||
著者 | 佐藤 誠司 | |||||||||||
目的 | 英文法 | |||||||||||
分量 | 755ページ | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
対象・到達
【対象】
・実用英語(発信力と受信力)を意識して学びたい人
【到達】
・高校までの文法知識を運用しやすいようにアップデートできる
本書は2022年に桐原書店から出版された佐藤先生による文法書です。佐藤先生と言えば、学校で配布されることもあった『アトラス総合英語 英語のしくみと表現』の著者としても有名で、本書はそれから10年の歳月を経て出版された実用性重視の文法書になります。特定の試験対策は意識せず、とにかく発信力と受信力にこだわった内容から大人の学び直しに適した文法書に仕上がっています。
レイアウトに関しては従来からある文法書を引き継いでおり、実用的な観点からアレンジしたものと言ったらわかりやすいかもしれません。受験英語で親しまれている竹岡先生に近い観点もあり、全体的に情報量が多く、正しく活用できる人はそう多くない印象です。一応、文法書としてはじめの一歩から始まっているものの、目指すレベルが高いと言いますか、実用的な観点から外せない情報や解説の言い回し一つにしても読者に伝わるか不安があります。
特定の試験対策は意識されていない本書ですが、長期的に英語を捉えるなら現役生であっても使用できます。受験勉強のベクトルは実社会で活躍するための経験や能力として過剰な部分がありますから、最初から実用英語を意識した上で受験を捉えてしまうのも戦略として悪くありません。受験英語が実用性を年々意識しつつあるため、本書がアカデミックな文法書に代わってもおかしくない内容になっています。
本書の特徴と利点
冠詞は日本語に訳さないことが多く, 日本語を英語に訳す際に冠詞を入れ忘れることも多い。たとえば「私はネコを飼っている」は, I have a cat.と英訳できるが、ここで「ネコ→ a cat」と言い換えるためには, 冠詞の使い方を正しく知っておかなければならない。I have cat.でも意味は通じるだろうが, 冠詞の誤用が誤解を生むこともある。
SKYWARD総合英語 P432より引用
本書の特徴を一言で言い表すなら、一貫して発信力と受信力のための解説と情報を意識していること。引用は冠詞の章にある「Learning Target この章で学ぶこと」から。これだけで伝わるかはわかりませんが、一般的な文法書の「〇〇は△△である」という杓子定規な解説とは違い、本書は実用英語(発信力と受信力)を意識する際の頭の使い方に沿った解説になっていることです。
その中でも「Chapter18 情報の伝え方」や全編にわたって補足収録された「語彙」、付録の「基本動詞の使い方」「単語の成り立ち」「英語の発音」などは一般的な文法書よりもわかりやすく充実した内容です。「that節の見分け方」や「前置詞句の見分け方」などの各種フローチャートもわかりやすい。本書は中学・高校英語という枠組みを取り払って、英語学習する全ての人がベースにできることを目指した文法書という印象です。講義調というより整理することに重きを置いているので、通読するよりは辞書的な使い方になると思います。
英語中級者以上の文法書としてなら
現役生や英語初心者が用いても悪くありませんが、本書をしっかりと活用できる層は英語中級者以上という結論です。文法書としての基本も押さえつつ、4技能全ての観点から情報を詰め込んでいるので、まだまだ英語に慣れていない人には重く映ります。「頭の良い人は当たり前のレベルが高い」と同じ。逆にある程度英語に慣れている人なら、一つの知識を運用の観点から広げてくれるものとなって高い評価を与えると思います。
ただ、2025年現在文法書もユニークなコンセプトで出版されるようになり、本書の独自性が相対的に薄まっています。例えば、関先生の『真・英文法大全』は講義調で類を見ないほど読みやすく仕上がっていますし、大西先生の『1億人の英文法』は英会話のTipsが豊富で目的次第では唯一無二の存在感を示しています。最近発売された竹岡先生の『大学入試 読むため書くための英文法ハンドブック』は『表現のためのロイヤル英文法』の現代版とも評価したくなる利便性の高い文法書です。本書が学校配布のアカデミックな文法書と同じ土俵で差別化を図っているなら採用する価値は見出されますが、もっと広い選択肢から検討すると評価は難しくなります。
おそらく一般的な英語学習者ではなく、英文学科の大学生や英語教員を目指す人、留学予定のある人、将来英語を使って仕事をしたい人にとっての文法書という位置づけがちょうど良いと思います。英語教員が用いるような『英文法詳解』や『英文法解説』といった本格的な文法書の前に取り組むもの。つまり、学生とプロの間を埋める文法書です。一般的な英語学習者にとってはどうしても特定の試験対策が重視されますから、大学受験やTOEICを意識した解説も多い関先生の『真・英文法大全』などが優先されるだろうと思いました。