英文読解のグラマティカ

タイトル英文読解のグラマティカ
出版社論創社
出版年・価格2018/12/30
著者富士哲也
目的・分類英文読解
問題・ページ数256ページ
総合評価
対象・到達レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達

【対象】
英語教員、講師、英文学科の大学生、すでに東京一工や早慶に合格できる実力を備える受験生

【到達】
・一文を積み重ねる読み方から、文章全体を構造的に捉えて読解できるようになる
・自由英作文の考え方も得られる

 本書は英文全体を情報構造によって正確に理解することを目指す参考書です。単なる一文の積み重ねでは前段で述べられていることを忘れてしまったり、設問で指し示された部分だけ読んだり、結局のところ英文全体を通じて何をどう構成して主張しているのかまで理解が及ばないことがあります。

 そうならないためには現代文的な読解を英語でも行うこと。当然と言えば当然ですが、英語特有の論理展開や表現があり、個々の文は全体の構造の一部、必然的な形に変化しています。逆に言えば、個々の文の形(倒置や時制の変化、動詞や副詞の選択など)から構造全体、延いては筆者の伝えたいことを推察することが可能になります。一般的な英文読解の参考書、ディスコースマーカーで英文全体の構造を把握するといった基礎的なものよりも、さらに深く踏み込んだ内容です。
 一応、本書は大学受験向けの参考書に位置付けられていますが、現役生の多くが内容を理解して実力に資するのは難しくなっていると思います。というのも、大学受験レベルなら多くは一文の正確な理解を積み重ねるだけでも合格点には達するからです。あるいはそれができるなら英文全体の構造を把握することもそこまで難しくありません。ただ、強いて挙げるなら、英文の難易度が高く、時間制限も厳しい最難関大の場合、本書の提示する情報構造による読解が大いに役立つ可能性があります。東大志望には特にオススメかもしれません。

本書のレイアウトは個人的にかなり好みです。図表もわかりやすく、単熟語も提示され、訳出も違和感なくされています。現役生には【例文を読む→単熟語チェック→和訳から文構造を確認する】だけでも十分かもしれません。他方で、英文学科の大学生などには全てを読み込んでほしいほどの完成度です。

現代文にも生かせる情報構造の理解

 現代文の成績はなかなか伸びないと言われます。それは語彙力の他に、前提知識や背景が足りないために即効性のある方法がないためです。大人の会話に子供がついていけないことと同じ話。これを解消するために『現代文キーワード読解』などの用語を押さえる方針もよく提示されています。

 もちろんそうしたことも大いに有効なのですが、文章の背景をはじめとする“言葉の曖昧さ”を含む設問は「試験」という事柄において大きな問題になり得る視点を忘れてはなりません。複数の解釈を導ける文章は採用されにくい。つまり、現代文の解答というのは論理的に導ける必要があり、それは仮に前提知識や背景が足りないとしても、言葉の客観的な意味や文章構造から正確に導ける部分が存在するということです

 そして、そうした構造的な理解は再現性が高いため、現代文の得点が安定しないといったことも起きにくい。英語の文章は特にそれが顕著なので、本書のような情報構造や文法を軸とする論理的な読解が有効に働くわけです。ただ、繰り返しますが、本書の内容は多くの現役生に不要と言えるほど重く、英語教員や講師、英文学科などの大学生にちょうど良いものとしました。内容は本当に素晴らしいため、東大や早慶の英文を流暢に読めるようになってから余裕を持って取り組んでほしいと思います。

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