高校生向け英語参考書一覧—中学復習から難関大受験まで【参考書ルート】

『できる限り少ない参考書と問題集で最大の効果を上げる』を忘れずに、個人的にオススメしたい参考書ルートを考えました。様々な参考書の情報で溢れていますが、その選択理由まで踏み込んで説明しています。

目次

中学復習は省略

 中学英文法は高校英文法で網羅されているので省略可能です。中学英単語・熟語は高校英文法を押さえたあとに取り組みます。なお、英語が伸びない原因として、中学英単語・熟語の一語一訳を覚えているだけで用法や品詞の知識がない状態が挙げられます。この状態を改善するにも、必ず英文法は徹底的に押さえて『なぜ、単語・熟語の用法や品詞が重要なのか?』を意識できるようにしましょう。

英語学習の方針

英文法→英文解釈→(単語・熟語暗記)→(速読英単語)→長文読解・リスニングとします。英文法を最優先で仕上げ、速読英単語で単語・熟語・長文読解(準備)・リスニング対策を全て行います。

 また、使用する参考書・問題集は復習・再利用します。特に文法問題集『英文法・語法 良問500+4技能』は利用できる部分が多いため、この方針の命運を握っていると言っても過言ではありません。

なぜ、英文法を優先するのか?

 英語の語順・文構造を自然なものとして認識できれば、その後の学習効果が飛躍的に上がるからです。あらゆる英文から得られる情報の質が向上し、単語の暗記においてもアドバンテージを発揮します。語法の知識から単語と密接に結びつく前置詞や目的語の種類、品詞などをしっかり意識して覚えられるようになります。単語の暗記から始めてしまうと、そういった点は必要な情報として認識されません。

 また、単語は英文法学習の過程で覚える実践暗記の方が記憶の定着率が高いと思います。闇雲に単語をインプットしたところで、いつどこで使うかもわからないものは記憶に残ろうとしません。極端に言えば、アルファベットの羅列と意味を結び付けているだけ。そうではなく、常に実践の中で「これが読めればわかるのに…」と問題意識が生じた状態で単語を覚えた方が記憶に残るはずです。

 単語・熟語から暗記する利点は、英文法のような理解を求められずに済むため、子供にとっては特に取り組みやすいからと言えます。中学生レベルまでならそれでもいいのですが、高校生、ましてや大学受験を意識するなら英文法を優先できるだけの理解力を備えていてほしいのです。

高校英文法・文法問題集

英文法『EVERGREEN(旧FOREST)』

高校とってもやさしい英文法・英文読解

文法問題集『英文法・語法 良問500+4技能』

 高校英文法は『EVERGREEN(旧FOREST)』『ロイヤル英文法』など定番の一冊で十分です。最低2、3回は読んで理解に努めましょう。もし、この分厚さに挫折してしまう人は『高校とってもやさしい英文法』から始め、『高校とってもやさしい英文読解』で英文読解の基礎の基礎を大まかにイメージしましょう。そのあとなら『EVERGREEN』が各単元の詳細な解説として補完的に作用します。

 文法問題集は『英文法・語法 良問500+4技能(誤文訂正、空所補充、整序英作文)』を3冊採用します。この3冊は文法問題集というより、様々な英文(無料音声込み)に慣れ、英文法語法を押さえながら、英作文の知識を備える総合問題集です。無料音声の活用は、速読英単語への接続を円滑にします。

英文解釈

・肘井学の読解のための英文法(必修編+難関大編)の2冊

 英文法をしっかり押さえていたら、英文解釈の理解度が格段に上がります。人によっては文法問題集だけで事足りる可能性もありますが、念のため、その2冊を一読して解釈の全貌を把握しておきます。本書に取り組む前に「高校とってもやさしい英文読解」に取り組んでおくのも良いでしょう。中堅大・地方国公立(偏差値55前後)なら必修編のみでも問題ありませんが、大学の偏差値と英文の難易度はそこまで相関していないため、2冊読んでおくに越したことはありません。※偏差値と問題の難易度との相関は高い

 他にも英文熟考(上下巻)や難関大向けに英文読解の透視図、ポレポレなどもありますが、英文解釈は著者との相性が出やすいので読みやすいものを選んでください。重要な点は、文構造がうまく理解できないときに参考書に戻って確認できるかどうかです。網羅性に関してはどれもそれほど変わらず、肘井学の読解のための英文法は出版年が比較的新しく、最新の受験傾向を反映しているため選出しました。

・英文解釈の技術シリーズ

 シリーズ4冊と分量は多いですが、基本的には入門と基礎の2冊で十分です。英文解釈の技術は英文がやや古さを感じさせるものの、音声が非常に使いやすく、解説との相性が良ければ積極的に薦めたいものとなっています。

英文解釈の注意点

 英文解釈は英文法で身につけた知識を読解に接続するためのものです。この方針で度々述べている『文構造を意識する』とは、SVOなどの構造から修飾関係、関係代名詞、倒置、省略などを把握しながら文章を捉えて読むことです。すでに和訳(意味)を知ってしまった英文を理解できるのは当然です。知っている文章を何度も読んでも意味がありません。せいぜい単語を思い出せるくらい。単語知識に依存した読み方ではなく、構造的な読み方を徹底してほしいのです。

単語・熟語・構文の暗記

 この方針では、いわゆる単語帳を使った単純暗記は推奨していません。必ず文法問題集や速読英単語といった英文に触れながら、その都度覚えることを推奨しています。ただ、隙間時間を活用したり、覚えていない単語を網羅的に把握したりするときには単語帳の利用価値があります。

 英語は最終的には語彙力になるため、余裕があるなら単語帳に取り組むに越したことはありません。その際、オススメしたい単語帳は『システム英単語[中学版]』『DUO3.0』です。この2冊で中学復習から早慶準備レベルまでの単語と熟語を網羅できます。次の速読英単語の段階が終わった後でも前でも構いません。

速読英単語(多読参考書)

・速読英単語[中学版][入門編][必修編][上級編]

 この段階まで進むと、速読英単語を使いこなせるだけの単語力と文法力がすでに備わっています。それなりに正しく長文を読めるようになったあとは、できる限り多くの英文に触れることが重要です。単語の確認もできたらなお良し、ということで速読英単語で単語を網羅しながら長文(リスニング)に触れます。※速読英熟語は大学の過去問ベースの文章ではないので使用しません。

 もし、熟語と構文に不安があったらキクジュクを使用します。基本的に熟語は『システム英単語[中学版]』と『DUO3.0』、構文は『英文法語法良問500』を使用していたら十分ですが、『キクジュクSuper』だけでも1123語もあるので良い具合に補完できます。『解体英語構文』や『英語の構文150』などは不要です。

速読英単語を推す理由

 受験英語は「リーディング」「リスニング」の能力を伸ばせば得点できます。そのために誰もが単語帳を何周も繰り返して覚えるわけですが、同じ時間かけて単語だけ覚えるより、単語の他に速読力、リスニング力も同時に向上させられる速読英単語の方がどう考えても効率が良いでしょう。

 ただ、速読英単語に取り組む前に、どれだけ英文法を仕上げられるかで質が変わってきます。大切なことは長文の文構造を文法的な理解のもと正しく捉えること。リスニングの際も必ず文構造を意識しながら聴くことです。ちなみに『何度も聴いていれば自然と聴き取れるようになる』は半分嘘です。文構造も何も理解せず、やみくもに聴いたところでカタカナ英語に変換されるか、聞き覚えのある単語を拾うだけで全く効果はありません。

音声使用時の注意点

1.英文音声を聴きながら、英文を目で追う

2.その際、文構造を意識しながら頭の中で英文の意味を英文のまま理解する

3.英文を隠して音声のみを聴く

4.その際、音の細かい変化(消失・結合)まで注意して何度も聴く(意味よりも音に着目すること)

5.最後に音の変化を受け止めながら、意味を理解する(音と英文の意味を繋げる)

 1~5を100回、200回と繰り返すと、初めての英文でも同じ文構造(音)を持つものなら全て聴き取れるようになります。この音声学習は絶対に行ってください。この場合も英文法をしっかり押さえていないと、文構造の理解が浅くなり、英文音声トレーニングの質が大きく下がってしまいます。文構造を理解できないまま、英文を何度も聞いても意味がありません。細かな音の聴き分けのために『英語耳』などで発音記号と正しい発音の仕方を学んでおくとなお良し。

長文読解

・過去問(志望校・併願校・共通テスト)

 長文演習は全て『過去問』にします。共通テスト(旧センター)の過去問は大学入試センターのホームページから、各大学の過去問は大学のホームページから無料でダウンロードできます

 予想問題集より絶対に過去問です。過去問が受験勉強の中心にあると言っても過言ではありません。過去問を解いていると、そのうち答えの嗅覚が鋭くなります。答えの嗅覚とは、作問者の意図を無意識に把握し、メタ的な視点から問題の答えを絞れる能力のこと。この能力は予想問題集では育ちません。

 また、過去問演習の際は本番より短い時間設定で解くようにしましょう。時間に追われて焦りと共に読む長文は良い訓練になります。さらに演習から負荷をかけておけば、本番が一番楽だったと思えるようにもなります。本番でこのメンタルになれると非常に有利です。本当に有利です。絶対に有利です。とてつもなく有利です。

過去問を繰り返し解く意味はあるのか?

 毎日繰り返し解いても意味がありませんが、少し忘れた頃に解く、また少し忘れた頃に解くを繰り返しましょう。過去問は大学専用問題集なので、本番形式の演習のみならず、今まで知らなかった知識を押さえる目的でも使用します。英語なら全ての英文から重要単語・熟語・構文を抽出して単語ノートにまとめて覚えます。

 英語長文は単語が無数にあれど、文構造はどれも似たり寄ったりという事実に気づくことが大切です。過去問も含めた長文演習を繰り返していると、そのうち文構造を網羅してしまう瞬間が訪れます。例えば、高校生が中学一年生の英文を見たら即座に意味を理解できますよね。これは読むというより、ほぼ見るだけで理解できる状態です。

 この状態を早くに実現するにも英文法を完璧にしてほしいわけですが、何度も同じ長文の“文構造を意識しながら”繰り返すだけで似ているものは瞬時に理解できるようになります。言い換えると、大学受験レベルの英文は国語の現代文ほど複雑ではないということでもあります。

過去問の注意点

 過去問を繰り返し解いていると、同じ問題形式と難易度、かつ過去問と似たような問題が出てくるという思い込みを誘発する場合があります。この思い込みは試験本番の動揺を生むため、常に自分の実力を意識することが重要です。

 過去問が解けるようになるのではなく、過去問を通じて実力を伸ばすことに100%集中してください。過去問もまた未知の問題に備える一つの準備に過ぎず、当然準備が足りなければ本番で動揺しやすくなります。その準備の材料として、過去問は他の問題集よりも大学に特化した優位性があるに過ぎません。

速読ができるようになったら?

 文構造を瞬時に捉えられ、速読の感覚を掴めたなら、あとはもう単語・熟語・構文を覚えるだけです。最終的に英語の勉強は語彙力を強化していくのみ。完全な暗記科目になります

長文問題の優先順位

 市販の問題集には、大学の過去問を掲載しながら音声も付いている問題集があります。英語学習において音声利用は極めて重要なので、音声利用できるものがあれば必ず優先してください。もし、「過去問ではないが音声利用できるもの」と「過去問だが音声利用できないもの」の2つで悩んだ場合、すでに使用している音声付き過去問の周回を前提に、リスニング能力を伸ばしたいなら前者を、リーディング能力を伸ばしたいなら後者を選択しましょう。

英作文・要約・英文和訳

 [今後掲載予定]

 英作文対策は『文法語法良問500』のシリーズの解答解説で英作文への接続は意識されています。英作文の基本は「英作文のフレーズ暗記」と「和文和訳」、「自由英作文」の3つですが、フレーズ暗記と和文和訳は今までに触れたあらゆる英文とその和訳比較で自然と醸成されているとは思います。自由英作文だけは英語特有の論理展開などを学ばないといけないので参考書は必須です。

 英作文の添削が最大の問題点ですが、それは無料のChat-GPTでもプロンプト次第で攻略できます。ただ、正しい添削になっているかどうか、効果的なプロンプト(日本語は英語に比べて弱い)はまだまだ検証が必要です。ちなみにこれは数学や小論文の添削にも活用できます。

必須の参考書・問題集(まとめ)

英文法書「EVERGREEN」

英文法・語法 良問500+4技能(誤文訂正、空所補充、整序英作文)

・速読英単語

・過去問

 中古品も加えれば、これら全て集めても3000~5000円くらいです。お金をかけたら成績が向上するのではなく、本人の知的好奇心と正しい参考書選び、取り組み方次第で十分に伸びます。現代はお金をかけずに成績向上が可能なことが少しずつ証明されていくでしょう。※AIを活用した学習も今後取り上げる予定です。

 また、上記の方針は文法に偏っているように感じるかもしれませんが、文構造を完璧に理解できると、精読・速読・英作文・リスニングなどあらゆる学習の質が向上するので『英語は慣れ』を体現するのに最も効率的であると考えます。ただし、英単語・熟語を補完するまでは文法のポテンシャルを最大限発揮できないのも事実。速読英単語に取り組む段階になって初めて、英語力の向上を急速に実感していくでしょう。

英検利用も大いに有効

 受験英語は文構造が複雑で単語の意味がわかるだけでは通用しないこともあるため、難関大向けの英文解釈や国語(現代文)のようなパラグラフごとの分析が時として求められますが、英検は文構造が素直で読解しやすく、試験対策は難しくないとよく評価されています。誤解を恐れずに言えば、英検は何より語彙力が重視される試験

 昨今、入試に英検を用いる大学が増えています。例えば、立教大学なら英検準1級取得時の(スコアに応じて)共通テスト8割~満点換算されるため、かなり有利に進められます。もちろん、ライティングやスピーキングも必要な英検の合格(しかも準1級)は簡単とは言えませんが、願書出願まで何度も受検でき、受験英語のような難しさがないことを考えると、英検を大学受験に用いる戦略は魅力的です。

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