| タイトル | スピーキングのための英文法帳 スピブン500 | |||||||||||
| 出版社 | アルク | |||||||||||
| 出版年 | 2026/2/20 | |||||||||||
| 著者 | 桑原 雅弘 | |||||||||||
| 目的 | 英会話のための英文法 | |||||||||||
| 対象 | 英検3級以上 | |||||||||||
| 分量 | 432ページ | |||||||||||
| 評価 | ||||||||||||
| AI | 例文生成 | |||||||||||
| レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴
2026/02/25 本書と『中学英語を本気で攻略するための本』の対象レベルを変更しました(※以上の削除)。
英文法の知識を会話のためにアップデート
本書はつい先日出版されたばかりの会話のための英文法帳になります。文法書ではなく、文法帳。これは一般的な文法書が網羅性を重視するのに対して、本書は単語帳のように“ある目的に対してまとめたもの”という意図からそうなっているのかもしれません。確かに本書の内容からして一から文法を学ぶには適しておらず、すでに英検2級程度の知識があって英会話のために文法知識をアップデートする内容になっています。
スピーキングのための英文法というと『1億人の英文法』を思い浮かべる人もいると思いますが、本書とはかなり毛色が違います。『1億人の英文法』は徹底して英米的な発想や単語のニュアンスなどを解説するのに対して、本書は学校英語で身に着けた英文法の知識からスピーキングへの橋渡しを意識しつつ、例文による音読練習もできる参考書になっています。大多数の人が取り組みやすいのは本書。『1億人の英文法』は優れた参考書ですが、おそらく時代背景も手伝った「文法用語を極力排除した独自メソッド(文型を5つではなく4つに分ける)」を導入している点が個人的にあまり好みではなく、全体的に情報が詰め込まれている点から最低でも英語中級者以上で英会話をすでに試行錯誤している、何なら現在留学中くらいの人が力にしやすい参考書と評価しています。もちろん、読んでいるだけで参考になる点は多々あるので購入して損のない参考書です。
その点で本書は学校英語から接続しやすく、ここ最近当サイトが方針として定めつつある英検2級までの知識をブラッシュアップする参考書として適しているのではということで取り上げてみました。英語に限らずですが、中身をつくる、要するに備えた知識の密度を上げることは勉強においてとても大切です。時には難しい事柄に手を伸ばしたくなりますが、それはそれとして戻ってくる場所は基礎基本という意識。その志向性が当サイトには合っていることもあり、少し前に紹介した関先生の『中学英語を本気で攻略するための本』と本書には期待を寄せています。
本書の構成と解説の一例
| 構成・内容 | Chapter 1 「時」や「気持ち」を表す 現在形―「いつもやっていること」を伝える It happens.「よくあることだよ」という表現の謎を解明する 進行形(1)―「その瞬間やっていることを伝える」 What do you do?とWhat are you doing?は全然違う! ――etc |
| Chapter 2 文をつなげる 等位接続詞―単語や文をスムーズにつなげる not A and Bとnot A or Bはまったく違う! 従属接続詞(1)―文をつなげて「時」を表す before を使って「忘れないうちに」を表してみる 従属接続詞(2)―文をつなげて「条件」を表す① if・when・onceを使い分ける ――etc | |
| Chapter 3 説明を加える 関係詞(1)―関係代名詞を使って情報を付け足す 「なんとなくの雰囲気」を表す会話で大活躍する表現 関係詞(2)―「前置詞+関係代名詞」や「関係副詞」を使って情報を付け足す That’s the way it is.「そんなもんだよ」という表現を理解する 関係詞(3)―補足説明する/発言をスムーズにつなげる ――etc | |
| Chapter 4 表現のバリエーションを広げる① 不定詞(1)―「名詞的用法」を使いこなす 会話で役立つIt never hurts to ~「~してみたらいいじゃん」 不定詞(2)―「形容詞的用法」を使いこなす① 不定詞を使って「ダメ元」「口寂しい」「魅力」を表せる! 不定詞(3)―「形容詞的用法」を使いこなす② 「今年もあと数週間で終わり」を表してみる ――etc | |
| Chapter 5 表現のバリエーションを広げる② 受動態(1)―主語を消して「~される」を表す 受動態を使う本当の理由と場面は? 受動態(2)―順番を入れ替える/自然なつながりにする I’m joined by ~「今日のゲストは~です」をスムーズに理解する 受動態(3)―さまざまな形の受動態を使いこなす① 意外と便利な“人 is being p.p.”という形 ――etc | |
| その他 | 無料音声ダウンロード可能 例文PDFあり |
最初に総評として「思っていたよりも文法的説明が多かった」というのがあります。以下の引用のような文法書然とした説明と言いますか、本書の解説にはスピーキングへの志向性が窺い知れる点も数多くあるのですが、文法を一から理解させるような部分も同時にあります。なので、第一に本書の価値は555の例文と添えられているTipsと考えた方がわかりやすいと思います。それらの点を目的に購入した方が後悔は小さい。
制限用法:関係詞は名詞を修飾・説明する役割ですが、これを別の視点から見ると、「名詞を制限する」とも言えます。たとえば、名詞 son に関係代名詞が続けば、どこにでもいる son ではなく、一部のsonに制限されるわけです。これを制限用法と言います。
スピーキングのための英文法帳 P194より引用
一方、スピーキングのための英文法として価値を感じやすい点は以下の引用です。
p.086でIf I were you, I’d ~「もし私が君の立場なら~する」を扱いましたが、実際の会話では if 節を丸ごと省略することもあります。たとえば、I wouldn’t say that.「私だったら、そうは言わないけどね」は会話でとても便利です。また、I’d say ~は「私だったら~と言うでしょうね」→「まあ~でしょうね・多分~かなぁ」という感じで、I thinkより控えめに(断言を避けて)意見を伝えるときに使えます。
スピーキングのための英文法帳 P95より引用
これは英語学習者なら知っている人も多いでしょう。こういった情報は大人たちが学んできた学校英語では触れなかった知識と思います。実用英語が意識されつつある現代の学校英語なら教えていても不思議ではありませんが、『総合英語 Ultimate 2e』にはその記述が見当たりませんでした。これは英検2級までの知識をブラッシュアップできる参考書としての価値を感じやすい点でもあります。
解説の印象は『中学英語を本気で攻略するための本』と同じ。よって対象は高校生以上が適切と思います。国語と英語が得意な中学生であれば問題なく読めます。本書シリーズの『スピタン888』は誰でも取り組める一冊ですが、本書は文法書としての体裁を守りつつ、スピーキングのための例文が収録されているということで多少人を選びます。なので、先に述べたように例文とそのTipsを目的にした方が良いと思います。
中学英語を本気で攻略するための本との比較
まず、結論から言うと、人次第、目的次第ではあるものの、どちらか一冊だけ購入するなら『中学英語を本気で攻略するための本』を推します。本質的な英語力を考えていくとき、『中学英語を本気で攻略するための本』の土台としての価値は大きいと思います。取り組みやすい難易度に抑えられている点も大きく、大人になって改めて英語を勉強したいと思う人の最初の一冊として非常に薦めやすいです。当サイトの英語学習順序は以前まで『真・英文法大全』を土台に推奨していましたが、『中学英語を本気で攻略するための本』に入れ替えました。
| 中学英語を本気で攻略するための本 | スピブン500 | |
| 価格 | 2420円 | 1980円 |
| ページ数 | 560 | 432 |
| コンセプト | 教科書的な中学英語を柔らかく本質的な知識に書き換えること | 英文法の知識をスピーキングに応用できるようにすること |
| 対象レベル | 英検3級 高校生以上 | 英検2級 高校課程修了 |
次に、解説の違いについて。関先生らの参考書の解説を読み慣れている人ならお馴染みのものが多いと思います。本書と『中学英語を本気で攻略するための本』も部分的に重複しています。
「〇倍」を表すときは、as ~ as の直前に「〇倍」という語句を置きます。たとえば「3倍」なら、three times as ~ as とします。「2倍」のときは (two timesよりtwiceを使って) twice as ~ asとするのが普通です。
スピーキングのための英文法帳 P420より引用
例えば、この引用の解説の「〇倍を表すとき」が「〇倍と言いたいとき」など細かな文言の差があるだけです。同一の著者による文法解説が全く違うというのも不自然な話ですから、ここの論点としてはそうした重複をどう評価するかです。全体の割合としては3割くらいの話。一方、明確に異なる部分はどういうところかというと、前述した「実際の会話では if 節を丸ごと省略する―」などは本書にしかありません。土台となる文法解説は同じだけど、そこからスピーキングを想定して積み重ねている分、新規性のある話が展開されています。
本書の対象レベルを英検2級、高校課程修了とした理由は、例文の単語が特別易しいわけではなく、本書で一から文法を理解することもできないからです。スピーキングに活用できる文法知識を抽出しているのみで、文法書らしい網羅性はありません。本書は受験勉強で得た文法知識を土台にスピーキングの話が展開されるので、はじめの一歩としてはこれ以上ないほど理想的な位置づけになり得ます。片や『中学英語を―』は英検3級程度の知識があると望ましい気はしますが、中学英文法の半分は国語のようなものなので英語の知識より国語力が気になります。『中学英語を―』は文の骨格から始まり、徐々に英語らしい肉付けを学んでいく構成がわかりやすく、この意味では英語初心者にも推奨できます。ですが、学生時代に英語の勉強を何もしていなかった、あるいはほとんど忘れてしまったという人には少し重いかもしれません。文法書なりの分量もありますからね。
国語力に関しては以前に紹介した『新・現代文レベル別問題集』が充実した一冊だったので、もはや『CODEX 現代文精選問題集』を使用せずにその一冊だけで組み立てられるのではと思ってきています。使い方を工夫したらきっと、現代文入門は漢字・語彙は当然重要ながら心がけや態度の部分が原因として大きいからです。ひとまずその問題集一冊を終えて、解説を隅々まで読んでから高校課程の勉強に移ると効率が上がると思います。





