- 一冊で中学数学を網羅する
- 全ページカラーで見やすい
- 高いレベルを求める中学生には
一冊で中学数学を網羅する事典のような参考書
約550ページフルカラー、合計約950題の問題を収録しています。正直、参考書と呼ぶには解説が丁寧とは言えず、問題集と呼ぶには単元ごとの問題数が少なく、網羅性を重視した数学事典です。とにかくすべての重要事項を詰め込んだ結果、参考書というより事典になってしまったという印象。
一つ一つの単元のわかりやすい解説を目的とするなら本書はオススメできませんが、参考書と問題集を一通り終えた人が各単元の重要事項を思い出したいときには重宝すると思います。大人の学び直しならば、数学が得意だった人が総点検を行うのに適していると思います。あるいは細かく分類された重要事項を必要に応じて確認したい人。理解というより確認のためのものですね。
解説には「用語」「Return」「Goto」「ここに注意」などのアイコンで補足説明や振り返りの動線が張られているため、単なる確認だけに終わらない仕様になっている点は高く評価できます。
対象レベルは、難関高校入試準備までを想定します。事典と言う以上、本書を完璧に理解できたのなら、どんな高校入試でも準備段階に到達できるでしょう。本書には高校レベルに繋がる「研究」という項目が用意され、かなり高いレベルを目指す中学生向けの参考書です。とりあえず買っておいて損はないけれど、あってもそこまで使わないかもしれないという意味で評価は3.5にしました。
総合的研究シリーズは問題集も発売されていて、そちらはオーソドックスな問題集で使いやすくなっています。なので、本書と問題集、さらに解説の丁寧な参考書の三冊があると便利です。中学校3年分の数学が教えられるほどよくわかるや中学校3年間の数学が1冊でしっかりわかる本、やさしい中学数学は解説の丁寧な参考書としてオススメ。
ちなみに本書のような事典的参考書として、[中学]自由自在数学もあります。自由自在(最新版は724頁)の方がページ数が多いことからわかるように本書より解説が丁寧です。別で解説重視の参考書を取り入れるなら、事典として総合的研究。一冊のみで完結させたいなら、事典兼参考書として自由自在を推します。
数学の意義を自分なりに見出す
本書の内容ではなく、最後にコラムを綴らせてください。小学校の算数から中学校の数学には大きな壁があり、実際に数学からついていけなくなる子はかなり多いと思われます。そもそもなぜ勉強しているかわからない、実生活に役立たないなどの声が各処で聞こえてきます。これは数学に限ったことではないものの、特に数学は自分なりに取り組む意義を見出す必要があります。
本当は子供の哲学的とも言える純粋な問いに答えられる大人が身近にいればいいのですが、管理人の経験上、全く出会うことなく、そもそも数学に意味を見出せない大人が数学の先生にはならないという実情から致し方ないかもしれません。
現代では統計学が2005年あたりから流行し、数学の意義が昔に比べて見出されるようになりました。医療の分野ではもはや統計無しに語れないほどと言います。データサイエンス学部なども新設され、数学に取り組む意義が大きくなったことはより良いと思いながらも、統計学は応用数学の一分野に過ぎず、純粋数学は未だに受け入れがたいものがあるかと思います。
管理人は大人になってからゲーデルの不完全性定理や数学基礎論に興味を持ち、集合論と位相を理解したくて中学数学の学び直しを始めました(管理人は数学選択の文系)。この意味では純粋数学に興味を持ったわけですが、これ以外には言語能力と数学的な能力の関係だったり、大人になってから増える雑念に数学的な簡潔さが心地良くなったり、いつしか人生を終えるまでに取り組んでおきたい事柄になったという経緯があります。
本当はもっと効率的に理解する方法はいくらでもあるのですが、数学の学問的な魅力を薄っすら感じ取っていた学生時代の記憶を呼び起こしながら、今になってしっかりと肌で感じ、言語化できたなら、それも誰かの役に立つだろうと思った次第です。数学は楽しい、おもしろいと心から言えなかったからこその数学の在り方を観測できたらと思っています。これが私の数学に取り組む意義です。
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