よくでる一問一答日本史/世界史―偏差値60までの一問一答

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タイトルよくでる一問一答 日本史
よくでる一問一答 世界史
出版社山川出版社
出版年2024/7/26 1100円
著者日本史一問一答編集委員会、小豆畑 和之(世界史)
目的重要用語に厳選した一問一答
対象現役生から大人の学び直しまで 到達:偏差値60まで
分量292ページ(日本史)、264ページ(世界史)
評価
AI気になる用語を深掘りする
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

重要事項に厳選した一問一答

 本書は2024年に歴史教科書で有名な山川出版社から出版された一問一答の参考書です。こちらは新しい学習指導要領にある「日本史探究/世界史探究」に対応した参考書になります。

 かつての高校歴史は「日本史A/世界史A」と「日本史B/世界史B」に分かれていましたが、学習指導要領の改訂により2025年現在は「日本史A/世界史A→歴史総合」と「日本史B/世界史B→歴史総合+日本史探究/世界史探究」に変更されました。「歴史総合」では日本と世界の近現代史を学び、日本史探究/世界史探究では日本と世界の歴史を原始から現代までまとめています。今は歴史総合が必須なので、日本史選択だったとしても世界の近現代史について学びます。日本史B/世界史Bから日本史探究/世界史探究に変更されたとは言え、学ぶ内容にほとんど差はありません。

 ただ、共通テスト以降の思考力・判断力を問う問題の増加に伴い、学習指導要領でも単なる暗記科目にしない歴史科目ならではの思考を養える工夫が施されるようになりました。具体的には史料や図表の読み取り、細かな用語知識ではなく歴史の流れ(因果関係)と枠組みを押さえるような問題です。今でも難関私大では一問一答に集約される細かな知識を問う問題は残っているものの、そうした問題は徐々に減っていく予想が為されています。今でも『山川一問一答 日本史』や『日本史一問一答【完全版】』のような早慶を想定できる約4000問を超える問題を収録した一問一答の使用者は多いですが、そうした予想もあって本書のような約2300問(日本史)の厳選した一問一答も有力な選択肢になりつつあります。

本書は一般的な国公立、中堅私大、共通テストを想定するなら十分な量です。それを超える大学であっても、一問一答以外で知識を補完できるなら問題ありません。一問一答には基本・重要事項のみをコンパクトに求めるなら本書が非常に使いやすくなっています。

受験勉強に不慣れでも使いやすい一問一答

大学入学共通テストは、重要用語に加え、図版や文字資料、地図などを読み込み、その情報を多角的に考察できる力を求めています。しかし、過去の大学入試センター試験や大学入学共通テスト、および私大入試の問題を分析してみると、どのような出題形式であれ、重要用語を正確に理解していれば十分対応できることに気づきます。本書は、これらの入試問題を分析し、解答に必要と思われる頻出用語を整理することにより、日常の学習や定期考査においてはもちろんのこと、大学合格をめざす皆さんの自学用になるよう構成されています。
よくでる一問一答 世界史 冒頭 ii-iiiより引用

 確かにかつては一問一答にあるような単純な知識を問う問題が多く、英語の文法問題然り、とりわけ難関私大では細かな知識の差によって合否を決める風潮がありました。歴史科目は暗記科目。暗記によって安定して高得点が獲れるという認識が大学受験専門の予備校の影響も手伝って定着したように思います。

 しかし、一問一答の目的は何か。もちろん、歴史が好きで細かな知識を早い段階で定着させておけるなら素晴らしいことですが、早慶を受験するからと言って一問一答に多くの時間を割く方針は疑問です。あくまで一問一答の知識は土台に過ぎません。一問一答が解けるだけで入試問題への応用力が皆無だったり、約4000問以上の一問一答を周回・定着する前に挫折してしまったりするようなら本書のように厳選した重要事項(それでも2000問)に絞った一問一答の方が使いやすいと思います。それに一問一答以外にも『HISTORIA』などの問題集形式+充実した解説で定着させることもできます。それでも足りない細かな知識は用語集でその都度補完していけば良いのです。※細かな知識は覚えにくいため、用語集によるひと手間でエピソード記憶として定着を促したい。

 本書は網羅性重視の一問一答に比べて問題数に対してのページ数にやや余裕があるため、レイアウトも見やすく、ページあたりの情報量も多くありません。当サイトでは大人の学び直しとして偏差値60程度の大学を一つの目安にしていますから、この意味でも本書はちょうど良い一問一答に位置づけられます。

受験勉強に不慣れな人は無理せず、参考書一冊を丁寧に仕上げる意識が大切です。

本書とセットで使いたいオススメの参考書

 一問一答は知識の土台。それに加えて歴史科目で得点するには、歴史の流れと枠組みを押さえる必要があります。そのための参考書として『流れと枠組みを整理して理解する』がオススメです。こちらも定期テストから入試基礎、共通テストまでを対象としているため、本書と合わせて使うことで理想的な知識体系を築けるようになります。歴史は偏差値60程度までならエコに目指せる科目です。

 そもそも歴史の流れと枠組みとは何か。簡単に言うと、時代や出来事の関連性と整理です。歴史は覚えることが多いため、目の前の知識がどの時代の、分野の、何と関連する知識だったのかを明確に意識できなくなります。常に歴史の流れと枠組みに沿って知識を配置する必要があります。大人の学び直しらしい言い方をすると、歴史科目からの学びは知識の体系化の仕方です。知識を得たときに頭の片隅に放り投げるのではなく、メタ的な思考整理を行うということ。こうした関連づけが適切に行われると、覚えることの多い歴史科目の負担が大きく軽減されます。知識そのものだけでなく、ネットワークによって支えられるからです。

 しかし、勉強に不慣れな人はそうした歴史科目の本質的な勉強になかなか気づけません。頭の良い人はテストで得点するためにどうしたら良いのかを無意識に考え、結果としてそうした知識の整理の仕方を獲得しますが、もとから勉強への興味関心も低ければそこまでの工夫を行えないわけです。そして、歴史科目の膨大な暗記に囚われてしまいます。確かに覚えることは多い科目ですが、できるだけ簡単に忘れにくい知識にする工夫、それに気づかせてくれる参考書とも言える『流れと枠組みを整理して理解する』は優れた参考書です。

数学は網羅性重視の解法暗記でもまだどうにかなる量ですが、歴史科目で網羅性を地で行く方針は現実的ではありません。できるだけ少ない知識で解こうとする方が本質的な勉強に気づきやすいので、一問一答の選定からしても本書のようなものがオススメかもしれません。

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