速読英単語[中学版]改訂版—中学英語の総仕上げに

　本書は2020年に出版された速読英単語シリーズの中学版です。速読英単語シリーズは受験英語で非常に有名な単語帳の一つであり、中学版は60の英文を読みながら単語を覚えられる点が最大の特徴になっています。単語の高速暗記なら『DUO3.0』が今もなおオススメですが、単語と例文、リーディング、リスニング、英文解釈といった総合的な英語力を養える本書の利点には大きなものがあります。当サイトでは、純粋な単語帳というより多読参考書に位置づけています。

　本書の中学版はどのくらいのレベルかというと、都道府県内有数の難関高校(偏差値65程度)に対応可能な約2300語(派生語含む)の単語と熟語を収録しています。速読英単語シリーズは基本的に熟語を含まない仕様ですが、中学版には熟語が含まれています(本来熟語は速読英熟語)。単語1900語+熟語400語の合計2300語。また、本書は2011年から出版されていたものの改訂版にあたり、学習指導要領の改訂によって中学英語の必要単語数(約1200語→約1800語)が増加にも対応しています。旧版(約1300語)から大幅に収録語数が増えました。

　そして、本書の約2300語を完璧にすると、英検３級～準２級、高校入門レベルまでを網羅できる計算になります。これは高校以降の単語帳の冊数の削減も意味し、高校以降にオススメの『DUO3.0』や『速読英単語[必修編]』を接続先にできます。ただ、速読英単語シリーズには注意点もあります。それは文章を読めるだけの文法と最低限の単語力が必要になること。単語を覚えるために単語帳があるのではないかと思うかもしれませんが、文章を通じて単語を覚える仕様上、ゆっくりでも読める力がないと文章から得られる様々な情報の中を生きる単語の意味を上手に捉えることができません。率直に本書の形式で単語を覚える意味が希薄になります。

理想を言えば、発音も正しく押さえた上で取り組んでほしいところです。本書はリスニング対策も兼ねられることから何度も音声を利用します。英語の音声学習は、発音の知識が不十分だとカタカナ英語で繰り返すことになって学習効率が大幅に落ちます。現役生にはなかなか興味を持ってもらえないかもしれませんが、発音の勉強には『発音の教科書』シリーズが非常にオススメです。

　本書には知的好奇心を刺激する英文が多数収録されていますから、今ならそれを参考にAIによって学習用の英文を生成してもらう使い方も有効です。本書がなくともプロンプト次第で十分に可能ですが、例えば読みにくい構造を持つ英文、つまりは苦手分野対策として機能させるときには参考にした方が手間が省けると思います。

　そして、中学英語の範囲で十分な多読多聴が行えたら、左から右へ返り読みをしない速読も身につき、盤石な基礎固めを終えて高校英語に移ることができます。単語や文法を一通り身につけているのに英語の実力が安定しないという人は、毎日飽きるほど多読多聴を行うと変わると思います。それくらい言語学習は慣れによるところが大きく、自分のレベルに合った英文を探す苦労がAIによってほとんどなくなった2025年現在、以前よりも遥かに効率良く成長できる時代になりました。逆に言えば、それを利用しないと瞬く間に大きな差がついてしまう恐ろしい時代でもあります。

AIによって参考書すら必要ない時代に突入しつつあるのだろうと感じていますが、2025年現在はまだまだ参考書の価値はあります。当サイトとしては「参考書+AI」による効率的な学習を模索している最中です。

　一般的に英文の単語・熟語のうち95%以上は知っていないと文章の意味を理解できないと言われますが、中学英語の文章は推測もしやすい基本単語ばかりなので80%くらいでもなんとか力になるとは思います。もし80%未満の状態なら、まずは見出し語から一語一訳の暗記に努め、その後に英文を読むとより良いでしょう。わからない単語が多すぎる状態で英文を読むと、認知的負荷が過剰にかかって挫折の原因になります。

　また、文章を読むわけですから文法も大切です。中学英語の文章は簡単なので、ついつい知っている単語を繋ぎ合わせる読み方でも大意は理解できてしまいますが、文法を軽視した読み方は高校以降確実に足を引っ張られます。AIサポートありきでも良いので、文法用語で理解できる程度には身につけておいてほしいところです。ただ、それを踏まえても現実的に現役中学生が本書を使いこなすことは難しい部類に入ると思われます。難関高校に合格するような学年でトップクラスの子なら問題ないとしても、多くの現役中学生には『320例文で効率よく覚える中学英単語・熟語2000』や『システム英単語[中学版]』あたりが無難な選択肢です。

　音声利用に関しては先に述べたように発音の学習を終えてから取り組むのが理想ですが、それがなくとも音読教材として何度も活用してほしいと思います。カタカナ英語で音読するもったいなさがあるにしても、本書の音声速度で正しく構造を捉えながら意味を理解できたら中学英語は十分に身についたと判断できます。本書には中学英語の文構造が一通り網羅されているので、本書の英文を流暢に読めたら、理論上中学英語の範囲で読めないものはないからです。

当サイトでは2025年現在、中学英単語と熟語を純粋に覚えるなら『DUO-BASIC』と『DUO elements』を、中学英語の総仕上げ、高校英語に進む基準として本書を推奨しています。