英語の発音パーフェクト学習事典

タイトル英語の発音パーフェクト学習事典
出版社アルク
出版年・価格2024/2/22 2420円
著者深澤 俊昭
目的・分類英語の発音学習
問題・ページ数288ページ
総合評価
対象・到達レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

音声無料ダウンロード付きの新装版が発売されました。こちらは音声の利用方式のみの変更のようです。

対象・到達レベル

発音の悩みを抱える全ての人、リスニングの得点を伸ばしたい人

 本書は英語を覚えたい日本人に必須とまで言える内容だと思いますが、全てを最初から理解するのではなく、一読して発音の仕組みを押さえておくだけで十分です。それで普段からの音声学習の質が向上し、リーディングが伸びたあとのリスニング対策では大きなアドバンテージになります。

本書の構成

 Part1「リズム」、Part2「イントネーション」、Part3「連結」、Part4「同化」、Part5「短縮形」、Part6「破裂」、Part7「脱落」、Part8「子音連続」、Part9「母音・子音」となっています。

 以前に紹介した『英語耳』が発音記号=単音に焦点を当てているのに対して、本書は文に焦点を当てている参考書です。発音学習の流れは『発音記号の理解→単語1語の中の音変化→単語の集合体である文の音変化』を辿ります。そのうち『単語の集合体である文の音変化』が本書の主な内容です。発音記号ごとの解説は『英語耳』の方が充実していますが、本書にも情報は載っているため、どちらか一冊なら本書を買いましょう。

リンキングをはじめとした発音の事情は押さえておきたい

 リンキング(Linking)についてはご存知でしょうか。英語上級者の方々ならきっと馴染み深いものですが、英語初心者にはあまり知られていない言葉かと思います。リンキングとは、簡単に言えば『音の結合』のこと。例えば、Thank youは「Than(k)」のkと「 (y)ou」のyが結合します。誰も「thンクユー」と言わずに「thンキュー」と言いますよね。発音事情の一つリンキングだけでも英語には様々なパターンがあります。

 本書は『英語を話す際のリズムや音の結合(リンキング)、強調、緩急』など、発音に関わるあらゆる現象を解説しながら問題集形式でトレーニングできるようになっています。事典というほど分厚くなく、全体はPart1~9で構成されていますが、全てに取り組まなければならないわけでもありません。

これに対して、日本語は音節リズムの言語 (syllable-timed languages) のひとつであって、英語のように強弱をベースにして、ある特定の音節(強勢のある音節)が規則的に現れるタイプとは違います。つまり、すべての音節が、強弱の差を特別につけず、均質的に等間隔で現れるという音節リズム (syllable timing) を持った言語なのです。

英語の発音パーフェクト事典 P45から引用

 時折、このように日本語と英語を比較しながら、現象的に「なぜ、そうなっているのか?」を解説してくれる利点は日本人にとって大きいものと言えるでしょう。こうした内容は言語学的な観点から述べられているものならありますが、英語参考書の枠組みで語られるのは珍しいと思います。言語学的な観点ほど詳細すぎず、英語学習者向けに合わせた平易な内容になっている点も高評価です。

 ネイティブ英語を聴き続けていれば無意識的に獲得できるとも思いますが、現象の原理原則を押さえて頭と身体の両面から理解できる方が再現性も高くなり、心理的にも自信に繋がりやすいでしょう。理系的に英語を捉えておきたい人には特にオススメです。

国語や英語は他の科目とは違う―「言語」だからこその学び方

 私たちは、国語や英語を数学や理科と同じような「科目」として考えがちです。しかし、これらは根本的に異なる性質を持っていると思います。その最大の違いは「言語はコミュニケーションツールである」という点です。つまり、アウトプット(表現)を前提にしなければ、本来は効率よく学習を進めることが難しいはずなのです

 例えば、国語なら小論文のような表現を通じた成長に注目が集まってもいい。現代文は成績が伸びにくく、センスのように語られることも多いのですが、実際に自分が表現する側に回ることで見えてくるものがたくさんあります。読む理解だけではなく、筆者と同じ立場に立つことで得られる理解が「読む」を深めてくれるということ。

 同様に、英語においても表現によって深まる理解があるでしょう。例えば、前置詞や副詞のコアイメージも、句動詞による表現を学べばネイティブの感覚への理解が深まるはずです。こういう気持ちで「to」を使っている、「ofとfor」を使い分けているという感覚的な理解は日本語で説明されただけでは見えにくい。実際に使用して、できたら間違いの指摘までされると段々と見えてくるものがあります。特に言語は表現と切り離せないものなので、表現による理解を放棄するのは勿体ないどころか、本質を掴むことまで困難にしてしまうかもしれません。

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