厳選 大学入試数学問題集 理系272 文系160―入試数学の論点を被りなく厳選した良書

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タイトル厳選 大学入試数学問題集 理系272
厳選 大学入試数学問題集 文系160
出版社河合出版
出版年2024/1
著者河合塾数学科
目的入試標準固め・アウトプット型問題集
対象準難関~難関大志望の現役生 到達:全統模試偏差値65以上
分量大学入試数学問題集 文系160(212ページ)・理系272(336ページ)
評価
AI解答をサポート
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

入試標準の良問を被りなく精選

 本書は2024年に河合出版から出版された入試数学の標準レベルにあたる問題集です。数学の参考書ではチャート式をはじめとしたインプット型が注目を集めやすい中で、本書はアウトプット型として良問が精選されています。アウトプット型は純粋な問題集なので、レイアウトに関しては特筆すべきものがありません。問題と解答が淡々と掲載されているのみです。それでも旧版227ページから本書(最新版)336ページと大幅に増加して別解が充実しました。入試標準レベルは難関大の合否を左右します。本書でしっかりと押さえられたら合格に大きく近づけるでしょう。

アウトプット型問題集は問題の意図を読み取るところから、解答の道筋を考え抜くことが大切です。どうしてもわからないときに解答を確認します。そして、問題ごとの解き方を自分なりにメモしておくこと。

 本書で合格を十分に狙える大学は「MARCH・関関同立・上智・理科大・準難関国公立(筑波・横国・神戸・千葉など)」、それより難しい「旧帝大・早慶」であっても合格点は視野に入れられます。東京一工には少し足りない。本書は記述も積極的に行う問題集なので、どちらかと言えば国公立向きです。文系と理系の違いは問題の難易度。文系が全体的にやや易しく入試基礎寄りなのに対して、理系はしっかりと入試標準レベルの問題を集めてあります。

 また、本書に近い問題集としては『入試の核心(標準編)』『新数学スタンダード演習』『数学の良問問題集』『国公立標準問題集CanPass』が挙げられます。レベルの近さで言うと『黄・青チャート』『1対1対応の演習』もありますが、こちらはインプット型・ハイブリッド型の参考書なのでコンセプトが異なります。本書は最新版から別解が充実したと言っても、入試基礎レベルを終えていないと解答を読んでも理解できません。アウトプット型は大きく成長できるメリットがある反面、適正レベルにないと逆効果です。数学の受験勉強をまだよく知らない人はインプット型とアウトプット型の選択を間違えないようにしましょう。

いわゆる解法暗記をするための参考書がインプット型です。チャート式やフォーカスゴールドなどが挙げられます。そして、その解法を実際の試験問題に適用できるかどうかを測る参考書がアウトプット型になります。過去問と同じ。それなら過去問にとことん取り組んだ方が良いのではと思うかもしれませんが、過去問のみでは偏るため、入試標準典型問題を押さえるには本書のような問題集が便利なのです。

類書との比較

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タイトル厳選 大学入試数学問題集 理系272入試の核心(標準編)新数学スタンダード演習(数学IIICまで)数学の良問問題集
問題数272150430307
解答・解説
レイアウト
欠点使い方次第で学習効果に差が出やすい問題数が少なめレイアウトの相性が出やすい入試標準を集中的に求めると不一致
その他シンプルで被りのない論点が高効率解説が最も丁寧本番で再現しやすい解答を重視やや入試基礎寄りながら網羅度は高い

 ここに挙げている問題集はどれも優秀なので、残りの期間から少なくとも3周くらいできるものを選んでしまって良いと思います。ただ、アウトプット型は使い方次第で学習効果に差が出やすいため、必ずひとつひとつの問題の論点をメモして類似問題に確実に対応できるようにする必要があります。アウトプット型に取り組む際の質はインプットの質に左右されますが、今は多少仕上がりが甘くともAIによって理解を深められます。アウトプット中心の学習効果は高いため、本書のような問題集をできるだけ早い段階から上手に活用したいところです。

 しかし、それでも使い方が難しい、実力に繋がっていないと直感したときは『入試の核心(標準編)』が無難な選択肢になります。解説が最も詳しい。この中では問題数が少なめですが、過去問+αには使いやすいと思います。他方で網羅性を重視するなら『新数学スタンダード演習(以下スタ演)』がオススメです(数学IAIIBなら約300題)。ここまでの問題数と解法を理解できたら、最難関大の難問を除いて入試数学は完成です。

 その中で本書は問題数のバランスが良く、論点の被りもないため、全ての問題を繰り返し解く価値があります。『スタ演』まで取り組めるなら盤石ですが、インプットとして『チャート式』や『1対1対応の演習』などに取り組んだあとに約430問は負担が大きく、かと言って『入試の核心(標準編)』だと心許ないと感じたときには本書が理想的な位置づけになります。また、入試標準は良問を丁寧に考えて正しく力に変えたいので、網羅性を重視することが必ずしも有効とは限りません。基礎問題なら網羅性重視の大量演習を地で行けますが、入試標準は理解重視の良問周回がベストな気もします。特に旧帝大は私大よりもその傾向が強いと思います。

時期的に余裕があるなら『スタ演』を推奨したくなりますが、本当に全ての問題の論点を理解して身につけられるか。数学が得意な人を除き、一般的な受験生にとって数学の入試標準は負荷が大きめです。ほとんどの受験生にとって入試標準が受験勉強の締めになりますから問題数はよく考えて選ぶ必要があります。

本書のあとに取り組みたい参考書

 基本的に本書を終えたら入試数学の勉強は終わりでも良いと思いますが、最難関大の難問対策をする必要があるならオススメしたい参考書があります。それは『真・解法への道』と『ハイレベル数学の完全攻略』です。こちらは難問対策の参考書なので、本書をはじめとした入試標準よりもさらに問題数が少なくなっています。その分、解説が非常に丁寧になっているため、対策しにくい難問を根本的な考え方から学べます。

 他にも『やさしい理系数学』などもあるのですが、出版年は古くなり、解説も丁寧とは言えません。入試標準までを早い時期から終えている人が「入試標準の難しめから発展まで」をアウトプットしたいときに使う参考書です。旧帝大志望以外は必要ないと思います。早慶の場合は文系理系問わず、入試標準までを完璧にできたら合格点を狙えますが、もし難問対策したい場合には第一に過去問を優先した方が良いでしょう。

 また、数学的な考え方が足りないと感じたときには、入試数学の理解度を上げるための参考書に取り組んでおくとより良いと思います。2025年現在なら『数学 方程式・図形・関数からとらえる数学の基礎 分野別標準問題精講』や『総合的研究 公式で深める数学』などがオススメです。入試標準まで解法暗記の方針で問題ない人もいますが、入試基礎よりも深く思考する部分が増えるために悪しき丸暗記に陥って得点に繋がらない人もいます。そういったときには数学的な概念や事象、操作をひとつずつ考え直すことで「自分が何をやろうとしているのか、何を求められているのか」が具体的にイメージできるようになって問題への対応力と安定感が上がります。

解法暗記は網羅性を頼りにするため、覚えることが数学にしては膨大になりがち。安易に暗記を積み重ねるのではなく、入試標準に取り組むタイミングで今までを振り返ることも大切です。

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