大学受験のための英文熟考 上下 改訂版

タイトル大学受験のための英文熟考 上下 改訂版
出版社旺文社
出版年・価格2023/7/19
著者竹岡広信
目的・分類英文解釈
問題・ページ数上巻(70題)・下巻(71題) 152ページ
総合評価
対象・到達レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達レベル

【対象】
・高校英文法を終えた人、SVの発見など基礎的な英文の読み方がわかる人
・国公立志望、和訳問題を意識して英文解釈に取り組みたい受験生

【到達】
・受験英語のほとんどの英文を正確に読めるようになる
・上巻=偏差値60まで、下巻=偏差値60~70

 本書は以前から販売されていた『英文熟考』の改訂版になります。CDから音声ダウンロードに、英文も最新の入試傾向を反映したものに差し替えられています(半分程度)。レイアウトも見やすくなり、単熟語も竹岡先生の書籍らしくまとめられています。講義音声もダウンロード可能。

 そして、本書の上下巻でほとんどの大学に対応可能な網羅性を有していながら分厚くもない。多くの受験生にオススメできます。強いて挙げるなら解釈をより必要とする国公立向きになります。私立でも基本的に問題ありませんが、英文解釈に割く時間を節約するなら『読解のための英文法』をオススメします。こちらは難関大編まで取り組んでもそれほど時間はかかりません。ただし、早慶志望の場合、難関大編に加えて『ポレポレ英文読解プロセス50』を加えておくと安心です。

竹岡先生の英文解釈には『入門英文問題精講』もあります。こちらは入門と言うほど軽くありませんが、本書の上巻よりは確かに入門寄りで基本を満遍なく押さえています。ただ、『入門』の次に位置付けられる『基礎英文問題精講』で著者が変わります(これは入門があとに刊行された事情から)。そのため、ひとまず『入門問題精講』は偏差値55前後の志望校、および共通テストに適した一冊完了型の英文解釈としています※『入門』と『英文熟考』は同じ出版社、かつ竹岡先生の著書であることから「入門→英文熟考(上下)」の接続も悪くありません。欠点はそれぞれしっかり考えさせる解釈寄りでカロリーは高めなところです。

英文解釈の参考書として非常に高い完成度

 個人的に本書はほとんど「完璧」と言っても良いほどに評価しています。例文音声も使いやすい。講義音声によってわかりにくい箇所も補完されているので独学も可能。それでもいくつか気になる点を挙げると、(先に述べた入門問題精講の事情からも)基礎の基礎から始まっているとは言い難く、前提として文法書の例文程度は読める必要があります。中学英語をしっかり終えているなら問題ありません。

 本書の切り口が躓きやすい点を中心としているためか、『読解のための英文法』と比べると上巻であっても「基本を満遍なく」という構成とは趣が異なるように感じます。すでに多くの受験生がわかっているであろう点は避けている印象。本書の構成がぴったりハマる受験生にはこれ以上ないほどの評価になると思いますが、万人受けする王道と言えるかは議論の余地があります。そのため、本書は解釈をより必要とする国公立向きと評価したくなるのです。

 大人の学び直しにおいては、英検などに必要な英文解釈の参考書としても必要十分です。基礎の基礎から始まっているわけではないという点も、だからこそ本書の薄さで受験英語の多くを網羅できているとも言えますし、受験英語を経験した大人の学び直しの一冊目にもちょうど良いかもしれません。

 英文解釈の参考書はこちらの記事にまとめています。

音声利用は必須

 英文解釈の例文は数学で言うところの解法暗記なので、例文は暗記するほど繰り返し音声利用(音読も)しましょう。本書の上下巻で取り上げられている例文のパターンを全て覚えてしまえば、早慶の英文であっても流暢に読めるようになります。なお、音声利用の効果を最大限に引き出すためには、事前に発音の学習を終えている必要があります。発音の学習無しなら、例文音声で文節を意識しながら音読に力を入れましょう。

 音読は英語学習において大きな効果を生みます。単語を覚えるにしても、一文にしても、長文にしても、声に出して読みながら単語・熟語・文構造を素早く確認しながら追うことで、英文全体の意味をパーツごとに瞬時に捉えられるようになっていきます。加えて、音の記憶から勝手に口が動き、正しい英語を表現してくれます。

 逆に言うと、音読によって英語力の足りない点も浮かび上がります。これは日本語に置き換えるとイメージできるでしょう。海外の人の日本語をほんの少し聞いただけでも、その人の日本語レベルがすぐにわかりますよね。音読は英語力を総合的に表現してくれます。ただ、あまりに難しい英文では効果が薄く、だからこそ英文解釈の例文は価値が大きいのです。英文解釈の学習ではなんとなくの理解を許しませんから、必然的に深い理解と共に音読を繰り返せます。30回、40回と何度も繰り返しましょう。音読が英語力向上の秘訣です。

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