DUO elements 前置詞/副詞―前置詞と副詞のコアイメージの形成に大きく役立つ

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タイトルDUO elements 前置詞/副詞 DUO elements 前置詞/副詞 mini
出版社アイシーピー
出版年2017/4/4 1650円 2018/4/3 3190円
著者鈴木 陽一
目的熟語と前置詞、副詞のコアイメージ理解
対象現役生から大人の学び直しまで誰でも
分量『DUO elements 前置詞/副詞』480ページ 990枚のピクトグラム
『DUO elements 前置詞/副詞 mini』2000phrases ミニブック&CD
評価
AIネイティブの使用頻度を質問して理解を深める
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

前置詞と副詞のコアイメージの形成は極めて重要

 本書は『DUO3.0』で有名なアイシーピーから2017年に出版された句動詞の単語帳です。『DUO3.0』は2000年に発売されて以降、2025年現在も売れ続けている非常に優れた単語帳ですが、その姉妹本として本書はあまり目立っていないながらも、日常会話で頻出する熟語(句動詞)を扱い、全ての表現にコアイメージの形成に役立てられる図(ピクトグラム)が付属する負けずとも劣らない単語帳に仕上がっています。

 そもそも句動詞とは何か。簡単に言うと「動詞+前置詞/副詞」の形で用いられる熟語です。大学入試やTOEICなどでは直接的な得点に結びつかないことから参考書はあまり充実していませんが、ネイティブの日常会話では必須の表現になっています。句動詞無しでは日常会話できません。そして、日本人にとって英語の「前置詞/副詞」というのはイメージが難しく、どこで何を使用したら良いのか迷ってしまう人も多いと思います。前置詞に関しては関先生の『前置詞 最強の教科書』などが出版されていますが、前置詞と副詞は抽象度が高いため、理屈よりもピクトグラムで直感的に学んだ方が効率は良い気がします。

 なお、少々わかりづらいかもしれませんが、本書にはDUO elements 前置詞/副詞 miniというミニブックとCDが付属したものが別で販売されています。ミニブックは3冊あります。ピクトグラムをまとめたもの。本書の最後にまとめられた990個の例文集。新たに加えられた1000個のフレーズを含む約2000個のフレーズ集。CD音声は「990個の例文音声」と「2000個のフレーズ音声」です。よくある別売りの音声CDにおまけがついていると考えたらわかりやすいかもしれません。※本書に音声は付属していません。

DUO elements 前置詞/副詞 miniは内容に対してハッキリ言って価格は高めですが、本書のフレーズを含む約2000個のフレーズ集と音声は便利です。

本書の使い方と利点

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DUO elements 前置詞/副詞29種類、990の句動詞と例文(巻末一覧)を掲載
収録されている前置詞/副詞to, from, of, in, into, through, out, at, for, on, off, up, down, over, under, across, along, around, about, by, with, against, before, after, ahead, behind, away, apart, back
DUO elements 前置詞/副詞 miniDUO elementsに新しいフレーズ1000個を加えた約2000個の音声とミニブック
ミニブックの収録内容「前置詞/副詞のピクトグラム集」「990の例文集(前著の巻末一覧に近い)」「約2000個のフレーズ集」

 本書の内容はとてもシンプルです。引用にあるようなピクトグラム990個とフレーズが前置詞/副詞の項目ごとに収録され、最後にそのフレーズを用いた例文が990個あります(音声内容)。音声は一貫して英語音声のみ。日本語音声を挟まずに英語を英語のまま理解するためにも、地味ながら評価を高めているポイントです。

 本書を単なる熟語帳と捉えると何だか特別必要なものとは感じないかもしれませんが、句動詞の暗記に留まらず、前置詞/副詞のコアイメージを様々な句動詞から連想できるようになるメリットが非常に大きいのです。別の言い方をすれば、なぜ日本人の多くは熟語の暗記が苦手なのか。それは特に抽象度の高い前置詞/副詞のコアイメージを掴めていないからです。その熟語がその意味になる必然性を理解していません。ネイティブは前置詞/副詞のコアイメージ(およびコロケーション)を環境によって無意識に獲得しているため、暗記と言っても丸暗記にならず、語と音から自然と本書のようなイメージを理解しています。

DUO elements 鈴木 陽一

 本書の利点は、そうしたネイティブが思い浮かべるようなイメージから暗記できることにあります。イメージは音に近く、視覚的な理解よりも処理が早い。また、音声の構成は瞬間的な理解を訓練できる仕様になっています。例えば「To」のフレーズ音声なら「go to the station, get to the station, come to me, give it to you…」と間を空けずに連続的に続きます。次のフレーズが読み上げられる前に意味を捉えられるまで繰り返せば、ネイティブの速度についていけるようになるでしょう。

 使い方に関してはひたすら覚えていくのみですが、例文の文法的な解説をAIに質問し、句動詞で扱われている前置詞/副詞の判別もできた方が応用しやすくなると思います。本書の中ではそれらの点について全く説明されていません。例えば「go on」という純粋な句動詞の「on」は副詞として理解しておくと意味の分別がしやすくなります。※厳密には前置詞として解釈される場面もあります。

 ちなみに本書の表現はどれほど一般的なのかというと、AI(Google-Gemini)に気になる表現を300個くらい質問したところ、ほぼ全てが非常によく使われる表現と評価されていました。AIの信憑性を加味する必要はあるものの、ネイティブチェックも当然入っていますから問題ないと感じています。つまり、本書とミニブックの約2000個の表現は全て覚えておいて損はなく、覚えられたときにはネイティブの日常会話への理解が格段に上昇すると言えそうです。何より前置詞/副詞のコアイメージを掴めたときの柔軟な思考が英語力の向上を強く実感できるものになると思います。

2025年現在、日常会話に必要な表現を学ぶという意味においては必須の熟語帳と言えるかもしれません。本書以外にここまでの網羅性を有しているものがなく、全ての英語学習者に推奨したいほどかなりオススメです。

ネイティブの句動詞と英熟語図鑑との比較

 他に句動詞を暗記・理解するための参考書には『ネイティブの句動詞』と『英熟語図鑑』もあります。『ネイティブの句動詞』は約350語の句動詞とフレーズ、無料音声によって3冊の中では最も手軽に取り組めるものになっています。『英熟語図鑑』は約800語を取り扱い、本書と似たような構成になっています。

 結論から言うと、個人的には本書がオススメ。やはり前置詞/副詞のコアイメージの形成には単なる図解だけではなく、優れた網羅性、より多くの表現に触れることによって自然と形成されるところが大きいからです。前置詞/副詞のコアイメージの解説も、句動詞の種類によって区別されていて全体的にわかりやすく感じました。ただ、図解によるわかりやすさは相性もありますし、本書は「ミニブック+音声」の購入まで考えると価格が高いのは事実。『英熟語図鑑』なら前置詞/副詞それぞれの解説もあるので、本書よりも理屈での理解を押さえています。

本書は解説そのものが極力省かれ、終始一貫してイメージでの理解を推しています。2000個のフレーズを浴びるように聴きながら理屈よりもイメージを形成していく単語帳です。

コアイメージは長期的な英語学習に必須

 なぜ、多読多聴が重要なのか。それは様々な英文に触れることで英米的な発想から単語、熟語のニュアンスなど多様な要素を学べるからです。そして、私たちの日本語と同様に、最終的には無意識的な理解(イメージもその一つ)として備わることが等しく英語を使いこなすという意味になると考えています。

 本書の句動詞はどれも中学生向けの熟語帳に掲載されているようなレベルです。試験対策としてはベストと言い切れないものの、一般的な熟語帳に比べて得られる効果が大きいため、現役中学生が取り組めば高校以降の熟語暗記の負担を軽減できるでしょう。コアイメージを押さえた場合とそうではない場合を比べると、記憶の定着も理解の速度も全然違うと思います。大人の学び直しならベストな一冊に挙げられてもおかしくありません。

当サイトでは中学英語の復習の一冊として本書を推奨するに至っています。

 また、少し別の視点から述べると、英語学習として英検2級程度の単語と文法知識が備わっている人はそれまでの知識をネイティブ的な発想までブラッシュアップする方針を有力視しています。難しい単語を覚えるよりも、句動詞を含む基本単語全般を使いこなすこと。例えば、本書なら「hand in, turn in」や「deal with, work through」の違いなどを知ることにあたります。こうした基本知識のブラッシュアップに使いやすい書籍として捉えるとよりいっそう本書の価値は上がります

 一説によれば、2000語の単語で日常会話の80%、4000語で90%以上を理解できるとして『4000 ESSENTIAL ENGLISH WORDS 1(2nd Edition)』という書籍も出版されています。英検2級の語彙は約5000語レベルとされ、文法知識に関しては専門分野を除くと頭打ちになります。海外旅行レベルなら2000語でも全く問題にならないでしょう。私たちの日常会話に置き換えて考えるとわかりますね。日本英語の最大の問題点は使えない知識を増やす方針を許容してしまうところにある気もします。英検1級は称賛されるべきことですが、実際は英検2級でも流暢に話せるならそれが理想のはずですから。

英検の有用性については賛否があるものの、個人的には日本人の英語学習に英検2級はちょうど良い目標だと感じています。簡単な日常会話に絞るなら3級でも問題は小さいと思いますが、私たちの日本語と同様に、リーディングとリスニングで必要となる「理解語彙」を多めに身につけておくことで、結果としてライティングやスピーキングで使える「発信語彙」が増えるという事情があります。英検3級を前提に表現を考えるよりも、英検2級の方が遥かに応用可能性が高いということです。

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