DUO BASIC[デュオ・ベーシック]―高速暗記にはDUOの例文形式

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タイトルDUO BASIC[デュオ・ベーシック]
出版社アイシーピー
出版年2024/10/9
著者鈴木陽一
目的中学英単語
対象現役高校生から大人まで 到達:高校偏差値65以上
分量384ページ
評価
AI文構造の理解をサポート
レベル中学復習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

ついに登場した中学英語版DUO

 本書は『DUO3.0』で有名なアイシーピーから2024年に出版された中学英語版のDUOです。根強い支持のある『DUO3.0』は非常に優れた単語帳ですが、独立した一冊で前後の接続が上手くできない欠点がありました。今までは仕方なく同じ例文形式の『システム英単語[中学版]』を推奨していましたが、ここにきて中学英語版の本書が出版されたとなっては話は変わります。当然のことながら『DUO3.0』の前に取り組む単語帳として本書が筆頭候補です。※本書の初刷には誤植があります。amazonでは2024/12/20 第3刷を確認。

 本書の特徴としては第一に例文の質が高く、わずか27分の音声で高速暗記できることにあります。例文に詰め込まれた単語の意味が例文と共に複数同時に頭に入ります。例文数の削減には一長一短あるものの、中学英単語はできるだけ手早く覚えてしまいたい人は多いでしょう。その需要に最も応えられるのが本書です。また、今は入試英語であっても実用性が重視される流れもあり、本書のような自然な表現を中学英語の段階から身につけておけるに越したことはありません。例文に含まれる見出し語1465語は必ずしも多いとは言えませんが、重要単語を優先して身につける上では悪くなく、その後に関連語・派生語含めた2767語を押さえていく方針は実質的に段階的な学習にもなります。

 ただし、本書で扱われている例文の構造や文法情報、関連語・派生語などを隅々まで理解するのは少々骨が折れます。現役の中学生なら高校偏差値65以上の進学校を目指すトップ層ならまだしも、それ未満では単純な一語一訳の単語帳に化けてしまう可能性があります。中学英単語そのものは簡単でも、本書を使いこなすことは意外と難しい。しかしながら高校以降に『DUO3.0』を使うなら本書から慣れておく利点が大きくなるため、後述する使い方を押さえた上で使用してほしいと思います。今までは別の単語帳への変更を許容していましたが、AIによるサポートが一般化した2025年現在なら本書にこだわる方がより良くなりました。大人の学び直しでも同様に、中学英単語の復習には本書を推奨します。

2025年現在、中学英単語の単語帳としては本書をベストな一冊としています。

システム英単語[中学版]との比較

 本書と同じコンセプトである『システム英単語[中学版]』との比較です。おそらく現役中学生には『システム英単語[中学版]』が取り組みやすいとは思います。理由としては見出し語が多く、例文の難易度が段階的に上昇するからです(全体的に易しい)。文法や接頭辞・接尾辞の情報も素直でわかりやすい。単語帳を隅々まで覚えると言っても、実際は強調された見出し語が中心で関連語・派生語は心理的に力を抜いてしまうものです。

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DUO BASICシステム英単語[中学版]
ページ数384355
収録語数27671824
見出し語/例文数1465/240
例文単語合計1210語
例文熟語合計591語
1824/562
文法情報〇(miniコラム)
到達偏差値(目安)高校偏差値65以上高校偏差値60~65
構成・レイアウト例文の難易度がほぼ均一例文の難易度が段階的に上昇
利便性(音声など)音声ダウンロード可能
専用Webページあり
音声の長さ27分
英語例文音声
音声ダウンロード可能
音声の長さ40分
英語例文音声
トリプルリピート音声
その他出版年が新しく、現代的な例文で質が高い。句動詞のTipsにはコアイメージが意識されている。例文が全体的にシンプルで易しい。見出し語が多く、現役生には取り組みやすい仕様。

 一方、高校生以上の中学英単語の復習では本書を推奨します。高校生以上になると、中学生の頃よりも文法知識が充実し、本書の例文を活用できる見込みが大きくなります。少し癖のある文法情報とコアイメージの理解も進みやすくなっているでしょう。本書は英検3級合格レベルを謳っていますが、関連語・派生語まで押さえたら準2級まで対応可能だと思います。システム英単語[中学版]は現役中学生に合わせて作られた優れた単語帳ですが、本書は使いこなせたときの学習効果が高いために頑張れるなら使いこなしたいところです。

 ただ、一つ欠点を挙げるなら、例文数が少ないということはそれだけ単語ごとの用法やコロケーションを押さえられないことを意味しています。高速暗記はできても、単語の運用力はそれほど上がりません。この点でターゲットシリーズのように一語一訳一例文の形式は例文から得られる学びが多く、例文の和訳から英作文トレーニングまでできます。なので、当サイトではDUOシリーズを純粋な単語暗記に留め、その後は速読英単語シリーズで多読と単語(例文)を並行して取り組む方針にしています。

英語の得意不得意で単語帳の向き不向きを分類すると「出る順ターゲット<システム英単語[中学版]=320例文で効率よく覚える 中学英単語・熟語2000<DUO BASIC<速読英単語[中学版]」となります。右ほど得意。ターゲットのような一語一訳は文法知識無しでも取り組みやすくなっています。

本書の使い方―例文と補足情報を押さえる

 例文による高速暗記を行うだけでも決して悪くありませんが、もし例文の単語を個別に拾い上げるような覚え方に終始するなら本書を選ぶ理由がほとんどなくなってしまいます。そこで大雑把でも良いので、下記のポイントを意識して取り組んでほしいと思います。

POINT
例文を正しく確認する

Thirteen plus thirty is forty-three. Is that correct? Yes, it is.
DUO BASIC P25より引用

日本語的な感覚でもなんとなく意味を理解できてしまう例文ですが、この「plus」の品詞や「forty-three」がハイフン(hyphen)で繋がれている理由はわかりますか。この主語が三人称単数で扱われることを知っていましたか。be動詞の現在形で表されると、どういうニュアンスになりますか。「Is that ~」の疑問文の答え方は覚えていますか。こういった様々な知識を押さえながら読めるだけで学習効果は飛躍的に上がります。今ならAIに「英文の文構造と英会話に役に立つ知識を教えてほしい」などと頼むのも良い。

POINT
補足情報を理解する

単語を覚える際は意味を押さえるだけではなく、必ず品詞とできたら補足情報まで確認します。例えば「five more minutes」のような「数詞+形容詞+名詞」といった語順は覚えておかなければなりません。「minute」の形容詞は知っていますか。「dress」の類語には「put on」があったり、「dress」と「get dressed」の違いだったりと補足情報から広がる知識も様々あります。この辺は優先順位もありますが、中学英単語は英会話において重要な単語ばかりなので、AIに質問して知識の拡張と深化は積極的に行っておいて損はありません。

POINT
例文の発音もできたら理解する

発音の事情(リンキング)も理解しておけると理想的です。『発音の教科書』シリーズを終えていると完璧ですが、発音の知識無しでも音の結合と消失( t, g, d…etc)を軽く押さえておくだけでもひとまず十分です。例えば、結合なら「is it?」は「s+i」が結合して「イジットゥ」になりますし、消失なら「good night」の「d, t」が消えて「グッナイ」となります。音読するときはカタカナ英語ではなく、英語の音を素直に聴いて再現すること。

 このように一言で言えば、情報の解像度を上げること。解像度が上がると、人間の脳はより多角的に働いて記憶の定着率を上げます。例えば、無機質な数字の羅列では覚えられませんが、それが友人の誕生日ならすぐにでも覚えられるでしょう。単語も一つの意味に執着して覚えるのではなく、類義語や対義語もセットで押さえることで別の単語から相互に意味を推測できるようになります。

単語帳は気軽に取り組めると思っている人が多いかもしれませんが、個人的には単語帳ほどたくさんの情報が詰まっていて使いこなすのが大変なものはないと感じています。だからこそ当サイトでは本格的に単語帳に触れるのは英語学習の後半に位置づけているのです。

DUO BASIC&DUO elements→DUO3.0

 本書には句動詞やコアイメージに関する情報も記載されているのですが、これは本書だけではなく『DUO elements』も併用して理解に努めることを強く推奨します。『DUO elements』とは、約990語の句動詞をピクトグラムでまとめた熟語帳です。句動詞とは、ネイティブが日常会話で頻繁に使用する「動詞+前置詞/副詞」で形成された動詞のこと。『DUO elements』は特定の試験対策としてはベストではないものの、中学~高校基礎の熟語をまとめている上に実用性は極めて高くなっています。詳細については以下の記事を参考にしてみてください。

 本書と『DUO elements』で高校偏差値65以上、そこから『DUO3.0』へ接続すれば大学偏差値65までは狙えます。単語と熟語が一冊にまとめられている利点は現役生にとっては大きいでしょう。『DUO3.0』は関連語・派生語が非常に充実しているため、本当に全てを網羅できるなら一冊で早慶合格まで視野に入ります。それはなかなか難しいとして、現実的に東京一工や早慶を目指す場合は『速読英単語[上級編]』や『大学入試最前線2500』などを追加するのがオススメです。東京一工なら単語の運用力を、早慶なら難単語を意識しながら覚えていくと良いと思います。なお、他人に教えたり、英語でコミュニケーションを行ったりする場面を想定しながら英単語を覚えようとすると正確な定着が促されると言われています。

一般的に英語学習は単語から覚えた方がより良いという意見もありますが、幼少期を除けば、まずは文法学習の中で触れるものを自然と覚えておくだけでも問題ないと考えています。少なくとも文法書を読んで理解できる年齢にあるなら、第一に文法を学んだあとに単語を覚えた方が品詞の重要性などを意識しながら暗記できます。もちろん、比重の問題なので完全にどちらかに振り切るわけではありません。文法学習しながら隙間時間に英単語帳は開きます。

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