最新日米口語辞典 [決定版] ―レベル・難易度・特徴・評判【レビュー】

タイトル最新日米口語辞典 [決定版]
出版社朝日出版社
出版年・価格2021/1/28 5280円
著者エドワード・G・サイデンステッカー、松本道弘
目的・分類日米口語辞典
問題・ページ数
(完成日数)
1312ページ
総合評価
対象・到達レベル
(偏差値目安)
日常学習
(ALL)
教科書基礎
(40~45)
教科書標準
(45~50)
入試基礎
(50~55)
入試標準
(55~65)
入試発展
(65~70)
※[入試基礎=日東駒専・共通テスト・地方国公立] [入試標準=MARCH・標準~上位国公立(地方医学部含む)] [入試発展=早慶・旧帝大・医学部・一橋・東工大(科学大)]

対象・到達レベル

・英訳しにくい日本語についての知見を得たい人、口語表現を切り口に単語の理解を深めたい人

・英検3級以上の単語、文法を備えている人

・日本語の口語表現から直接的にスピーキングを攻略できるようになる

 本書は日米の口語表現をまとめた辞典です。例えば、日本語の「受けて立つ」は英語で何と表現すると思いますか。おそらくほとんどの日本人はこの質問に答えられないか、直訳したものを当てはめることしかできません。本書は日本語の口語表現におけるニュアンスを正しく捉えながら、英語なら「pick up the gauntlet」あるいは「accept a challenge」と表現することを教えてくれます。

 これらの内容は英語初心者が読んでも楽しめるものになっていますが、できたら英検3級以上の単語と文法を備え、さらにスピーキングやライティングを真剣に考え始めた人に刺さる内容になっていると思います。というのも、本書は日本人が陥りやすい表現の問題を直接的に解決しているからです。

 日本人の英語表現のプロセスとは、言語特性の差からして「和文(言いたいこと)→和文和訳(英訳しやすい日本語に変換)→英文」とならざるを得ず、本書のように日本語の口語表現から直接的に英語の口語表現へ繋げる内容は最良の教材として考えられます。しかも本書は単なる表現の羅列ではなく、「なぜそうなるのか?」を解説している点が非常に大きな価値を生んでいます。

本書の特徴

ああいえばこういう[ああ言えばこう言う] have a comeback for everything

このcomebackは「口答え」。have an answer for everything と言ってもほとんど同じ意味がある。「口が減らない」「減らず口をたたく」なども、これらの表現で間に合う。♧ああ言えばこう言うで、彼の減らず口にも困ったもんだよ。The trouble with him is that he’s just too glib. He has a comeback for everything.

最新日米口語辞典 著:松本道弘 エドワード・G・サイデンステッカー

 このように一つの日本語口語表現に対応する英語表現が添えられ、さらに数行の解説が全ての表現に付け加えられています。この解説が本書最大の長所だと個人的には思います。辞典なのに最初から最後まで読み通したくなるおもしろさを生んでいるからです。そして、日本語脳から英語脳へブレイクスルーを起こすためには、反復による慣れはもちろん、本書の解説の節々から伝わる日本語らしさと英語らしさの情報が重要であることを改めて実感します。

 本書は翻訳家志望から注目を集めるほどの高い完成度になっていますが、翻訳家でもない私たちにとっても普段使用する口語表現から直接的に英語表現に繋げられる利点は計り知れません。何より本書がその辺に転がる書籍に比べて、明らかな力作である点に多くの信頼を寄せられるはずです。この点においては近々発売される『話すためのアメリカ口語辞典(エッセンシャル版)』もオススメしておきます。

最終的に辿り着くのは辞書か

 英語の学習に単語帳は便利ですが、1000~2000語の重要単語を集めているだけですからレベルが上がるにつれて網羅性が心許なくなるのは事実です。そう考えて何冊もの分野別の単語帳に手を伸ばし始めると、次第に本書のような辞書(辞典)で良いのではないか?と考えるようになります。「わからない単語があったら辞書で調べる」という単純な行為もエピソード記憶となりますし、「辞書を全て覚えてしまえば困らない」なんて無茶な発想も英語と真剣に向き合っている人なら一度は頭を過ったことがあるのではないかと思います。

 一般的な辞書は10万語前後を収録しているのに対して、本書は日本語表現約6700語、英語表現1万語です。これを少ないと見ることもできますが、全てを覚えようという無茶な発想を現実のものにするにはちょうど良い分量とも思います。それに本書のエッセンスは英語を話したいなら絶対に避けて通れません。単語と文法の上にあるニュアンスまで正確に伝えてこそ正しい言語的なコミュニケーションですから、日本語と英語の溝を上手に埋めてくれる本書の解説が必須です。今までいくつかの翻訳家による書籍を読みましたが、英語独特の発想は学べても、日本語と英語の溝を埋めてくれるものはなかなかありませんでした。

 なお、日本語の口語表現も思いのほか勉強になるため、本書一冊で日本語と英語の両方の力を高められます。そもそも日本語の語彙力が低いうちは豊かな英語表現もできませんから。少々値は張りますが、本書と似た書籍は全くと言っていいほどないため、スピーキングを真剣に考え始めた人には非常にオススメの一冊、購入して損はありません。

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