- 発音の仕組みが詳しくわかる
- CD(MP3)付き
- 一冊は置いておきたい充実度
対象・到達レベル
発音の悩みを抱える全ての人、リスニングの得点を伸ばしたい人
本書は英語を覚えたい日本人に必須とまで言える内容だと思いますが、全てを最初から理解するのではなく、一読して発音の仕組みを押さえておくだけで十分です。それで普段からの音声学習が向上し、リーディングが伸びたあとのリスニング対策では大きなアドバンテージになります。
本書の構成
Part1「リズム」、Part2「イントネーション」、Part3「連結」、Part4「同化」、Part5「短縮形」、Part6「破裂」、Part7「脱落」、Part8「子音連続」、Part9「母音・子音」となっています。
以前に紹介した『英語耳』が発音記号=単音に焦点を当てているのに対して、本書は文に焦点を当てている参考書です。発音学習の流れは『発音記号単位の理解→単語1語の中の音変化→単語の集合体である文の中での音変化』を辿ります。そのうち『単語の集合体である文の中での音変化』が本書の主な内容です。発音記号ごとの解説は『英語耳』の方が充実していますが、本書にも情報は載っているため、どちらか一冊なら本書を買いましょう。
リンキングをはじめとした発音の事情は押さえておきたい
まず、リンキング(Linking)についてはご存知でしょうか。英語上級者の方々ならきっと馴染み深いものですが、英語初心者にはあまり知られていない言葉かと思います。リンキングとは、簡単に言えば『音の結合』のこと。例えば、Thank youは「Than(k)」のkと「 (y)ou」のyが結合します。誰も「thンクユー」と言わずに「thンキュー」と言いますよね。発音事情の一つリンキングだけでも英語には様々なパターンがあります。
本書は『英語を話す際のリズムや音の結合(リンキング)、強調、緩急』など、発音に関わるあらゆる現象を詳しく解説しながら問題集形式でトレーニングできるようになっています。事典というほど分厚くなく、全体はPart1~9で構成されていますが、全てに取り組まなければならないわけでもありません。
本書の現象的に「なぜ、そうなっているのか?」を解説してくれる利点は日本人にとって大きいものと言えるでしょう。こうした内容は言語学的な観点から述べられているものならありますが、英語参考書の枠組みで語られる点は珍しいと思います。言語学的な観点ほど詳細すぎず、英語学習者向けに合わせた平易な内容になっている点も高評価です。
ネイティブ英語を聴き続けていれば無意識的に獲得できるとも思いますが、現象の原理原則を押さえて頭と身体の両面から理解できる方が再現性も高くなり、心理的にも自信に繋がりやすいでしょう。理系的に英語を捉えておきたい人には特にオススメです。
言語学習の肝
どうしても日本の英語教育ではスピーキングが軽視されやすいため、全体的に発音に関する参考書はかなり少なくなっています。さらに日本のカタカナ英語に毒されてもいれば、正しい発音を受け入れにくくなる頑固さまで存在します。
私たちは国語と英語をその他の科目と同様に捉えがちですが、実際には言語学習にあたるそれは異なる性質を持っていることを自覚しなければならないのではと思います。異なる性質とは、基本的にコミュニケーションツールであること。アウトプットを前提にしなければ捗らない科目なのです。単語を覚えるにしても、アウトプットで洗い出された課題がなければ、延々と優先順位の低いものに手を付けるでしょう。
誤解を恐れず言えば、大学受験向け英語学習は翻訳家・研究者育成のためと言っても過言ではなく、日常会話レベルでは過剰学習と言わざるを得ません。特に一昔前はその色が濃い。だからこそ、四技能を意識し始めた現代の英語学習を歓迎する声は多いのだろうと推測します。
あなたは何のために英語を学習しているのか。アウトプットを前提にする言語学習はとても楽しいものになります。インプット中心の言語学習は単なる暗記科目に成り下がります。『英語を使って〇〇がしたい』と考えながら学習する人の方が何十倍も効率は高くなるでしょう。そう言い切りたくなるほど、言語学習は実践を想定しなければ意味がないと強く思います。
音声無料ダウンロード付きの新装版が発売されました。こちらは音声の利用方式のみの変更のようです。
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