竹岡の英文法・語法ULTIMATE究極の600題―丁寧な解説で文法事項を網羅

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タイトル竹岡の英文法・語法ULTIMATE究極の600題
出版社学研プラス
出版年2018/5/29
著者竹岡 広信 
目的文法語法問題集
対象現役生向け(偏差値65まで)
分量問題98ページ+解説276ページ
評価
AI文法知識の甘さを徹底的にチェックする
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

600題で受験英語の文法語法を網羅する

 本書は学研プラスから出版された竹岡先生による文法語法問題集です。本書の冒頭で竹岡先生が語っているように、従来の作業的な文法問題集へのアンチテーゼ的な参考書になっています。従来の作業的な文法問題集と言うと、申し訳程度の解説が付属する1000問、2000問をひたすらに解くもの。数学の解法暗記的にパターン認識で解けることを目的にするなら悪くありませんが、独立した文法問題が減り、実用英語を意識する昨今の高校、および入試英語においては決して良い問題集とは言えなくなっていました。

 そこで本書は厳選した600題に絞り、文法語法の本質的な理解と入試英語で問われる論点の中でも躓きやすい部分を中心に問題集を仕上げてあります。竹岡先生は独特の言い回しと懇切丁寧な解説に定評があり、確かに従来の問題集に比べると本書の方が間違いなく理解は深まるでしょう。また、問題ごとに竹岡先生の塾に通う生徒の正答率も掲載されているため、現役生の苦手な問題もわかるようになっています。

 ただ、気になる点が2つあります1つは若干問題に偏りを感じること。厳選された600題における偏りは網羅性において欠点になり得ます。語法に関しては解説で補足された情報があるとは言え、全体で言うと半分程度なので網羅性に関しては心強いとは言えません。もう1つはやはり厳選した600題で十分と言える層は、高校偏差値65以上の進学校になるでしょう。それ未満の一般的な高校生にとって本書だけで本当に十分と言えるかは怪しいところです。これは当サイトが推奨している『文法語法良問500+四技能』シリーズを解いてみるとわかるのですが、一般的な高校生にとっては問題数を多めに確保した上で本書よりも丁寧な解説が付属する方が力になると思います。

すでにある程度わかっている人が入試対策として本書の600題に取り組むならコンパクトで良い問題集になると思いますが、まだまだこれから文法語法を詰めていきたいという人にとっては『文法語法良問500+四技能』を推奨します。本書はやや出版年も古くなってきましたから、2025年現在積極的に推奨する問題集とは言えないかもしれません。

解説の一例

Since the ground was wet, she looked for something dry [ ]
① to sit down ② sitting on ③ to sit on ④ sitting down
竹岡の英文法・語法ULTIMATE 究極の600題 問題P46ページより引用

 本書の問題は過去問ベースで厳選されているだけでなく、優れた文法問題集の条件にある「ランダム出題・問題文の音声」もしっかりと押さえてあります。レイアウトも見やすいため、問題文の音声を使った学習もやりやすくなっています。また、問題と解説については引用を参考にしてみてください。

to 不定詞の形容詞的用法についての出題です。 something to drink「飲むもの」では、drink somethingの関係が成立します。同様にsomething to open this with「これを開けるもの」も open this with somethingの関係が成立します。いずれの場合も、 to (V) の後に名詞の欠落があります。よって on の後ろに名詞の欠落を伴う③ (to sit on)を選びます。① (to sit down)は「座る」の意味ですから、名詞の欠落がなく本問では不適切です。また②のsittingを用いる場合には、たとえば a man sitting on the bench「ベンチに座っている男」のように、a man と sitting がSVの関係になります。①を選んだ人が32%いました。
竹岡の英文法・語法ULTIMATE 究極の600題 回答P125ページより引用

 語法の知識だけで解けるような問題の解説は簡素ですが、上記のように理解を必要とする問題については考え方を丁寧に提示しています。そして、今となっては当たり前になりつつありますが、文法問題を解いて終わりではなく、問題文そのものを利用できる音声付属はありがたいところです。

本書は難関大対策を強く意識しているわけではありません。入試基礎~標準までを手広く網羅しているだけなので、現実に最難関大を想定すると「本書+α」の細かな知識が必要になってくると思います。誤解を恐れずに言えば、本書は文法語法の苦手問題対策に近い気がします

文法語法良問500+四技能との比較

 大人の学び直しを含み、当サイトでは文法問題集に取り組むなら『文法語法良問500+四技能』を推します。空所補充を入り口に、整序英作文と誤文訂正の異なる角度からアプローチすることで盤石の知識に変えられるからです。ただ、学生時代に英検2級を取得していたような人であれば本書の方が使いやすいとは思います。あるいは大学入試向けの文法語法問題集ではなく『TOEIC L&Rテスト 文法問題 でる1000問』のようなビジネス英語で復習を兼ねてしまうのもありです。こちらの方が需要は大きいでしょう。

 そもそも文法語法問題集とは、文法事項のチェックと語法の知識を網羅することにあります。本書は厳選された600題で一見すると効率は良さそうに感じますが、周回を前提にしたとしても、問題の種類には被りもあるため、実質400問くらいの問題集に感じました。それを言うと『文法語法良問500+四技能』も実質1000問程度に圧縮できるのですが、空所補充以外の整序英作文500問と誤文訂正500問が非常に大きな価値を生んでいます。言い換えると、空所補充形式の問題集はいくら解説が丁寧と言っても詰めが甘くなりがちです。整序英作文と誤文訂正の方が細かいところまで文法語法の知識を詰めないと正答できません。理想を言うと、東大英語の「語を削除する問題」のような簡単に知識の甘さを追い詰めてくれる問題集が欲しいところです。

 しかしながら、今ならAIによってそうした問題を生成することも簡単なので、ひとまず本書のような厳選された600題で文法語法の全体像を把握し、丁寧な解説によって押さえるべき知識を明確化する方針も悪くありません。本当に力に変えたいなら空所補充は避けたいのが本音です。曖昧な知識と向き合わせてくれる参考書を積極的に選びたい。

1000問、2000問の問題を機械的に解くのではあまり意味がないという理屈はその通りですが、たくさんの英文(問題文)に触れることや語法の網羅性などを考えると、結局は大量の問題に触れた方がより良いと考えます。学習の初期段階ならなおのことかもしれません。言い換えれば、英語への慣れ、多読多聴の要素を部分的に導入する方針をどの段階でも有力視しています。

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