入門英文問題精講 4訂版—地方国公立志望にはベストな一冊

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タイトル入門英文問題精講 4訂版
出版社旺文社
出版年2019/7/18
著者竹岡 広信
目的英文解釈
対象対象:高校偏差値60以上 到達:大学偏差値55~60まで
分量例文・語句79ページ+解説176ページ
評価
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レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴

2025/10/29 全体的に読みやすいように大幅な加筆修正を行いました。

竹岡先生による英文解釈の基礎

 本書は2019年に出版された竹岡先生による『入門問題精講』です。もともと旺文社の英文解釈には「入門」を冠するものがなく、中原道喜先生の『基礎問題精講』と『標準問題精講』が非常に有名でした。学び直しを考える大人は受験時代にお世話になったか、見かけたことくらいはあると思います。一時代を築いた英文解釈です。それから時代は進み、現代的なレイアウトで刷新が図られた中で新たに英文解釈の入門レベルが設けられたという経緯があります。

 おそらくそれは現代受験英語においてかつてのような難構文が減り、時間制限の厳しい中で読む語数の多い長文が主流になったからです。あとは単純にボリューム層を捉えるためだろうと推測します。中原先生の『基礎問題精講』は基礎と冠している割に簡単ではなく、大学偏差値で言うと55~65を対象にしている印象でした。そこで本当の意味の基礎として本書『入門英文問題精講』が出版されるに至ったのでしょう。

 ただ、追加された本書も入門という割に手軽に取り組めるものではなく、竹岡先生の著書らしく考えさせること、具体的には丁寧な和訳(構造理解)に重きを置いています。現役生が本書に取り組むなら中学復習の不要と言える高校偏差値60以上は欲しいところです。そのため、個人的な評価として「竹岡先生の英文解釈」は『英文熟考』も含めて比較的重い和訳問題が出題される「国公立向き」としています。私立志望であれば、時間の限られた受験勉強の中では肘井先生の『読解のための英文法[必修編]』がオススメです。難関大編まで含めれば大学偏差値65までは到達可能なので、MARCH・関関同立志望ならそのシリーズ2冊がちょうど良いと思います。

本書は同じ旺文社から出版されている竹岡先生の『英文熟考』の入門書として用いることもできます。シリーズは別ではあるのですが、『英文熟考』の上巻は「自動詞と他動詞の判別」から始まっているため、実質的に本書が英文熟考の入門のような位置づけになっています。

本書の構成と解説の一例

 本書はレイアウトも見やすく、別冊形式で例文が付属しているので音声利用もしやすいです。この長所は英文解釈の参考書にとって大きく、最終的に本書で学んだ内容を思い出しながら音読を繰り返す際には非常に使い勝手の良い仕様と言えます。英語学習において音読は必須。

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例文数72
構成第1章 主語と動詞の把握
第2章 準動詞
第3章 関係詞
第4章 接続詞
第5章 比較
第6章 その他の重要項目
解説例文解説
問題文の語句解説
問題文の和訳
対応可能な大学(目安)共通テスト
地方国公立
日東駒専
※中堅私大(成成明学)にも対応できますが、大学・学部難易度の幅が広いので適正と言いにくい
その他英文音声付き、公式サイトで講義動画の閲覧可能

 例文は基礎的な英文解釈の中では長めのもので占められているため、完成させるまで時間がかかります。これは『読解のための英文法』と比較すると顕著です。『読解のための英文法』はテーマと複数の例題+練習問題で構成され、短い英文を大量に解く形式になっています。それに対して本書は国公立二次試験や私立一般で出題される和訳問題に近い長さなので、必然的に一問ごとに根拠を提示しながら丁寧に解くことを要求されています

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志望校の種類参考書ルート到達可能偏差値(全統)
国公立志望「入門英文問題精講」
→「英文熟考 上巻」
→「英文熟考 下巻」
40~55
55~60
60~70
私立志望読解のための英文法[必修編]
→[難関大編]
40~60
60~65
最難関志望(東京一工や早慶)上記に加えて「英文解釈Code7065~70

 文構造の理解という英文解釈の本質は変わりませんが、著者によってシリーズによって養成される力は少し異なります。当サイトでは国公立志望には竹岡先生、私立志望には肘井先生の英文解釈を推奨しています。もちろん、どちらも国公立・私立に対応可能ですが、京都大学出身の竹岡先生は『英作文が面白いほど書ける本』でも有名であることからも英文解釈で展開される解説は英訳・和訳への対応を自然と意識している印象です。

 一方、慶應義塾大学出身の肘井先生の解説は簡潔でわかりやすく、「読解のため」と冠していることからも語数の多い長文への対応が第一の私立向けと考えています。読解速度重視。国公立はもっとじっくりとした思考力を要求されるため、竹岡先生の英文解釈の方が合致しています。ちなみに最難関を想定する場合、特に肘井先生ルートには『英文解釈Code70』を加えると早慶まで綺麗に収まると思います。難関大編のみでは足りないというわけではないのですが、合格を現実に考えるなら網羅性の不安を払拭したいからです。

分詞構文の意味上の主語が文の主語と異なる場合には, 分詞の前に主語を置いて示します。この形を独立分詞構文と呼びます。本文では, competitors face obstacles「競技者たちは困難に直面した」が分詞構文になっていますが, その際に文の主語 (Developing nations) と異なる competitors が facing の前に置かれています。そして独立分詞構文にはしばしば with がつきます。一般的に付帯状況を示す with と呼ばれるものです。
4訂版 入門英文問題精講 解説P63より引用

 また、国公立と私立以外に入門書として選ぶ基準には念のため自分自身の中学英語の理解度、わからなければ高校偏差値を加味するとより良いと思います。上記の引用を確認してみてください。中学英語をきちんと理解しているなら本書の分量と解説は適切な範囲に収まるはずです。一方、『読解のための英文法』は本書よりも易しく、中学英語に多少不安を覚える人にも取り組みやすくなっています。もっとも英文解釈は文法問題集を経て取り組みますから、そこまで終えられていたらどちらも入門書として正しく機能します。

2025年現在、地方国公立志望にとっては本書がベストと言っても過言ではありません。本書の形式はほとんど地方国公立大学で出題される和訳問題と同じ。効率が良い。

本書に取り組む前の文法問題集

 当サイトでは『文法語法良問500』を推奨しています。空所補充・整序英作文・誤文訂正のシリーズ3冊の1500問で盤石の文法語法の知識を手に入れられます。整序英作文は標準的な国公立の英作文にも活用できる基礎知識になります。誤文訂正だけ志望校によっては省いても可能ですが、誤文訂正を解けない曖昧な文法知識を引きずったままでは成績の伸びが悪くなる可能性もあります。個人的には志望校の出題傾向に依らずに1500問解くことを推奨します。

 ただし、高校偏差値65以上の進学校に通い、中学時代から文法語法の問題を大量に解いてある程度の知識が備わっている人なら竹岡先生の『英文法・語法ULTIMATE究極の600題』などでも構いません。現役生は問題を解く量が少ないために基礎が固められず、成績が伸びないケースが非常に多くあります。1500問というと多く感じるかもしれませんが、文法語法の知識は呼吸をするように当たり前に対処できないと、それ以降の知識を適切に積み重ねられないのです。数学で言うと、小学算数の計算に時間がかかるようなもの。

 昨今の入試英語では独立した文法問題の出題が大幅に減ったため、得点のための文法問題集という意味合いが薄れましたが、文法問題集の問題文が実質的な解釈の勉強にもなっている、英文を読める力を養成している面もあります。つまり、純粋な文法語法問題対策ではなく、文法語法問題を通じて身につく様々な知識にはまだまだ価値があるということです。それを異なる角度からアプローチし、ライティングTipsもある『文法語法良問500』は非常にオススメの一冊になっています。

進学校の生徒は特に参考書ルートにあるような問題集以外にも学校や学習塾、予備校で問題に触れ、試験当日までずっとわからないところがあればその都度解決して知識を増やしているからこそ安定合格に繋がっています。参考書ルートの問題集から作問されると思い込むような取り組み方では当然足りなくなるわけです。

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