入門英文問題精講 4訂版—レベル・難易度・特徴・評判【レビュー】

タイトル入門英文問題精講 4訂版
出版社旺文社
出版年・価格2019/7/18 1320円
著者竹岡 広信
目的・分類高校英文法入門
問題・ページ数例文・語句79ページ+解説176ページ
総合評価
対象・到達レベル
(偏差値目安)
日常学習
(ALL)
教科書基礎
(40~45)
教科書標準
(45~50)
入試基礎
(50~55)
入試標準
(55~65)
入試発展
(65~70)
※[入試基礎=日東駒専・共通テスト・地方国公立] [入試標準=MARCH・標準~上位国公立(地方医学部含む)] [入試発展=早慶・旧帝大・医学部・一橋・東工大(科学大)]

対象・到達レベル

【対象】
・文法問題集を終えた人、英文解釈の1冊目を探している人
・高校偏差値60以上、基礎がまだ曖昧な人

【到達】
・高校英語の基礎を習得できる
・全統模試偏差値55~60くらいまで、中堅私立や地方国公立の合格レベル
※英文音声付き、講義動画も公式サイトから閲覧可能

 本書は2019年に出版された竹岡先生著の『入門問題精講』です。もともと旺文社の英文解釈は中原道喜先生の『基礎問題精講』と『標準問題精講』が非常に有名でした。学び直しを考える人は受験時代にお世話になったか、見かけたことくらいはあると思います。一時代を築いた英文解釈。

 しかし、現代受験英語では解釈の必要性がやや下がったことに加えて、例文も古くなってしまった中原先生の『基礎問題精講』は基礎という割には難しく映るようにもなったためか、竹岡先生による『入門問題精講』が新たにシリーズに名を連ねました。その後、 宇佐美光昭先生によって補訂された『基礎問題精講』も現代的なレイアウトと共に出版されたという経緯があります。正直、本書と『基礎問題精講』はシリーズとして中途半端な印象を拭えないのですが、中堅私立や地方国公立志望には1冊完結型の英文解釈として有用です。

 ただ、追加された本書も「入門」という割には手軽ではなく、竹岡先生の著書らしい考えさせて読み込んで身につけさせるつくりになっています。対象を高校偏差値60以上とした理由は、中学英文法を身につけたと言える層なら高校英語の基礎を固めるのにちょうど良い負荷のある解説になっているからです。例文もはっきりと高校レベルにあります。もし、高校偏差値45~55あたりなら『高校とってもやさしい英文法』などの薄めの参考書を終わらせたあと、『読解のための英文法[必修編]』を推奨します。

学び直しの英文解釈として本書は推奨できるか。受験勉強をそれなりにしてきた人が基礎を思い出す目的なら“あり”ですが、英語初心者や苦手だったという人には推奨しません。

本書の構成

「全70例文+訳出+例文解説+問題例文の語句解説」の形式
第1章 主語と動詞の把握
第2章 準動詞
第3章 関係詞
第4章 接続詞
第5章 比較
第6章 その他の重要項目

 本書は例文音声も付属し、レイアウトも見直しやすくなっています。英文解釈の参考書として押さえるべきところは押さえているので完成度は高い。本書を「シリーズとして中途半端な印象」と述べましたが、同じ旺文社から出版されている竹岡先生の著書『英文熟考 上下』の入門書として考えると収まりは良くなります。英文熟考の上巻は本書の第1章にある「主語と動詞の把握」のような定番の入門テーマから始まっておらず、「動詞を見たら他動詞か自動詞かを考える」と一歩踏み込んだ内容から始まっています。これは入門というよりは基礎、偏差値55あたりから考えたいテーマでしょう。つまり、本書+英文熟考上下巻で「入門から発展」までを段階的に学ぶことができます。

 竹岡先生の英文解釈はその解説からして和訳英訳記述ありの国公立向きなのですが、本書の入門レベルならそうした解説が過剰にならず、基礎固めのために必要な解説として機能していると思います。ここまで考えながら読み解かなければならないのかと実感するはず。

肘井先生の『読解のための英文法』は解説も軽く、読解のために必要な考え方を手早く吸収できるので現役生には素直に推奨できます。本書や英文熟考はしっかり取り組めるのなら推奨できるのですが、それでも目的に応じて解釈に寄りすぎない意識が必要です。読解のためなのか、和訳のためなのか。それによって解釈の必要度は変わります。

英文法の知識を総動員しながら例文と向き合う

 英文解釈の参考書によって英文が読解できるようになるわけではなく、英文解釈はそれまでに備えた英文法の知識を読解のためにどのように引き出すかを学ぶに過ぎません。そのため、英文法の知識が曖昧な状態では英文解釈の解説を読んでも“わかった気になる”だけで力にはならないのです。『文法語法良問500』などで文法・語法を事前にしっかり固めておきます。

 その上で英文解釈の例文を読み解く際に、自分がどのような文法的知識の操作によって、すなわち文法的根拠を以てその訳出に至ったのかを説明する必要があります。これが全くできないなら、文法学習に再度戻るべきです。そして解説を読み込み、間違った箇所を中心に理解を深めていきます。数学にしてもそうなのですが、その問題を解くための知識をある程度備えているならば、どういった知識をどのように引き出すか、運用したら良いのかといった応用部分を粘り強く考えなければなりません。このように“知識の連なり”を実感できないと、自ら購入した文法問題集を解けるだけに終わってしまいます。

 本書は基礎固めにしてはカロリーが高めですが、しっかり終えられたときには成長を実感できると思います。ただ、繰り返すようですが、入門と言っても現役生で本書を使いこなせる人はそれほど多くありません。評判の良い参考書だからと言って何も考えずに手を伸ばすのは待ってほしい。本書の解説を読んで正しく理解できるかどうか、もう少し易しい参考書から始めるべきか。この判断は慎重に考えてほしいと思います。

文法語法良問500』シリーズは今も変わらずオススメです。標準+αまでを丁寧な解説と共に多角的に固められます。1冊でサクッと終わらせたいなら『大学入試 英文法 QUAD 文法問題+読解・英作文の要点300』もオススメです。

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