日本史一問一答【基本版】―レベル・難易度・特徴【レビュー】

タイトル日本史一問一答【基本版】
出版社ナガセ
出版年2025/2/26
著者金谷 俊一郎
目的日本史一問一答
分量368ページ
評価
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達

【対象】
・地方国公立、中堅私大志望の受験生
・難関大志望の基礎固めに
・一問一答と論述対策(基本事項)を両立したい人

【到達】
・全統模試偏差値60程度まで
・入試基礎レベルの知識と用語を網羅できる

 本書は2025年に東進ブックス(ナガセ)から出版された日本史一問一答の参考書です。東進ブックスの一問一答シリーズと言うと、その網羅性の高さから難関大志望(特に早慶)に有名な参考書で「完全版」の一冊で知識面は十分と謳われています。しかしながら完全版は分量が非常に多く、難関大志望の受験生でないと手が伸びない、難関大志望であっても挫折しやすい一問一答としても有名でした。そこでシリーズに新しく名を連ねた「基本版(世界史は必修版)」が本書になります。

 歴史の一問一答で言うと、教科書も出版している山川出版社の一問一答が有名です。数研出版のチャート式と同様に、教科書を出版している出版社ならではの安心感も大きく、おそらく最も多くの受験生が用いる一問一答は山川出版社のものになります。一方、東進ブックスのような予備校が土台の参考書は現代的なレイアウトで様々な工夫も施されています。

 本書においては「一問一答+用語集」のコンセプトと一問一答の問題形式を上手に利用した朗読音声は唯一無二です。本書は基礎固めにして簡単とは言えませんが、腰を据えて向き合えるならかなりしっかりした土台になります。一問一答の丸暗記に陥る懸念点を回避するために、基礎事項に用語集の性質を加え、さらに一問一答の要点を押さえる性質を朗読音声に応用して歴史の流れを5時間で振り返れるようにしています。とても完成度が高い参考書です。

本書然り、東進ブックスの一問一答シリーズの欠点は改訂時期に統一感がないことです。本書(日本史)は基本版ですが、世界史は2023年に必修版の名称で出版されました。2022年度からの新課程に対応した改訂が行われている科目もあれば、そうではないものもあります。歴史は旧課程と比べて内容自体にほとんど変化がないとは言え、最新の用語が反映されているかどうか不安になるものもあります。理科では化学がしっかりと改訂されているようですが、生物は生物基礎も含めて怪しいところです。

構成の利点(一問一答+用語集)

左ページに空所補充 右ページに空所補充の答えの用語解説

最頻出 1380語
頻出 1596語
難関 2856語

※用語解説での延語数

 本書は全統模試偏差値60程度まで、主に共通テスト対策や地方国公立、中堅私大を志望する受験生に必須のキーワードを左ページにまとめ、右ページにはそのキーワードをそれ以降のレベル帯で登場するキーワードを用いながら解説しています。右ページの用語も全て押さえることができたら、MARCHや関関同立、早慶まで対応できると一応書かれてありますが、実際はMARCH・関関同立まで、早慶は「頻出+難関」のキーワード不足です。早慶で合格点、高得点を目指すなら「完全版」を推奨します。※完全版は誤植が報告されていますので、中古購入は注意が必要です(訂正表)。

共通テストのみを徹底的に対策したいなら『共通テスト日本史一問一答』もあります。

 本書最大の長所は左ページにある最頻出キーワードが右ページの用語解説で深掘りされているところです。基礎知識からの発展がそのまま構成になっているので、本書の構成に倣うだけで理想的な知識体系になります。本来なら用語集を片手に理解の浅い用語は都度調べる必要がありますが、本書ならその手間もなく、最頻出と解説を押さえるだけで理想的な基礎固め、基本事項の論述対策にもなります。※欠点は左ページの一問一答(空所補充)が簡素なこと。一問一答はこういうものと言われたらそうですが、流れを意識させる程度の文の長さは欲しかったです。

 歴史科目=暗記というイメージから一問一答をひたすらに取り組む人もいますが、実際にそれだけでは得点できない現実に絶望する人も少なくありません。英単語のように歴史用語を知らなければ始まらない部分はありますが、その用語の背景や周辺知識まで備えてこそです。本書の網羅性はMARCH・関関同立以上には少々心許ないものの、基礎固め、土台としてはそういった高いレベルを目指す人にも理想的なものになっています。※耐える科目なら本書だけでも悪くない選択です。

地方国公立や中堅私大を目指す人はそもそも用語集を使う予定もなく、一問一答で最頻出キーワードだけ押さえてばかりかもしれません。また、難関大志望であっても[完全版]で細かなキーワードをひたすら暗記と考えがちかもしれません。もちろん、一問一答の意義を単なる知識確認に位置づけているなら問題ありませんが、授業や講義系参考書で背景や周辺知識がまだまだ足りないなら本書を基礎固めに用いるのがオススメです。

完全版、山川一問一答、よくでる一問一答との比較

日本史一問一答[完全版]』『山川一問一答』『よくでる一問一答』との比較
【問題数】右ほど多い
本書<よくでる一問一答<山川一問一答<日本史一問一答[完全版]
【レイアウト】右ほど見やすい
本書≒よくでる一問一答≒山川一問一答≒日本史一問一答[完全版]
【難易度】
よくでる一問一答<本書≒山川一問一答<日本史一問一答[完全版]
※一問一答は難関私大を志望するなら網羅性の高いものを優先したい

 レイアウトに関してはどれもそれほど変わりません。問題数と難易度は比例していて、『山川一問一答』と『日本史一問一答[完全版]』は難関大を狙うなら推奨したい参考書です。どちらかと言えば『日本史一問一答[完全版]』の方が網羅性は高く、最難関大(特に早慶)を想定しても十分ですが、先に述べたようにかなり細かな知識も含むため、全て覚えようとすると挫折率が高くなります。『山川一問一答』は歴史の教科書で有名な『詳説日本史探究』に章立てが準拠しているため、教科書と併用する場合には使いやすくなっています。

 歴史があまり得意ではない人が共通テストや地方国公立、中堅私大を想定する場合、『よくでる一問一答』がオススメです。この中では『よくでる一問一答』が最も易しく、歴史が苦手な人でも取り組みやすいレイアウトと問題数、用語の選出になっていると思います。本書は最頻出キーワードが優先してまとまっているとは言え、右ページの用語解説に細かな知識も盛り込まれているので簡単ではありません。山川一問一答の方が印象としては易しいほどです

 では、難関大志望が本書のあとに『山川一問一答』や『日本史一問一答[完全版]』を追加するべきか?というと、個人的にはあまりオススメしません。2冊は重いからです。難関大志望は最初から『山川一問一答』か『日本史一問一答[完全版]』の1冊に絞り、論述対策には用語集を片手に取り組む方が良いでしょう。難関大志望、特に最難関なら自分で知識を広げ深める主体性がないと厳しい。もしくは高校1年生の先取りとして本書に取り組み、受験勉強が本格化する前に『日本史一問一答[完全版]』へ移行すると良いと思います。英単語で言うと、ターゲット1200からターゲット1900への移行と同じ。個人的な好みを言えば、歴史科目には時間をかけたくないので用語集を省ける本書を第一に考え、模試や過去問などを通じてその都度補完していきます。

志望する大学で論述問題が課せられるかどうか、共通テストのみなら用語集の要素を含んだ本書は必ずしも効率の良い参考書ではありません。一問一答を単なる知識確認として用いるなら本書以外がオススメ。少しでも理解を深めて基礎固めしたいなら本書がオススメです。

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