| タイトル | 西原の現代文読解をはじめからていねいに | |||||||||||
| 出版社 | ナガセ | |||||||||||
| 出版年 | 2026/1/24 | |||||||||||
| 著者 | 西原 剛 | |||||||||||
| 目的 | 現代文読解の基礎 | |||||||||||
| 対象 | 現代文の得点が安定しない人 | |||||||||||
| 分量 | 288ページ | |||||||||||
| 評価 | ||||||||||||
| AI | 練習問題の解説サポート | |||||||||||
| レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴
※本記事は公開以降、内容に変更はありません。
わかるとは何か―現代文読解のわかるがわかる
本書は2026年1月に出版された西原先生による現代文読解の講義系参考書になります。西原先生と言うと、少し前に紹介した『新・レベル別現代文問題集』の著者の一人です。一橋大学出身。卒論では「文章論的文章読解指導法の研究」を執筆したということで読解に関しては相当に深い見識を持っていることが窺えます。
今回、本書を取り上げた理由は『CODEX 現代文精選問題集』に代わる一冊として期待が持てたからです。『CODEX』は丁寧な解説を備え、問題文を一文ずつ解説していくスタイルが秀逸でした。今でも頭から読めば誰でも順を追って理解が深まる点を評価していますが、もっと薄い参考書で精読について学べるならそれに越したことはありません。単純に持ち運びしにくい、開きにくい重めの参考書は勉強の心理的なハードルを上げてしまいますから、欲張って他の参考書で良いものはないかと探していました。
入試では多くの場合、初見の文章と向き合います。読解の「方法」や「マニュアル」は大切です(本書でもさまざまな方法を紹介します)が、それらの意味を考えず、機械的にあてはめるだけでは、実際の問題は解けません。『西原の現代文読解をはじめからていねいに』では、文章を読むときの基本的な「構え」を伝えることにこだわりました。本質を理解することが得点力向上の一番の近道と考えているからです。
西原の現代文読解をはじめからていねいに P3より引用
その中で候補に考えた本書ですが、結論から言うと「超基礎の割には内容が易しいわけではなく、情報量も比較的多いため使用するタイミング次第」と評価するに至っています。設問ごとの攻略を本格的に取り組む前の内容。正しく読むことを実践する内容になっている点は良いのですが、現代文参考書のジレンマ、この文章を隅々まで読めるなら一定の読解力があるという問題がちらつきます。とは言え、使用するタイミング次第では確かに超基礎として受け入れられるため、中堅私大・地方国公立合格レベル=大人の学び直しなら高校課程修了という当サイトの方針の中では使用価値が見出せる参考書です。本書のような現代文の講義系参考書は現実的に複数冊の使用が難しく、思考を目覚めさせてくれる一冊を徹底的に理解する方針が有力と考えます。解説と方針の相性が大きい。
本書の構成と解説の一例
本書は冒頭で「わかる」とは何かについて解説しています。これは現代文読解に限らず、全ての科目で必要となる感覚の言語化です。受験勉強における子供の素朴な疑問は“早急ではないこだわり”を生み出す懸念がありますが、その(わかるとは何か)根本的な問いに関してはある程度の納得感があった方が良いと思います。ちなみに早急ではないこだわりとは“純粋な知的好奇心”とも言い換えられるもので将来的にはとても大切です。疑問そのものは思考の原動力。ただ、受験期に優先順位の高い疑問というところを押さえていないと無限に足を止めることになりかねません。今ならAIで大抵の疑問をその場で解消できるかもしれませんが、受験に最適な志向性から外れるほど努力の方向性もおかしなことになっていく不安があるのです。
| 構成・内容 | 第1講「わかった!」を目指して読む 「わかる」とは何か 「つながる」ことで「わかる」 「客観的に読む」とはどういうことか |
| 第2講「わかる」ために手を動かす(1) 類似表現、図解、比喩、接続語、指示語 | |
| 第3講「わかる」ために手を動かす(2) 文章の構造を掴もう 反復 対比 | |
| 第4講「解き方」を身につける 演習問題 | |
| その他 | 生徒からの質問コーナー |
その後に「わかる」ためにできることを紹介する構成になっています。この辺がテクニックですね。類似表現を探して線を引いたり、自ら図解してみたり、接続語に着目したり、一直線に読み込むだけではない読解方法を提示してくれています。ちなみに接続詞ではなく接続語なのは、例えば文法上の分類では副詞にあたる「もちろん」は文中で「譲歩(逆接)」という形で文をつなぐ役割がある、すなわち「接続語>接続詞」として広く扱っているということです。本書には設問ごとの攻略法までは解説されていないため、『新・レベル別現代文問題集』で学ぶことになります。
ここで1つ注意点があります。そういったテクニックをマニュアル化することの危険性。勉強が苦手=思考力を駆使しない=丸暗記や情報の表面に囚われるという事情があるため、現代文は第一に一文を丁寧に読み込むことから始めてほしいと思います。その読み込むことを効率的に正確にするために「手を動かす」があるという思考順序が絶対。現代文の参考書では構造把握のテクニックがほぼすべての参考書にありますが、文章を読み慣れている人を除き、最初は普通に読んで理解することを目指した方が良いと思います。読解力なき解答力は通用しないとの見方です。
時間無制限で頭から読む。知らない語句については適宜調べてできるだけ理解を試みる。
本書の通りに手を動かして構造を明らかにする。情報には階層がある=重要な部分とそうではない部分があることを知る。文章だけではイメージしにくい部分は図解によって理解を深める。
意味と構造を把握しながら読み直す。この3-STEPをゆっくりでも繰り返していると、最終的には手を動かすことなく流暢に読みながら理解できるようになるはずです。言葉と文章、論理にも馴染む感覚が伴います。もちろん、知らない語句も背景も尽きないため、淀みなく100%理解することは難しいですが、現代文の学習がきちんと意味のあるものになった実感は得られると思います。
本書が現代文の苦手な人の最初の一冊に向かない理由として、練習問題の文章に意外と手加減がないことも挙げられます。以下の引用は類似表現を探すための練習問題です。狙い自体は明確とは言え、見慣れない語句によって論点が外れないか少々不安です。前提知識の個人差から一概には言えませんが、人間中心主義は現代文用語で触れる人が多いでしょう。その後に続く解説も「近代を批判的・反省的に捉えるのが現代――」といったテーマ別対策に近いものも含まれるため、『新・現代文レベル別問題集』の超基礎編から取り組む人、それでも少し重いと感じる人にはまだ早い参考書です。
今日、われわれは、何か判断したり論じたりするときに、いわゆる人間中心主義(ヒューマニズム)と呼ばれる近代的価値観を前提にしている。いってみれば、今日のわれわれの倫理学の教科書には、大書してこの近代的ヒューマニズムが掲げられており、ヒューマニズムに反する論議など論外であって、あらかじめ排除されてしまう。
西原の現代文読解をはじめからていねいに P57より引用
本書はそういった点も含めて全体的に情報量は多めなので、まずは問題集=アウトプットで自己流の読解に限界を感じ、どうやったら現代文の得点が安定するのかといった疑問が浮かび上がってきた人が取り組む一冊として適切と考えます。この学習順序によって問題意識を植え付けないと、本書の情報量はなかなか吸収できません。
やさしく語る現代文との比較
現代文読解において哲学(あるいは数学)が有効に働くという持論があるわけですが、これは抽象的な思考から意味と論理構造の把握が容易に行えるようになると考えているからです。別の言い方をすれば、現代文読解を学ぶなら哲学的、あるいは数学的素養のある現代文の先生の本が有効に働くのではということ。その点で田村先生は京大の哲学科出身。いまだに『やさしく語る現代文』は現代文入門の参考書としてかなり高く評価しています。哲学的素養のある田村先生の語り口はやさしくありながらも、思考の抽象度を上げてくれる心地よい刺激があります。現代文参考書のジレンマも「会話調の解説」によって解決されています。
| やさしく語る現代文 | 西原の現代文読解 | |
| ページ数 | 185ページ | 288ページ |
| 出版年 | 2020/6/24 | 2026/1/24 |
| 内容 | ・現代文はどうすればできるのだろうか ・現代文で客観的とはどうすることだろうか ・助詞はどのように重要なのだろうか ・接続詞はどのように重要なのだろうか ――etc | 「わかる」とは何か 「つながる」ことで「わかる」 「客観的に読む」とはどういうことか ――etc |
| 補足 | ページ数も少なく、類書の中で最もやさしく感じる。独特の雰囲気はあるものの、基本的に誰にでも薦めやすい。 | 今後のスタンダードになりそうな参考書。他の科目を含め、はじめからていねいにシリーズの人気は根強い。レイアウトも見やすい。 |
しかも多くの参考書が対比や比喩、指示語などから構造的な読解を解説しているのに対して、『やさしく語る現代文』はもっと根本的な部分、日本語文法から意識されているので『中学国語文法』との接続が良好なのです(主に助詞と接続詞)。そもそも日本語文法が曖昧なのに現代文読解に取り組むこと自体が間違っています。
加えて、こういった初歩から続く参考書、かつ思考を豊かに柔らかくするものが実のところほとんどありません。多くの参考書は現代文の“解答力”を重視しすぎていると言いますか、読解力から考えるならもはや一般書から探した方が良いのではと思ってきています。この点で言うと本書は中間。わかるとは何かといった根本的な部分に触れながら、テクニックもテクニックとして前面に押し出しているわけではない良い塩梅です。本質的な読解力のためにあるテクニックが強調されています。解答力特化は最悪中身が伴わず、当サイトの方針としても推奨しにくい。
そこで当サイトの現代文の学習順序として『中学国語読解』と『中学国語文法』、および漢字・語彙が初歩としてあり、その後に『やさしく語る現代文』に取り組み、問題集『新・レベル別現代文問題集』で正答率が明確に下がる難易度まで進んでみます。その難易度にぶつかったとき、本書が役に立ちます。最難関大を除けば、設問別の対策は問題集の解説と講義動画で問題ないと思います。つまり、『やさしく語る現代文』だけで志望校の難易度まで進めたなら一冊で十分。足りないようだったら本書を追加。本書と『やさしく語る現代文』は重複する部分が半分くらいありますから、本書が『やさしく語る現代文』の内容を踏襲しつつ発展的な位置づけにあると考えたらわかりやすいと思います。
ただ、本書と『新・レベル別現代文問題集』は同著者、同じシリーズのようなもの。さらに出版年が新しいことから既存参考書の良いとこ取りができているなど使いやすさでは本書に分があります。改訂されたとは言え、古い参考書というだけで使いたくない人も少なくないと思うので、どちらか一冊しか選びたくない場合は本書でも構いません。難関大志望の場合、先に挙げた『現代文読解力の開発講座』や『現代文読解の基礎講義』などを追加するので、基礎レベルに2冊は余計かもしれません。※現代文読解の「0→1」を考えると自分に合った参考書との出会いは模索するべきではあります。




