英文読解入門基本はここだ! ポレポレ英文読解プロセス50―エッセンスを凝縮した分量が魅力

スクロールできます
タイトル英文読解入門基本はここだ!
ポレポレ英文読解プロセス50
出版社代々木ライブラリー
出版年1993/9/15
著者西 きょうじ
目的英文解釈
対象現役高校生から大人まで
分量基本はここだ!:165ページ ポレポレ英文読解プロセス50:129ページ
評価
AI補足説明を加える
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

エッセンスを凝縮した分量が魅力

 本書は1993年に初版が出版されて以降、根強く支持される有名な英文解釈の参考書です。おそらくお世話になった大人も多いことでしょう。昔の英文解釈は属人的なものが多く、本書のような思考プロセス重視が主流でした。西先生にしか解説できないそれらに価値を置いている人が多かったのです。加えて、英文解釈の一冊目として本書『基本はここだ!』が多くの受験生に受け入れられていました。

 そんな古い参考書は現代でも役に立つのか。結論から言うと、時間効率を考えるならまだまだ役に立ちます。英文の読み方は10年、20年で簡単に変わるものではありませんし、本書はシリーズ2冊でページ数も少なく、英文を読むためのエッセンスが凝縮されています。これは文法知識を読解に応用するために気軽に取り組める分量です。ただし、文法知識が曖昧なうちはもう少し簡単な英文解釈『読解のための英文法が面白いほどわかる本[必修編]』などから取り組む方がより良いと思います。文法の定着具合で英文解釈最初の一冊目は変わります。

 また、『基本はここだ!』は52刷で、『ポレポレ英文読解プロセス50』は91刷で大幅な加筆修正が施されています。これは現代的な例文への差し替え、わかりにくい解説、および違和感のある意訳の修正です。本書は思考プロセス重視の英文解釈なので、整理された解説というよりは講義に近いものになっています。それゆえに冗長的な部分がないわけではなく、全体的に相性が出やすいのは事実。音声が付属しない点も欠点です。それでも英文解釈を必要最小限で終わらせたい需要には類書と比べても応えられる一冊になっていると思います。

共通テストや中堅私大など大学偏差値60くらいまでなら『基本はここだ!』だけでも十分に読み解けます。逆にそれで読み解けないときはまだまだ基礎固めが甘い証拠です。

本書の構成と使い方

 使い方としては「例文の品詞分解と構造分析を行うこと」に尽きます。文法学習で学んだ知識を引き出しながら例文を考え抜かずに解説を読んでしまうと、わかった気分になるだけで実力に繋がりません。必ず品詞ごとの役割を把握して、文の中での働きを押さえる必要があります。

スクロールできます
基本はここだ!(第43刷)ポレポレ英文読解プロセス50(第99刷)
収録内容「品詞の役割を知ろう」
「主語と動詞の発見をしよう」
「準動詞と句を理解しよう」
「動詞の型を覚えよう」
「節の役割をつかもう」
「比較文の構造を知ろう」
「倒置を見抜こう」
「同格表現に注意しよう」
「挿入をくくりだそう」
「省略に気づこう」
「共通構文を自然に訳そう」
「SVの発見」
「句や節、共通関係の把握」
「準動詞の主語」
「挿入、修飾語と文の骨格の把握」
「関係詞の理解」
「名詞構文」
「倒置」
「省略」
例題数5050
難易度教科書~入試基礎入試標準~発展
その他基本英文の理解度を測るのにちょうど良い。例文の質には良し悪しがあり、英文解釈の説明のための例文と割り切る必要もある。難関大の英文読解に必要な項目をバランス良く揃えている印象。語彙が補足されていないため、やや不親切な部分もある。

『基本はここだ!』と『ポレポレ英文読解プロセス50(以下ポレポレ)』は難易度が大きく離れていると評価されることもありますが、主にそれは例文の難易度を指しており、解説内容にはそこまでの差がありません。『基本はここだ!』では簡単な例文が取り上げられていますが、単に英文の意味がわかるだけでは意味がありません。文法学習で学んだことを思い出しながら、以下の引用の解説のように自分で説明できるようになるまでです。文構造を正しく理解しながら説明できれば、未知の英文も同様の手順で読み解ける、すなわち応用が利きます。

I found this book easy.
I found this book easily.
これをVOCと考えてしまうと, this book is easily が成立するはずなのですが, easilyは副詞でSVCは成立しないので, この形ではないと判定できます。(Cになるのは形容詞か名詞でしたね) 下はSVO+副詞で, 「わたしはこの本を簡単にみつけました」。同じfindという動詞でも, 使い方によって意味もちがってきます。
基本はここだ! P49より引用

 また、本書シリーズの解説には相性が出やすいものの、今ならAIに補足説明を求めることでスッキリと理解できると思います。AIとの往復で本書の解説の価値に気づけます。文法書に戻ることも大切。

 収録内容に関してはどちらもバランス良くまとめられています。特に『ポレポレ』は難関大対策としてよく利用されますが、その重要事項全般を押さえられる点から“難関大入門”として理想的な位置づけです。ただ、どちらかと言えば私立向き、特に早慶対策に有用だと思います。最難関国公立にある和訳問題に対応する解釈ではなく、難構文をいかに読み解くかに重きを置いているからです。最難関国公立の和訳問題を想定すると『英文読解の透視図』や『京大入試に学ぶ 英語難構文の真髄』が候補に挙がり、国公立・私立の両方で使える『英文解釈code70』や基礎から発展までシリーズ2冊で解説する『英文熟考』が個人的にはオススメです。『英文読解の透視図』は名著で力になりますが、現代の入試対策として積極的に薦められるかと言われると答えに窮します。

入門英文解釈70』シリーズは例文音声が使いやすく、シリーズ4冊もあるので網羅的な対策には薦めやすくなっています。しかし、新装版が出版されたとは言え、例文が当時のまま古いものもあります。もし取り組む際はシリーズ4冊ではなく、『入門』と『基礎』だけに絞って良いと思います。英文解釈の個人的なトレンドは私立志望なら『読解のための英文法』シリーズ、国公立志望なら『英文熟考』シリーズです。

本格的な英文解釈前の読み物としても

 本書シリーズ2冊だけでも大学入試の英文には対応可能ですが、腰を据えてじっくりと読み進めるのではなく、本格的な英文解釈前の読み物として通読する使い方もオススメです。この使い方であれば本書の時代的な古さや構成の欠点も気になりません。言い換えると、本書最大の長所は分量の少なさと講義調の読みやすさ、現代的な参考書にはなかなかない読み物としてのおもしろさにあります。

 英文解釈は何かを覚えるというよりも、それまでの文法知識を読解に応用するための考え方を学ぶものですから、本書のような通読しやすい参考書だけで英文解釈のほとんどは完了できると言っても不思議ではありません。最難関大の和訳問題だけ腰を据えた対策が必要です。なお、著者の西先生はYouTubeに解説動画をアップしています。授業形式はテキストよりも理解しやすい人は少なくないと思うので、本書の理解が足りないと感じたときは利用すると良いでしょう。

もしかすると、本書ほど古い参考書を現代で積極的に使う理由はないかもしれません。しかし、本書のような属人的な英文解釈で、かつさらっと通読できるものは稀少です。属人的な要素は著者の熱意が読者の心をより良く動かす可能性があり、この効果というのが意外と無視できないのです。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!