タイトル | 真・英文法大全 | |||||||||||
出版社 | KADOKAWA | |||||||||||
出版年・価格 | 2022/3/30 2420円 | |||||||||||
著者 | 関 正生 | |||||||||||
目的・分類 | 高校英文法 | |||||||||||
問題・ページ数 | 912ページ | |||||||||||
総合評価 | ||||||||||||
対象・到達レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
対象・到達
【対象】
・英文法を一から学ぶ高校生、大学生、社会人
・英検やTOEICなど資格試験を受検する人
・読みやすい文法書を探している人
【到達】
・大学受験や資格試験に必要な英文法が身につく
・英語4技能に役立つ様々な文法Tipsを知ることができる
※例文音声もダウンロード可能
本書はロイヤル英文法やEVERGREENなどと並べられる文法書ですが、関先生のエッセンスが詰め込まれた属人性の高い一冊になっています。最大の特徴は『912ページにわたる膨大な情報量』と『読みやすさ』に集約されると思います。一般的な文法書はおおよそ700ページ前後であるのに対して、本書はロイヤル英文法と肩を並べる900ページにもなっています。
マニアックな文法知識も収録するロイヤル英文法は、その網羅性と淡々と解説する様から「辞書」と言って差し支えないと思います。対照的に、同じページ数の本書は関先生の講義をそのまま詰め込んでいるかのような文体です。印象は真逆。実際の試験で問われる点を逃さない本書は実用性が極めて高い形で編集されています。アカデミックな印象の強い文法書に比べたら少々俗っぽい印象を受けるかもしれませんが、大学受験やTOEICの講師歴の長い関先生らしい無駄を省いた構成と解説は現代人に受けが良いでしょう。
受験対策として本書を採用する価値はあるか
結論から言うと、文章に抵抗がなく、通読できるなら価値はあると思います。本書は文法の解説ごとに「無印(57、2級、500)」「応用(62、準1級、700)」「発展(67、1級、850)」の3種類に分けられているため、誰であっても使いやすくなっています。こうした配慮は一般的な文法書にはなかなかありません。※(大学偏差値、英検、TOEIC)
本書はアカデミックに対するアンチテーゼ的な文法書と言ったらわかりやすいと思います。関先生の書籍はしばしばそうした対抗意識のようなものを感じることがあり(というより予備校講師然とした態度か)、本書の内容は一般的な文法書に比べて明らかに受験対策として機能する解説が盛り込まれています。そのため、この一点だけでも現役生を中心に使いやすくなっており、学校で配布される文法書を無視するほどの評価を与える人もいるでしょう。もともと文法書をしっかり理解できれば、英文解釈はそこまで必要ないと述べているのですが、本書は特に強調構文や倒置の解説からもまさにそれを地で行くような文法書になっています。
他方で、英語中級者~上級者には『表現のためのロイヤル英文法』や『SKYWARD総合英語』も推したい。知っている人は知っている『英文法詳解』や『英文法解説』も指導者を目指すなら手元に一冊置いておいて損はありません。文法用語を極力省いたスピーキング向けの文法書『一億人の英文法』もオススメです。
文法学習は通読から枠組みを構築したい
薄い文法書から段階的に取り組むより、本書のように体系的にまとまった文法書を通読した方が手っ取り早い。個人的にこれを理想としているため、本書のような講義調の読みやすい文法書は理想的な位置づけになり得ます。実際にはページ数を抑えたアカデミックな文法書なりの良さはまだまだ否定できないため、本書はメインというよりはサポートの位置づけがちょうど良いかもしれません。
文法学習を通読から始める理由は、頭の中に枠組みを構築したいからです。頭の中に文法検索機能をつくる。これによって文法語法問題集に取り組んだときに即座に該当箇所を思い出すことができ、読み返したときに理解を深められるようになります。初めての文法書に本書を推奨できなくもありませんが、講義を際限なく聞いているかのようではそうした枠組みの構築を円滑に行える印象はあまりなく、まずは比較的簡潔にまとめられたEVERGREENなどで構築し、本書で受験対策と難関大に通用する文法の要点を押さえておくのが良さそうです。同じ文法書を2周以上通読するよりは、2周目の代わりに本書に取り組むと高い効果を望めると思います。
別の言い方をすると、本書は読みやすいとは言え、並の生徒が900ページを素直に受け入れられるとは思えず、苦手な生徒ならなおのこと、英文法の救いの一冊になるとは思えません。本書が刺さる人は受験勉強を一通り終えた高校生や大学生、社会人です。現役生ならすでに英検2級以上を持っているか、文法語法問題集を一冊終えている必要があります。もしかすると英文解釈の前に取り組むと効果が大きいかもしれません。本書は関先生の力作で内容も素晴らしいのですが、情報量を適切に処理できる人はそう多くないということです。購入して損はありません。文法学習のどこかで役に立つことも間違いありませんから。
