速読英単語[中学版]改訂版—中学英語の総仕上げに

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タイトル速読英単語 中学版
出版社Z会
出版年2020/3/12
著者風早 寛
目的中学英単語・熟語、難関高校入試対策(偏差値65まで)
対象現役中学生から大人の学び直しまで
分量424ページ、約2300語収録(単語+熟語)
評価
AI中学英語の文章を生成に役立つ
レベル中学復習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

中学英語の総仕上げに

 本書は2020年に出版された速読英単語シリーズの中学版です。速読英単語シリーズは受験英語で非常に有名な単語帳の一つであり、中学版は60の英文を読みながら単語を覚えられる点が最大の特徴になっています。単語の高速暗記なら『DUO3.0』が今もなおオススメですが、単語と例文、リーディング、リスニング、英文解釈といった総合的な英語力を養える本書の利点は計り知れません。純粋な単語帳というより、当サイトでは多読参考書に位置づけています。

 本書の中学版はどのくらいのレベルかというと、都道府県内有数の難関高校(偏差値65程度)に対応可能な約2300語(派生語含む)の単語と熟語を収録しています。速読英単語シリーズは基本的に熟語を含まない仕様ですが、中学版には熟語が含まれています(本来熟語は速読英熟語)。だいたい単語1900語+熟語400語の合計2300語。また、本書は2011年から出版されていたものの改訂版にあたります。これは学習指導要領の改訂によって中学英語の必要単語数(約1200語→約1800語)が増加した背景があり、対応する形で旧版(約1300語)から大幅に収録語数が増えました。※高校英語からの前倒しです。

 そして、本書の約2300語を完璧にすると、英検3級~準2級、高校入門レベルまでを網羅できる計算になります。これは高校以降の単語帳の冊数の削減も意味し、高校以降にオススメの『DUO3.0』や『速読英単語[必修編]』を接続先にできます。ただし、速読英単語シリーズには注意点があります。それは文章を読めるだけの文法と最低限の単語力が必要になること。文章をゆっくりでも読める力がないと、本書の形式で単語を覚える意味が希薄になります。なので本書は純粋な単語帳ではなく、多読参考書に位置づけているのです。

理想を言えば、発音も正しく押さえた上で取り組んでほしいところです。本書はリスニング対策も兼ねられることから何度も音声を利用します。英語の音声学習は、発音の知識が不十分だとカタカナ英語で繰り返すことになって学習効率が大幅に落ちます。現役生にはなかなか興味を持ってもらえないかもしれませんが、発音の勉強には『発音の教科書』シリーズが非常にオススメです。

速読英単語+AI=中学英語の文章生成

 本書は中学英語のレベルをしっかりと押さえている上に、知的好奇心を刺激する英文が収録されています。そこで本書の英文を参考に、AIによって同じレベル感の文章を生成してもらう使い方も有効です。

 英語学習は最終的に多読多聴になりますが、自分のレベルに合ったちょうど良い英文を探すのは一苦労。AIなら英語は得意分野です。一瞬にして文章の生成と文構造の解説もしてくれます。本書を流暢に読めるだけの実力を備えたあとに多読多聴を行えば、読解速度がみるみるうちに成長していきます。英語に限らず、言語学習は慣れによるところが非常に大きいためです。

 もっとも本書を利用せずに「日本の中学英語レベルの英文を300語で生成してほしい」などのプロンプト(命令文)でも十分な回答をしてくれます。ただ、特定の文構造が読みにくいとき、その文構造についての説明を含むプロンプトを考えることが面倒なら本書を利用する価値はあると思います。あるいは特定のテーマの文章を試験対策として多めに読んでおきたいなど、きっと本書を通じた方がAI活用の視点が見つかりやすいでしょう。

間違いなく生成AIによって学習の形態が大きく変わります。参考書すら必要ない時代に突入しつつあるのだろうと感じていますが、2025年現在はまだ参考書の価値はあります。当サイトとしては「参考書+AI」による効率的な学習を模索している最中です。

本書の注意点と音声利用

 一般的に英文の単語・熟語(構文)のうち95%以上は知っていないと文章の意味を正しく理解できないと言われますが、中学英語の文章は推測もしやすい基本単語ばかりなので80%くらいでもなんとか力になるとは思います。言い換えると、80%未満の状態なら見出し語の一語一訳を覚えることに集中した方がより良いでしょう。わからない単語が多すぎる状態で英文を読んでも効率が悪いと言わざるを得ません。

 また、文章を読むわけですから文法も大切です。中学英語の文章は簡単なので、ついつい知っている単語を繋ぎ合わせる読み方でも大意は理解できてしまいますが、文法を軽視した読み方は高校以降確実に足を引っ張られます。少なくともAIによるサポートありきでもしっかりと理解できる文法の下地は欲しいところです。しかし、それを踏まえても現役中学生が本書を積極的に活用できるかというと難しい部類に入ると思われます。難関高校に合格するような学年でトップクラスの子なら問題ないとしても、多くの現役中学生には『320例文で効率よく覚える中学英単語・熟語2000』や『システム英単語[中学版]』あたりが無難な選択肢です。単語を覚えるという意味では、ターゲットのシンプルな一語一訳が最も取り組みやすいと言えます。

 他方で音声利用に関しては先に述べたように発音の学習を終えてから取り組むのが理想ですが、それがなくとも音読教材として何度も活用してほしいと思います。カタカナ英語で音読するもったいなさがあるにしても、左から右へ返り読みをせずに文構造を捉えながら意味を把握できるようになれば、中学英語はマスターしたと言えるレベル=偏差値60程度の高校に合格できるだけの実力に達します。すなわち本書を中学英語の総仕上げとして位置づけても良い。実際はもう少し長い文章を読みたいところですが、本書だけでも中学英語の文構造は網羅されているため、本書を流暢に読めるようになれば理論上、中学英語の範囲で読めないものはないはずです。

したがって、大人の学び直しにおいても中学英語の復習を終える基準として本書は有用です。ただ、本書も高校入試用の単語帳であることには変わりないため、実用英語の観点から言うと『普通の英単語』や『DUO elements』がオススメです。『DUO-BASIC』でも良い。当サイトでは、現役生であっても入試特化の方針を好まず、大学入試でもごく一部の最難関大や医学部を除き、実用英語を意識しつつ合格を目指すような取り組みを推奨しています。

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