タイトル | 化学の良問問題集[化学基礎・化学] 改訂版 | |||||||||||
出版社 | 旺文社 | |||||||||||
出版年 | 2025/6/16 | |||||||||||
著者 | 中道 淳一、 柿澤 壽 | |||||||||||
目的 | 入試基礎以上の典型問題対策 | |||||||||||
分量 | 問題編240ページ、解答編240ページ | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
対象・到達
【対象】
・教科書を終えて入試基礎レベルに移りたい人
・入試基礎から入試標準までの典型問題を網羅したい人
・全統模試偏差値55から
【到達】
・ほとんどの大学の合格レベルに到達できる
・化学の入試典型問題を一通り網羅できる
・全統模試偏差値65以上
本書は2025年6月16日に旺文社から出版されたばかりの「新課程対応」の化学問題集です。旺文社の良問シリーズは数理科目(数学、物理、化学、生物)のみ取り揃えられています。個人的には「ようやく新課程対応の完成度の高い問題集」が改訂されたと感慨深い気持ちです。数学は数研出版のチャート式が依然として強い位置にありますが、理科科目の良問シリーズはチャート式に匹敵するほど定着していくと予想しています。
入試発展レベルは少々物足りないものの、入試基礎~標準までの典型問題を押さえるなら十分です。学習ナビゲーターによって目的の問題を探し出せる配慮もあり、典型問題の中でも必須級とも言える問題は「必ず解いた方がいい問題100問」としてまとめてあります。主要三科目(国語、数学、英語)以上に、理科科目は入試標準までの典型問題を押さえたときの得点率の高さが顕著にあり、加えて参考書ルートがシンプル、かつ勉強しやすいものが揃っているため、何度も繰り返し取り組んでパターン化することも容易です。
本書のメインターゲットは志望校の偏差値55~65になりますが、旧帝大や早慶のような最難関大を想定しても戦えます。ただし、その場合は得点源というより、数学で言うところの入試標準レベルまでを完璧にしたらほぼすべての大学で合格水準に達するに近い理屈です。なお、化学では『実戦 化学重要問題集 化学基礎・化学』が根強く支持されていますが、レイアウトの見やすさや解説の充実度から本書を推します。
問題の構成と利点
分野:理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物
問題の種類:確認問題・必須問題・レベルアップ問題
問題数:確認(69)・必須(214)・レベルアップ(59)
論述問題数:69問
必須100問の内訳:理論(50)・無機(15)・有機(20)・高分子(15)
※本書の問題は全て過去問で構成されています
有機化学の一部に含まれる高分子化合物を第4編に独立して設けた配慮は良いと思います。「確認問題」は教科書傍用問題集に収録されているような基礎知識の確認です。「必須問題」には入試基礎~標準レベル、「レベルアップ問題」は入試発展レベルの問題が収録されています。レベルアップ問題の59問は問題数として少ないわけではありませんが、旧帝大上位(東大・京大・東工大)を想定すると少々心許ないと思います。旧帝大・早慶で合格点を狙う分には悪くありません。
このレベル帯の問題集にして確認問題が多めの印象ですが、解説は丁寧というより簡潔にまとめているため、本書のレベルに合わない人が使用すると痛い目に遭うと思います。本書は先に述べた数研出版の『実戦 化学重要問題集 化学基礎・化学』のA問題・B問題・巻末補充問題と問題の構成が似ているためか、そこと差別化するように解説のレイアウトや補足情報を充実させている意図を感じます(本書の方がページ数が多い)。全体的に硬派な問題集なので、すでに全統模試偏差値60近くある人でないと使いこなせないと思います。
矛盾するようですが、本書の問題が全て初見では対応が難しいため、あえて重複部分を意識してエクセル化学を終えた人が取り組むくらいがちょうど良いと思います。本書は実践力をつけていくアウトプット型問題集。エクセル化学では押さえきれない入試基礎~標準、おまけで発展の典型問題を押さえる目的がベストです。
典型問題は合格の軸をつくる意識
「本書に取り組めば、〇〇大学に合格できますか?」ではなく、本書は入試化学の頻出事項をまとめたものなので「軸」に過ぎません。入試基礎レベル(偏差値60未満)までは問題の網羅も難しくないため、取り組んだかどうかの差で合否が決まることが多いのですが、入試基礎を超えるとそれも段々と難しくなっていきます。
基本的に参考書というのは、効率良く頻出事項を押さえるために使用するものです。志望校を定めず、大雑把な大学群と問題の難易度を入試基礎・標準・発展と分けて収録しているため、志望校によって必ず過不足が生まれます。良問とは、学習効果の高い問題。すなわち問題の答えを覚えるのではなく、問題の意図を把握し、解くための考え方を押さえ、過去問や模試を解けるような実践力にいかに変えられるかが重要です。
別の言い方をすると、本書に帰着できない問題はその都度押さえる必要があります。まずは軸をつくり、あとから枝葉を押さえる。悪問や奇問と言えるような問題は無視して構いませんが、汎用性の高い考え方になり得るものは覚えておくべきです。確かに理科科目は入試標準レベルまでの典型問題が出題されやすく、準難関国公立(神戸筑波横国など)やMARCH、関関同立までは本書を押さえるだけで十分と言えてしまいますが、だからと言って何も考えずに取り組むでは不安が大きくなるということ。
理科科目の参考書ルート概要
『教科書傍用問題集=エクセル化学』
※エクセル化学は解答付きで市販されている唯一の教科書傍用問題集です。セミナーなどは学校専売品。
※入試基礎レベルの大学なら、このあとに過去問も可能です。
『化学の良問問題集』
※アウトプットによってまだ覚えられていないものや理解できていないものが明らかになるので、必要に応じて前の段階に戻ります。
『化学標準問題精講』
※志望校を定めない参考書ルートは目安に過ぎません。志望校によってはもっと効率良く、過不足の無いルートもあります。第一に過去問を解き、そこから綿密な過去問分析のもとルートを構築します。
【科目全体の理解を深める段階】普段から教科書を用いて定期テストで高得点が獲れている人は、受験勉強の効率を損なわない国語力(理解力)を備えています。『宇宙一わかりやすい』などの講義系参考書を用いても構いませんが、国語力不足から用いなければならない場合には影響をよく考えておく必要があります。個人的には講義系参考書を用いるくらいならスタディサプリなどの授業を推奨します。私立理系で国語が不要なら問題は小さい。
【基礎用語と知識を固める段階】エクセル化学などの教科書傍用問題集を用いて基礎用語と知識を固めます。エクセル化学には応用問題も含まれていますが、この段階では無理して取り組む必要はありません。教科書傍用問題集を用いる理由は教科書を網羅的に強く意識したいからです。もっと基礎用語に絞った『ベストフィット化学』や『アクセスノート化学』も悪くありません。生物や化学の暗記事項には一問一答も有用です。いずれにしても、この段階はできるだけ多くの問題に触れて、呼吸するように当たり前なものとして認識できるまで定着させます。
【典型問題でパターン化する段階】本書のような問題集で典型問題を押さえます。エクセル化学と重複している確認問題は、量を考えて取り組んでおきたいところです。エクセル化学は主に共通テストを、本書は国公立二次や私立一般を意識して取り組みます。ここまで押さえれば、どの問題も“見たことある”と思えるようになります。
【発展問題で思考力を強化する段階】入試標準まで押さえたあと、それだけでは足りない難問対策に取り組みます。生物では『生物思考力問題精講』、物理では『物理思考力問題精講』などで思考力やセンスを磨くのも有効です。もっともここまで取り組まなければならない人はほとんどいません。数学の『新数学演習』のようなものですから。
