タイトル | 普通の英単語 | |||||||||||
出版社 | ナガセ | |||||||||||
出版年 | 2025/3/26 1980円 | |||||||||||
著者 | 大西 泰斗、デイビット・エバンス | |||||||||||
目的 | 会話のための英単語 | |||||||||||
分量 | 368ページ | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
対象・到達
【対象】
・英語学習する全ての人、中学英単語から学び直したい人
・海外留学を考えている人
・英検2次対策として
【到達】
・中学~高校入門レベルまでの単語が身につく(英検3級~準2級)
・英会話に必要な基本単語の本質を理解できる
・ネイティブの感覚に近づける
※音声ダウンロード付き(日本語音声あり)
本書は『1億人の英文法』でお馴染みの大西先生による単語帳です。英会話で必須と言える「中学~高校入門」までの見出し語1000語+関連語1000語を収録し、全ての単語に『1億人の英文法』のエッセンスを含む解説を添えています。端的に言うと、限りなく文法書に近い単語帳です。もはや「単語文法書」という新しいカテゴリー。一般的な単語帳に添えられる解説の量を優に超えていますから、本書を単語帳の枠組みで語るのも違うのかもしれません。
have は「手に持つ」という動作を表す動詞ではありません。基本イメージは「近接」(近くにある)。位置関係を表す動詞なのです。例えば、I have a pen.(ペンを持っています)は、「ペンが自分の近くにある」という位置を――つまりは自分の所有権がペンに及んでいるということを表しています。
普通の英単語 P130より引用
こうした解説は受験英語で有名な竹岡先生の『ドラゴンイングリッシュ必須英単語1000』や『LEAP』と近しいものがありますが、本書はそれをさらに拡張したイメージです。また、収録単語に関して言うと、関先生の『スピタン888』のようなネイティブの英会話で頻出する単語というより、日本の英語教育の中で覚えるべきとされる単語の中からネイティブの使用頻度の高いものを選出しています。なので、関先生の『スピタン888』よりは試験対策として機能するものの、本格的な試験対策としては心許ない位置づけです。レイアウトは特筆すべきことはありませんが、もしかするとごちゃごちゃして見にくいと感じる人はいるかもしれません。
worry は「心配する[させる]」を表す日常語。形容詞 worried (心配している)、 worrying (気がかりな) も頻繁に使われます。同種の concern (心配させる) が広く社会的な問題に関して用いられる強い傾向にあるのに対し、worryは個人的な内容に使われます。
普通の英単語 P54より引用
単に「worry」を覚えるよりも、こうした情報を追加で知っておく方があとから効いてくるのはわかると思います。同じような意味を持つ単語を理由もなしに覚え続けるのは苦痛です。有機的な知識になれば丸暗記を防げるだけでなく、長期的な記憶の定着率も上げます。特に現役生は「それがなぜそうなっているのか?」という疑問を与えられることも解消することも一冊で済むに越したことはないでしょう。
基本単語の習得はこうあるべきかもしれない
本書を見つけたとき、衝撃を受けました。このコンセプトは今までになかったからです。そもそも考えてみれば、中学英単語は英会話頻出の最重要単語であるにもかかわらず、一般的に流通している単語帳は英会話の運用が全くと言っていいほど想定されていません。それは高校入試対策、読解のための英単語に過ぎないからですが、本来ならば基本単語ほどニュアンスや感覚の理解を想定しなければならないはずなのです。
『1億人の英文法』が大ヒットしたのはアカデミックな文法書が当たり前の中で、会話のための文法書が斬新だったからでしょう(英語系youtuberの方々の推薦も大きい)。英英辞典によるニュアンスの理解を文法書に取り入れたかのように、その解説を備えた単語帳は今後のスタンダードになる可能性まであります。現役の中学生に本書を扱いきれるかと言うと疑問はありますが、英会話を真剣に考える高校生以上の中学英単語の復習なら『DUO-BASIC』や『システム英単語[中学版]』を超えて薦められるかもしれません。※熟語に関しては近い観点から『DUO-elements』を採用しても良いと思います。
大人の学び直しでは特に、簡単な中学英単語を一から取り組むにはどこか味気なく、英会話への前進を確かに感じられる方がより良いと思います。その点において、現在本書以上のものはないと言っても過言ではありません。会話で使用する場面を一語ずつ想定しながら覚えられます。見出し語1000語+関連語1000語=2000語は十分です。特定の試験対策として用いるのはベストではないものの、このレベル帯の単語はどの試験においても必須級なのであまり気にする必要はありません。
