英検準1級過去問集―レベル・難易度・特徴・評判【レビュー】

タイトル英検準1級過去問集 英検準1級 過去6回全問題集
出版社英検準1級過去問集(教学社) 英検準1級 過去6回全問題集(旺文社)
出版年・価格2024年 2200円~3000円
著者教学社編集部 旺文社
目的・分類英検過去問
問題・ページ数
(完成日数)
824ページ(教学社) 196ページ(旺文社)
総合評価
対象・到達レベル
(偏差値目安)
日常学習
(ALL)
英検3級
英検準2級
英検2級
英検準1級
英検1級
※[入試基礎=日東駒専・共通テスト・地方国公立] [入試標準=MARCH・標準~上位国公立(地方医学部含む)] [入試発展=早慶・旧帝大・医学部・一橋・東工大(科学大)]

対象・到達レベル

・英検を受験する全ての人、大学受験で英検利用する人

・英検の傾向(単語、長文、リスニング、ライティング、スピーキング)がわかる

・4技能の基礎を終えた人

 大学入試では英検利用が急速に進みつつあり、主に英検2級以上、難関大なら英検準1級以上に合格していると、試験科目(英語)を免除する等の優遇措置が為されるようになりました。

 本書はその英検に合格するために必須とも言える「過去問」です。英検の過去問は公式サイトより直近3回分までは無料で手に入れることができるのですが、それ以前のものは市販の過去問を購入する他ありません。また、当然のことながら公式サイトにて配布される過去問には解説が付属しないため、英検の過去問を解きながら正しい理解に結びつけるにも本書のような過去問が必要になります。

教学社版と旺文社版の特徴

・教学社は9回分、旺文社は6回分が収録されています。教学社は英検1級と10年以上前の過去問の取り扱いがありません。旺文社の方が古くから英検の過去問を取り扱っています。

・どちらも2019年度版のものからリスニング音声は無料でダウンロードできますが、次年度の終わり頃にダウンロード期限が設定されています。また、旺文社版は音声CDも別売りされています(約3000円)。

・リスニングのスクリプトは過去問(本書)に掲載されています。

・教学社と旺文社の違いは過去問の収録数のみと言っても良いと思います。旺文社版は収録数が少ないものの、取り扱いしやすい利点はあります。どちらも解説の詳しさはあまり変わらず、強いて言えば教学社は受験英語でお馴染みの竹岡先生が担当されています。

過去問演習が合格の近道

 近道というより、裏道と言ってもいい。それくらい過去問演習による合格率向上は一般的にはあまり認知されていない気がします。おそらく多くの英検受験者は市販されている“英検〇級対策”を謳う単語帳や英作文対策に手を伸ばすばかりです。それでも英検2級までは素直に対策が活きるのですが、英検準1級以上になると過去問の利点が際立つようになります。当然のことながら過去問は全ての対策が一度にできます。

 過去問演習の利点は以下の通りです。

1.本番形式の問題に慣れることができる

2.単語や文章構造の知識面の網羅に役立つ

3.答えの勘所を見極められるようになる

 まず、[1]は説明不要ですね。問題の構成から各大問の難易度、時間制限の感覚などを養える利点は過去問にしかありません。なんとなく全体を把握するだけではなく、問題を解く順番から時間制限内での思考の切り替え、意識配分、問題ごとの要点把握、焦ったときの対処、見直しの優先順位など英検で得点する最適な状態になるまで取り組みたいところです。

 次に[2]は問題への慣れとは異なり、英検で出題される単語や文章構造(言い回し)の知識面を盤石にできることです。例えば、英検準1級以上になると網羅すべき単語の数が増えるため、基本的に市販されている単語帳1冊に取り組んでも十分なレベルには達しません。英検準1級に必要な単語数9000語を網羅するなら、前提として英検2級までの全ての単語に加えて、英検準1級向けの単語帳複数冊を仕上げたいところです。ただ、これも重複を加味すると必ずしも効率が良い方法ではありません。市販の単語帳はあくまで重要単語を押さえるのみ。

 そこで過去問です。だいたい10年分(合計30回分)くらいの過去問に登場した単語を全てしらみつぶしに覚えていくことで問題に慣れながら9000語の全体像を詳細に把握することができます。20年分なら、さらに網羅率は上がります。必要語数が無制限になる英検1級では、この方針の効率が何だかんだ群を抜いていると思います。問題形式も異なる過去問に取り組むことに疑問を覚える人もいるかもしれませんが、知識を押さえる意味では20年前のものでも関係なく有用です。

 そして、[3]の答えの勘所を見極められるようになるとは、「英検なら答えはこれ」と言える感覚が身につくということ。眉唾物に感じるかもしれませんが、過去問を何度も解き続けていると肌感覚で各級の難易度を理解できるようになります。これは英検に限ったことではなく、試験そのものの解像度の高まりとともにメタ的な認知が進むのです。かつてのセンター試験対策なんてその典型でした。

 こうした過去問の大きな利点を知ってか知らずか、合格率の低い英検1級の過去問は特に入手困難、プレミア価格になります。普段から英検1級で出題されるような難単語に触れている人なら問題ありませんが、そうではない人が最も効率良く合格するなら過去問を解けるだけ解くこと。英検の受験料は安くはないので、不合格の回数分だけ無駄になると考えたら10、20年分の過去問を集めるのも悪くないでしょう。英検に限らず、資格試験は過去問中心の攻略が非常に効果的です。

過去問を解けるだけ解いた後、苦手な箇所を克服できる参考書に手を伸ばす。大学受験も英検もTOEICもその他資格試験も全てこの順序です。過去問(全体像)の繰り返しだけで合格するくらいの意識。これなら使用する参考書の数も最低限で済みます。それだけ全体像を第一に把握するメリットはとてつもなく大きいのです。

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