高校生向け国語参考書一覧―中学復習から難関大受験まで【参考書ルート】

国語力は全ての基礎です。国語力がなければ、勉強の効率も授業の質も著しく下がります。この体感しにくい質の差が毎日少しずつ開き、受験の大きなハンデになることは言うまでもありません。勉強しても成績が向上しないという人は、国語力を伸ばすことに集中したら改善されるかもしれません。

国語の全貌と基本方針

 国語は普段からの心がけと家庭環境の影響が最も出る科目です。普段からの心がけとは、本を読むかどうか、他人の話をじっくり聴けるか、文章を読むことに好意的か、自分の言葉で表現できるか、自分の頭で考えているか。こうした普段からの心がけが点数に大きく影響を与えます。

 家庭環境の影響は、主に親子の会話や幼い頃の読み聞かせです。英語にしてもそうですが、子供の日本語能力は周囲にいる大人の会話によって無意識的に培われます。もし、周囲の大人が非論理的で支離滅裂な会話ばかりしていたら、子供はそれを学習して同様に支離滅裂な日本語を身につけてしまいます。

 こうした無意識の積み重ねによる結果を中高生のうちに改善することは簡単ではなく、往々にして国語はセンスという言葉で片づけられてしまうのです。しかし、十分な語彙力(ひらがな、漢字、カタカナ、慣用句など)を身につけ、評論系の論理性を培う文章に触れ続けているうちに改善できる柔軟性がある時期とも言えます。

【基本方針】

(中学国語・日本語文法)→漢字→(小論文)→現代文演習準備→現代文演習 or 古文・漢文

 古文と漢文は共通テストでセンターより難化したとは言え、対策には素直に応えてくれる方です。現代文は演習して伸びるかどうかが何とも言えないため、戦略上、古文漢文を優先した方が良い場合もあります。別の言い方をすれば、現代文は『基礎的な思考力』が充実していると以下の対策も特別必要なものではありません。せいぜい記述対策の視点を学ぶ程度か、それすらも必要ないという人がいても不思議ではありません。

中学復習

・中学国語文法 (全問ヒントつきでニガテでも解ける)学研プラス

中学国語読解 (全問ヒントつきでニガテでも解ける)学研プラス

・付属ノートで実践する 高校生の語彙と漢字 ゴイカン(漢字だけではなく、語彙も強化できる)

 大学受験で必要となる中学国語分野には漢文と古文もありますが、どちらも高校生向け参考書で一から取り組んでも間に合います。他方で中学国語の日本語文法は大学入試で直接的に出題こそされないものの、日本語の文構造の理解は現代文だけでなく、古典文法や英文法の効率を上げるためにも取り組んでおきたいものです。

 取り組む目安としては、日本語の文法や品詞を理解できていない場合です。「助詞って何?」という人は必ず取り組みます。学研プラスの中学国語文法は、文法のみに絞った問題集でオススメです(ジャンプアップノートのような形式)。日本人なら誰もがなんとなく日本語を話せますが、文構造を意識できていないと高校現代文の演習が力になりません。

 中学漢字は高校漢字と重複する部分が多いので、漢字に不安があるなら中学漢字から、なければ高校漢字から取り組んでください。おそらく中学校では漢検の学習をさせられるところもあると思うので、漢検3級以上をすでに取得していたら高校漢字からで問題ありません。漢字学習は語彙力を強化する意識も忘れずに。

他科目とのバランス

 国語力は勉強の基礎ではあるのですが、必ず国語力を優先しなければならないわけではなく、受験においては科目の配点から合格率の高い戦略を採用する必要があります。特に理系であれば、数学や理科科目を優先する必要がありますから、現代文の成績が多少悪くとも時間をかける利点はありません。歴史選択の文系であれば、国語は歴史との相乗効果を生みやすいため、十分な国語力を備える必要性が高まります。長期的に見れば、文理問わず、国語力は高いほどに勉強の効率は上がると考えていますが、残り1年のような期間では判断が難しいところです。

漢字の書き取り(語彙力強化)

・入試 漢字マスター1800+ 四訂版

・語彙力をつける 入試漢字2600

・上級入試漢字・語彙

 基本的には『漢字マスター1800+』で十分ですが、少しでも時間に余裕があるなら『上級入試漢字・語彙』をメインに取り組んでほしいと思います。上級入試漢字・語彙は漢字だけでなく、語彙も学べるようになっているため、語彙専門の参考書をある程度は省けます。

 英単語同様に、漢字は読めて当然という状態にならなければ大学入試では全く通用しません。それに加えて、英語にも重大な影響を与えます。例えば、「demand」という単語は中学英語でも出てくる基本単語の一つですが、意味にある「需要」を見て即座に理解できないとなったら英語の勉強も進まなくなります。

小論文(国語力を伸ばす秘策)

・田村のやさしく語る小論文

・小論文を学ぶ―知の構築のために ※哲学的な思考に触れながら小論文を解き明かす

・[今後追加予定]

 小論文が出題される大学は一部に留まりますが、国語力を総合的に育むには小論文トレーニングが有効です。文章読解とは、読むことでしか培われないわけではなく、筆者と同じ視座に立つこと、すなわち自分自身でも表現することで伸ばせる可能性が高いのです。スポーツを観戦するだけではなく、実際にプレイしてみたらよりいっそう理解が進みますよね。これと原理は同じです。

 しかし、試験科目に小論文がないのに取り組んでいる時間なんてあるのか?と思うでしょう。なので、現実的に優先順位は高く設定しません。ただ、国語力が伸びない人は本当に伸びないので、藁をもすがる想いを抱えている人は騙されたと思って取り組んでほしいとは思います。自分で表現する文章を客観的に観察すると、どこかに国語力の不足感が漂っているはずです。小論文に本格的に取り組まなくとも、今なら『note』のような場で自分の考えていること、感じていることをわかりやすく表現してみるだけでも違います。

 ※筑波大学では二次試験で「面接と小論文」を課していく方針を掲げました(2029年度を目途に)。基本的な学力は共通テストで測定できるため、多様な人材を求めるためだそうです。この流れが他大学にも波及したら、数年後には小論文が重要科目に位置付けられるかもしれません。

現代文(評論)

・(中学国語文法)→田村のやさしく語る現代文

・高校生のための現代文ガイダンス ちくま評論文の読み方

・現代文読解力の開発講座

現代文キーワード読解(頻出論点の整理と用語知識)、高校生のためのちくま評論選・科学評論選

・入試現代文へのアクセス(基礎・標準・発展)、レベル別問題集(レベル1~6)、柳生好之の現代文ポラリスなど

『中学国語文法→田村のやさしく語る現代文』の接続は特に意識してほしい点です。この流れで日本語文法を現代文読解にどのように応用したら良いのかの全体像がわかります。『現代文読解力の開発講座』はやさしく語る現代文の内容をより高度に実践的に仕上げた参考書です。これは現代文の基礎固めが終わったあとに取り組みます。

『現代文キーワード読解』は様々出版されていますが、どれも内容は似たり寄ったりなので、出版年が新しく、レイアウトの好きなものを選ぶと良いでしょう。また、今ならyoutubeやABEMAニュース、Newspicks、Rehackなどの社会・経済・科学をテーマに研究者や論客が集まる回は聴いているだけで力になります。評論とは、大人の少し知的な会話。その会話に慣れると、評論文は読み進めやすくなります。

『高校生のためのちくま評論選・科学評論選』は、思想や科学の評論文に慣れるための多読参考書+評論文の読み解き方も学べる良書です。しかし、この内容を嬉々として読める高校生は少ないと思うので、段階を経て取り組むものになります。すでに現代文が得意な人は本書で満遍なくテーマを押さえておきましょう。

『入試現代文へのアクセス』『レベル別問題集』『柳生好之の現代文ポラリス』は「演習→解答解説(講義)」で実力をチェックしながら、問題を解くためのアプローチを学びます。この手の問題集は自身のレベルに合わせたものを好きに選んで構いません。もし、『やさしく語る―』や『現代文読解力の開発講座』のような解き方の考え方から学べる本が肌に合わなかったのなら、基礎レベルの問題集から取り組んでしまうのもありです。

 国語の対策全体に言えることですが、できるだけ文章に関心を持って読み進め、筆者が言わんとしていることを理解するように努めてください。さらにわからない言葉が出てきたら必ず調べる癖をつけてください。「自分なりに理解できた」ではなく、論理的な根拠を持って「著者が言いたいことはこういうことだ」を積み重ねます。現代文(評論)は自我や主観が読解力向上を阻む要因になりやすい。

現代文(小説)

・ちくま小説入門 高校生のための近現代文学ベーシック

・ちくま小説選 高校生のための近現代文学エッセンス

 評論にも言えることですが、最初は参考書で学んだ読み方を丁寧に行う精読から始めます。ちくま小説入門はやや難易度高めの参考書なので、語彙と文法を押さえたあとに取り組みます。

記述対策

・記述編 現代文のトレーニング(難関国公立向け)

・得点奪取 現代文 記述・論述対策

・国公立標準問題集campass 現代文(国公立記述対策)

・上級現代文 I 改訂版(国公立記述対策)

・上級現代文 II (難関国公立記述対策)

 難関国公立の二次記述対策は、英作文の添削以上に、正しい答えを自力で見つけるのは難しいものになっていますが、その中でも上級現代文の解説は丁寧に仕上がっているため、独学なら特にオススメの参考書になっています。上級現代文 I は最近改訂されてよりいっそう使いやすくなりました。もし、これでも不安だという人は予備校の現代文対策講座(添削指導)を利用するのも手です。

 国語力を伸ばすには小論文トレーニングが有効と述べましたが、国公立向け記述対策(特に要約)でも十分に効果があります。何なら記述対策だけで、現代文は飛躍的に伸ばせるかもしれません。

古文・漢文

・各種ジャンプアップノート 古文・漢文の基礎の基礎をノートに書き込みながら理解する問題集

漢文道場[基礎編]

・古文上達[基礎編]

・古文単語

・過去問 共通テストになっても、センター試験の過去問は国語なら有用です。

[今後追加予定]

 古文・漢文は基礎の基礎から取り組める『ジャンプアップノート』を推奨しています。これをしっかり理解した上で、有名なZ会の『古文上達[基礎編]』あたりを使用すれば効率良く共通テスト・中堅私大・地方国公立レベルまでを固められます。いきなり『古文上達[基礎編]』から取り組んでもほとんど力になりません。

 なお、漢文道場は2022年出版と比較的新しく、共通テストを意識したつくりになっているのですが、古文上達は2006年出版と旧い点は少し注意が必要です。古文の本質は変わらないとは言え、やはり出版年が新しいほどに最新の入試傾向を反映している安心感があります。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!