タイトル | 英文法・語法 良問500+4技能 誤文訂正 整序英作文 空所補充 | |||||||||||
出版社 | 河合出版 | |||||||||||
出版年 | 2017/11/20 | |||||||||||
著者 | 佐藤 進二 | |||||||||||
目的 | 文法語法問題集 | |||||||||||
対象 | 現役生から大人まで 到達:偏差値65以上 | |||||||||||
分量 | 誤文訂正・整序英作文・空所補充 各500問の合計1500問 | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
AI | 類似問題の生成 | |||||||||||
レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
文法語法問題集の網羅性と効率性
本書は2017年に河合出版から出版された文法語法問題集になります。何気なく購入した本書でしたが、予想より遥かに詳細な解説が付属する素晴らしい問題集だったため、当サイトでは文法書を通読し終えたあとの問題集として推奨するに至っています。ちなみに本書の著者である佐藤先生は『英文法QUAD文法問題+読解・英作文の要点300』の共著者でもあります。こちらの解説はコンセプトの都合上、本書には劣りますが比較的充実したものになっていました。
受験英語では共通テスト以降、独立した文法問題が減ってしまいましたが、いまだに私大一般では出題されるところもあり、さらに長文に文法問題が組み込まれる形式も増えています。そのため、かつてのような直接的な得点を稼ぐ意味合いは薄れたものの、四技能の土台という本来的な文法知識の位置づけに落ち着いた形になりました。文法問題のための問題集から文法知識のための問題集になったわけです。
そこで現代受験英語の問題集はかつての網羅性重視から効率性重視に移り変わり、300~600問の問題集一冊を仕上げて済ませる流れが生まれつつあります。その点で本書は2017年出版と網羅性重視の末期(2021年から共通テスト施行)にあたりますが、もともと網羅性重視の文法問題集には「文法問題が解けるだけの知識しか得られない、実用性が皆無」という指摘があったことに加えて、実用英語を重視する流れが四技能に活かせる本来の文法知識のための問題集、すなわち本書を生み出したのではないかと推測します。
理想的な文法問題集の条件
当サイトでは理想的な文法問題集の条件として「ランダム出題・音声付属・良問(過去問ベース)・丁寧な解説」の4つを挙げています。英語初心者にはランダム出題ではなく、単元別出題(ブロック学習)も有効。本書はそれらの条件を満たし、さらに「整序英作文・誤文訂正・空所補充」を500問ずつ合計1500問の3つの異なる角度からアプローチするシリーズになっている上に、四技能に繋がるTipsも備えている盤石な文法語法問題集になっています。問題の疑問点を解消し切る解説こそというのがよくわかります。
おそらく本書の意図としては志望校の出題傾向に合わせた1冊を選ぶものだったと思いますが、人間は知識を深めたり、固めたりする際には異なる角度からのアプローチが効果的に働きます。例えば、ある疑問の答えを1人から説明されるよりも3人からされた方が理解が深まるのはわかるでしょう。別の言い方をすると、文法問題集によくある空所補充の問題形式が文法暗記の作業に陥りやすかったのです。本書の誤文訂正は曖昧さを許さない文法知識に、整序英作文は英作文力を上げながら文法知識を定着させ、空所補充が文法問題の入り口としてわかりやすく機能しています。※英作文は英作文専用の参考書ではなく、単語帳や文法問題集から対策が始まっていると考えた方が良い。
そして、類書よりも圧倒的に優れた丁寧な解説です。誤文訂正と整序英作文には約350ページの解説が付属しています(空所補充は約280ページ)。1問ごとに「なぜ、その答えになるのか。どうやって導けば良かったのか」という解き方の疑問を押さえながら、派生する知識、例えば「他動詞と間違えやすい自動詞一覧」や「複数形で意外な意味を持つ名詞一覧」「SVO to do の形で用いる動詞一覧」など余すことなく掲載しています。ゆえに解説を読むだけでも力になり、周回しながら派生する知識も押さえていけるため、本書3冊を使い倒したら大学受験で要求される文法語法の知識はほぼ網羅できると言って良いでしょう。誤文訂正は難関大の過去問が中心に取り扱われていることから入試発展レベルまでの文法知識を押さえられると言っても差し支えないと思います。
解説の一例
I cannot ①help noticing that young people ②these days have a tendency ③to complain too much about matters that ④I do not seem important.
英文法・語法・良問500+4技能 誤文訂正編 問題101より引用
この問題の答えの解説として以下の引用を参考にしてください。解答は「do not seem」です。同格のthatではなく、関係代名詞のthatと考えて主語「I」を削除する必要があります。
・問題文の2つ目のthat以下の構造は… matters that I(S) do not seem(V) important(C) という第2文型。thatの後に「完全文(←ここでは第2文型)」が続くので、このthatは同格用法の接続詞ということになる。ところが、「私は重要ではないようだという事柄」という不自然な意味になるので④が間違っていると判断できる。
・④のIを削除すると、matters that(S) do not seem(V) important(C) という構造になる。thatの後に「不完全文(←ここでは述語動詞seemに対する主語が欠けている)」が続くので、このthatは主格の関係代名詞ということになる。「重要ではないような事柄」という意味も通るので正解。S seem C は「SはCのように思われる」という意味。〈名詞+that節〉の区別は問題61を参照。・① cannot help doing 「…しないわけにはいかない/どうしても…してしまう」 ② these days 「この頃/近頃/最近」, have a tendency to do 「…する傾向がある」 ③ complain about [of] A 「Aのことで不平[不満/文句]を言う」
英文法・語法・良問500+4技能 誤文訂正編 解答P64より引用
いかがでしょうか。スッキリと理解できる解説になっていると思います。全ての問題に対して解き方を示し、問題文にある語彙や用法まで取り上げています(頻出するものは一覧)。問題を解きながら派生する知識を押さえられるというのは、そのまま脳内でネットワーク化されることを意味します。
イディオム・比喩・ことわざ・口語表現
古くから有名な文法問題集『Next Stage 英文法・語法問題 4th edition』『英文法・語法 Vintage 4th Edition』には「イディオム・会話表現・発音アクセント」も含まれているのですが、本書は文法と語法に特化した問題集です。本書の問題文から解説に掲載されている知識を全て網羅できると、特に語法の知識に関しては大学受験レベルなら非の打ちどころがなくなります。それは実用英語の観点から言っても心強い網羅率になっていると思います。しかし、イディオムや会話表現は何で補完したら良いのかと悩むかもしれません。
そこで本書の接続先というか、単語と熟語のセレクトとして『英熟語 最前線 1515』を推奨します。当サイトでは高校英単語に『DUO3.0』を筆頭候補に挙げていますが、熟語の収録語数は圧倒的でも、難関大向けのイディオムや比喩、ことわざ、口語表現(会話表現)はほとんど含まれていません。もともとそれらは狙い撃ちできるものではなく、単語帳の形式で勉強するよりも(したところで)過去問をはじめとした実戦で押さえる、つまりは多読多聴の段階でなんとかするものに位置づけた方がより良いと考えていました。今もその考えに変わりはありません。
ただ、難関大向けの熟語に絞り、かつイディオムをはじめとした知識を補完できる熟語帳には一定の価値があります。本書はだいたい教科書標準から入試標準までを中心に取り扱っているため、入試発展の知識がやや弱いと言えば弱くなっています。文法語法問題集と熟語帳で考えるのは少し変な話ですが、得られる知識の観点から見るとバランスが良く、難関大向けの文法語法問題集を新たに加えなくて済むのは魅力なのです。