タイトル | プレックス数学重要公式・定理集 | |||||||||||
出版社 | 河合出版 | |||||||||||
出版年・価格 | 2019/7 | |||||||||||
著者 | プレックス製作委員会 | |||||||||||
目的・分類 | 公式・定理の辞書 | |||||||||||
問題・ページ数 (完成日数) | 文系(357ページ) 理系(472ページ) | |||||||||||
総合評価 | ||||||||||||
対象・到達レベル (偏差値目安) | 日常学習 (ALL) | 教科書基礎 (40~45) | 教科書標準 (45~50) | 入試基礎 (50~55) | 入試標準 (55~65) | 入試発展 (65~70) | ||||||
対象・到達レベル
・高校数学における重要公式・定理を網羅的に扱っている
・問題集との併用で基礎力をより盤石にできる
・公式をより深く理解し、説明できるようになる
本書は辞書としての利用がメインです。丸暗記する類のものではなく、学校の授業や問題集に取り組む際に併用して各基礎事項(公式・定理)を思い出したり、整理したりするものです。公式集は一覧があるだけの素っ気ないものが多い中、本書はひとつひとつの公式・定理に証明がついています。
本書の構成(全472ページ)
・数学IA・IIB・IIIで使用される重要公式・定理が1ページにつき1つ証明と共に掲載されています
・各公式・定理ごとに練習問題も1~3問掲載
・掲載形式はチャート式に近い
※文系版と理系版の二つに分かれていますが、数学IA・IIBの内容は完全に重複しています。
実際のところ、本書のような公式集の利用価値がわからないという人は少なくないと思います。本書は単なる公式の確認として用いるだけでなく、「理論上、教科書を完璧に理解したらどんな難関大の問題も解ける」といった言説を本気で促進する補助教材として捉えてほしいのです。
数学の問題の解き方は大きく分けて2種類あります。一つはいわゆる解法暗記。典型問題をパターン化してしまう方針はほとんど考えもなく解けるようになります。そして、もう一つは思考力を駆使する解き方。東大や京大、東工大のような最難関大の理系数学(一部文系数学)で出題される難問で必要となるものです。もっともこれもまた解法暗記的に解けるという意見もありますが、趣旨としては数列なら数列の性質、図形なら図形の性質を深く理解していれば解法の糸口に気づき、証明も円滑にできるようになるということ。
最難関大であっても入試標準レベルまでの解法暗記を完璧にすれば合格点を見込めるため、そうした難問を切り捨ててしまう人も少なくないと思います(特に文系)。しかし、解法暗記を過信すると、逆に覚えるべきことが増えるだけでなく、国公立の記述に全く通用しない丸暗記数学が完成してしまいます。これを解消するには各単元・領域の基本的な性質を有する公式・定理といった根本から問題の全体像や意図を広く柔軟に考える習慣、すなわち本書のような公式集を手元に置いて問題を解く(考える)わけです。
公式・定理集の併用は意外と効果が大きい
本来、数学は問題を解くにしても公式・定理の理解なくして進みませんが、単純な問題の答えを導くだけなら公式の丸暗記で事足りてしまうのは事実です。しかし、そうした丸暗記の一時しのぎは悪しき解法暗記を誘発し、本番の試験問題を目の前にして何もできなくなるまでが受験数学あるあるかもしれません。
そこで本書のような公式の証明や導出を手元に置いておき、問題と解法の理解を深めるヒントとして適宜使用してほしいと思います。特に国公立の記述では「なぜ、その公式を用い、答えとして導けるのか」を理解していない答案は綻びが目立って減点対象になります。往々にして数学の先生は採点者とのコミュニケーションを放棄した機械的な答案を嫌います。
数学の厳密性を押さえるように、丁寧な証明、論理の道筋が見える答案の方が部分点に繋がりやすいのは間違いありません。数学に比べて国語や英語では「なんとなく」が許容される場面が多いのですが、数学は無駄なく漏れなく被りなく一歩ずつ確実に詰めていく必要があります。これを実行するには普段から「自分が今何をしているのか」「なぜ、この公式を用いるのか」といった土台から要素ごとに検討していくことが不可欠です。人によって数学や物理の思考は特殊に映るかもしれません。
そして、もし公式の理解をさらに深めたいなら『総合的研究 公式で深める数学』まで手を伸ばすのもオススメです。こちらはチャート式などで解法暗記を進めている人には特に効果があります。公式は暗記するものというより、数学的な事象を理解していたら自然と導かれる感覚に気づいてほしいのです。
数学は問題と対峙してこそ伸びる
数学は油断すると丸暗記に陥り、すぐに成績が伸びなくなります。それは最も理解を必要とする証左であり、難しい問題に粘り強く考えられるかどうかで分岐するように思います。すぐに諦めてしまう人は伸びません。
数学の基本方針は、第一にチャート式や基礎問題精講で基礎固めをすること。ここからすでに理解を求められていますが、単純な解法暗記と認識していてもまだ成績は伸びます。「基礎だから簡単、だから暗記で乗り越えられる」という節約思考に陥るのはあるあるです。理解が大切と言っても、理解が足りないことで解けない問題にぶつかるまで理解の大切さなんて普通はわかりません。
次に、適正レベルの過去問などで実践問題を解きます。ここでコテンパンに打ちのめされ、理解の大切さに少しずつ気づいていくわけですが、完答できなくとも頑張って考え抜いてほしいポイントです。考える際には、頭の中から引き出せる知識を総動員しながら「どうしたら解けるのか?」あるいは「なぜ、解けないのか?」を可能な限り自問自答してください。そして、解答を見て「なぜ、これで解けるのか?」をとことん考えてください。知識も全くないものは考えても仕方がありませんが、それなりに知識はあるはずなのに答えを導けないときには『解答からその答えを導く考え方』を意識して吸収しましょう。
すると、以前までは節約思考で暗記を推進していた脳が「問題を解くための理解」を重視するように変わります。理解とは、知識の肉に触れる感覚。語弊があるかもしれませんが、このように『理解』は遠回りによって構築されるところがあります。正しく失敗をして、失敗から正しく考えること。いい加減に取り組んだ失敗は原因が不明瞭となり、伸びるために必要な失敗になりません。
そして、理解を求めていくとき、本書の公式・定理の証明が一役買います。経験上、暗記は楽と言えば楽ですが、おもしろさは生みません。理解は最初こそ大変ですが、おもしろさを生みます。長期的に成績を伸ばすには、このおもしろさが非常に重要です。