- 英語的な発想で英語を捉えられるようになる
- スピーキングの頻出単語も掲載
日本語との違いをきちんと考えるところから
以前に紹介した「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」では、日本の英文法学習における盲点を深く掘り下げていましたが、こちらはスピーキングにおける英語的な思考法を紐解く内容になっています。
受験参考書では「日本語的な発想で英語を捉えてはならない」という指摘が散見されるようになっているものの、どうしてもまだまだ感覚的な理解に留まるところを本書では的確に言語化している印象です。ネイティブスピーカーはどういう思考で英語を話しているのか。この答えに早くに近づいた方が英語学習の効率は上がるでしょう。
個人的に第一章「英語の情報パッケージ」、第二章「潜在意識のテンプレート」、第六章「標識となる言語の威力」が参考になりました。第一章と第二章は英語の思考法について。単純に読んでいて興味深い内容です。第六章はスピーキングの展開方法について。英検のスピーキング対策にも掲載されていそうな内容ですが、英語の思考法と併せて読むと納得できるものになっています。
対象レベルは、あえて英語初心者から中学英語を終えたくらいの人を想定します。少しでも早く英語を俯瞰できるようになれば、特に英文法と長文読解に活きるのではないかと思いました。
ただ、この手の本を手に取る読者は英語上級者である場合が多いかもしれません。日本人の英語学習の順序として、スピーキングは最後に位置付けやすい、すなわち英語上級者だから取り組むものになっているからです。ほとんどの人はスピーキングに触れずに終わるか、真剣に取り組むことがありません。
そして、英語上級者にとっては少し物足りない内容と思われます。英語上級者ともなれば、数多くの英文(英語音声)に触れ、本書に書かれてある内容は無意識的な学習として積み重ねられているからです。
この点において、実は初心者の方が有用と考え、対象レベルに想定しました。無意識的な学習を積み重ねる前の座学として、ひとまず頭の片隅に入れておくには悪くない内容になっています。惜しむらくはどこかの自己啓発本にありがちなタイトルで損をしているところでしょうか。
他言語の習得は世界の広がり
英語は抑揚が多く、重要な部分をしっかり強調して話すため、抑揚の少ない日本語と比べて感情表現が豊かと語られます。英米人からすると、日本語は平坦で感情を読み取りにくいと映るそうです。確かに日本人の感覚からしても、抑揚一つで感情を読み取れる場面は少ないかもしれません。抑揚より、口汚い言葉や音の大きさで表現する場合が多い気がします。表情もはっきりさせませんからね。
こうした日本語と英語の事情について知っていくと、言語によって広がる世界は大きく異なることを実感します。つまりは他言語を深く理解するとき、自らの世界が一つ増えるといっても過言ではない状態なのです。日本人には日本語によって形成される独特の文化があり、英語にも同様に存在します。
これは非常に興味深い人間社会の習性と言いますか、極端に言えば、私たちは言語によって無意識的に縛られている部分があると考えられます。日本語なら表現できること、英語では表現できないこと。この違い一つでも、日本人と英米人には認識できるものとできないものがあるわけですから。
英語学習の動機は人それぞれですが、個人的にはそうしたまだ見ぬ世界への扉を開くつもりで取り組んでいます。本当に少しずつではありますけどね。