タイトル | 山川 詳説日本史/世界史 探究 | |||||||||||
出版社 | 山川出版社 | |||||||||||
出版年 | 2023年4月 | |||||||||||
著者 | 日本史 老川 慶喜、大津 透、早乙女 雅博、坂上 康俊 他 世界史 阿部 幸信、池田 嘉郎、勝田 俊輔、島田 竜登 他 | |||||||||||
目的 | 高校の歴史教科書 | |||||||||||
分量 | 398ページ | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
対象・到達
【対象】
・歴史の学び直しを考える全ての大人
【到達】
・高校日本史/世界史の流れと要点を網羅できる
本書は、山川出版社から出版されている高校の歴史教科書です。教科書なので市販されていませんが、教科書取次店での注文の他、店舗で販売されていることもあります。これは学び直しを考える大人からの需要が高いためだからだそうです。このクオリティにして値段も破格。歴史科目は一般教養に結びつきやすく、国内ドラマなどでも頻繁に取り上げられていることからも“歴史に興味を持つ大人”が自然と生み出される土壌が日本にはありますね。
また、日本の歴史の教科書は諸外国からも密かに人気を集めており、その需要に応えて『JAPANESE HISTORY for High School』『WORLD HISTORY for High School』が発売されるに至っています。なぜ、日本の教科書の人気が高いのかというと、客観性の高さと世界の歴史がバランス良くまとめられているからだそうです。歴史の教科書というと、どうしても政治的な意図を含んだ保守的な傾向が強くある中で、日本の教科書は政治的な扇動もなく、歴史的事実を客観的に記そうとする点がフェアな印象を与えているのかもしれません。
本書の構成
『日本史探究』
【第1部】原始・古代
第1章 日本文化のあけぼの
第2章 古墳とヤマト政権
第3章 律令国家の形成
第4章 貴族政治の展開
【第2部】中世
第5章 院政と武士の躍進
第6章 武家政権の成立
第7章 武家社会の成長
【第3部】近世
第8章 近世の幕開け
第9章 幕藩体制の成立と展開
第10章 幕藩体制の動揺
【第4部】近代・現代
第11章 近世から近代へ
第12章 近代国家の成立
第13章 近代国家の展開
第14章 近代の産業と生活
第15章 恐慌と第二次世界大戦
第16章 占領下の日本
第17章 高度成長の時代
第18章 激動する世界と日本
『世界史探究』
【第1部】諸地域の歴史的特質の形成
第1章 文明の成立と古代文明の特質
第2章 中央ユーラシアと東アジア世界
第3章 南アジア世界と東南アジア世界の展開
第4章 西アジアと地中海周辺の国家形成
第5章 イスラーム教の成立とヨーロッパ世界の形成
【第2部】諸地域の交流・再編
第6章 イスラーム教の伝播と西アジアの動向
第7章 ヨーロッパ世界の変容と展開
第8章 東アジア世界の展開とモンゴル帝国
第9章 大交易・大交流の時代
第10章 アジアの諸帝国の繁栄
第11章 近世ヨーロッパ世界の動向
【第3部】諸地域の結合・変容
第12章 産業革命と環大西洋革命
第13章 イギリスの優位と欧米国民国家の形成
第14章 アジア諸地域の動揺
第15章 帝国主義とアジアの民族運動
第16章 第一次世界大戦と世界の変容
第17章 第二次世界大戦と新しい国際秩序の形成
【第4部】地球世界の課題
第18章 冷戦と第三世界の台頭
第19章 冷戦の終結と今日の世界
※2022年度の新課程からB5変型判となり、以前よりも少し大きくなりました。
原始から現代までを約400ページの教科書一冊にまとめるのはもとから無理難題ですが、それをなんとか実現しようとして1ページあたりの密度が非常に高くなっています。冗談抜きで、たった1ページだけでもきちんと周辺知識を拾って正しく理解しようものなら1週間はかかりそうなほどです。歴史科目の分量の多さに受験生でなくとも舌を巻きます。ただ、そうした要点を詰め込むだけにならざるを得ない中でも、構成も文章もよく練られており、歴史の流れと出来事を(史料も掲載しながら)少しでもわかりやすく正確に伝えようとする意図を感じます。大人であればその質の高さに驚くでしょう。
そして、日本史/世界史探究は日本と世界の歴史を深掘りしているものですが、もし日本史と世界史の両方を同時に勉強したいなら『歴史総合(旧:日本史A/世界史A)』がオススメです。教養のための最初の一冊なら特に。歴史総合の教科書は『歴史総合 近代から現代へ』が扱いやすいと思います。254ページで軽い。どちらも大人の学び直しなら欠かせない一冊です。本書で歴史全体の流れと枠組みを掴みながら、気になる部分を他書で深掘りするとバランス良く知識を得られると思います。
受験勉強での位置づけ
受験勉強に際しては歴史科目が必要なら有用ですが、偏差値55未満の志望校なら必要ないかもしれません。大雑把に歴史の流れと要点を把握するだけなら、ターゲットに対してもっとわかりやすい参考書があります。本書は偏差値60以上の大学、特に旧帝大や早慶といった最難関大を志望する場合、教科書の史料や図表を参照したり、時代の流れと共に知識を細かく整理・確認したりするために使い込まれてこそのものです。最難関大なら「教科書の全てが重要」と言えるだけの要求をしてきますからね。
入試問題は教科書から作問される以上、教科書の隅々まで目を通しておけば高得点は約束されているということ。それを裏切る許しがたい悪問・奇問が出題されないとは言いませんが、基本的に教科書を網羅する作業が歴史の受験勉強です。教科書だけで入試問題を解けるならそれに越したことはなく、またちょうど良いギャップなら思考力向上の機会にもなります。いずれにしても、教科書をベースに考えていくとより良いと思います。
ただし、教科書に頼り過ぎると、今度は入試に関わる優先順位の判断ができなくなりかねません。そこは過去問分析をはじめ、一問一答やその他問題集で知識の種類と比重を念頭に置けるようにしておきましょう。その都度教科書に書き込み、自分オリジナルの教科書にする人もいます。歴史科目は知識を体系化する作業が他の科目よりも顕著に求められ、そこに気づかずにぶつ切りの暗記をしたり、時代の流れと枠組みから知識の整理ができていなかったりする失敗があるあるです。こうした思考作業は大人でも仕事に役立ちます。知識はそのまま覚えるだけが全てではないわけです。物事の覚えが悪いなどと感じている人は、知識の整理の仕方を歴史科目から学ぶのも手です。