速読英単語 必修編 [改訂第8版]【第7版増補版との比較あり】―レベル・難易度・特徴【レビュー】

タイトル速読英単語 必修編 [改訂第8版]
出版社Z会
出版年・価格2025/02/25 1540円
著者風早 寛
目的・分類高校英単語
問題・ページ数番号付き単語1903語(派生語・関連語含めると約3300語) 540ページ
総合評価
対象・到達レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達レベル

【対象】
・高校入門レベルの単語を終えた人

【到達】
・私大最難関(早慶)を除くほとんどの大学に対応できる(偏差値65程度まで)

 本書は3年ぶりの改訂となった速読英単語の最新版です。第7版は音声CD別売りだったため、第7版増補版としてダウンロード形式に改められて販売されていました。その増補版では英文が2つほど差し替えられましたが、別冊にある英文解説とディクテーションの充実が目立っていた形です。

 こちらで述べた通り、英語学習は最終的に多読多聴を行うことになります。その際、良質な英文に触れたいと考えるなら、手軽に取り組める本書をオススメします。特に受験生ならば、速読英単語を使いこなせるレベルになったら繰り返し利用してほしいと思います。重要単語の確認をしながら、リスニング対策もでき、汎用性の高い英文を何度も読むだけで実力が伸びます。

速読英単語の完成形

 長文の音声利用の効果を最大限引き出すための「発音記号と発音の仕方」から始まり、リスニング対策のポイントも、まとめてチェックでは現役高校生が軽視しやすい身の回りの重要単語をまとめ、英単語の暗記に役に立つ「接頭辞・接尾辞」の語源情報も解説しています。派生語・関連語の補足情報も『鉄壁』に匹敵する充実度を誇り、国公立・私立問わず、本書一冊でほぼ全ての大学を網羅できると言っても過言ではありません。※上級編は最難関私大寄り

 また、今まで必修編と上級編では見出し語の例文があったりなかったりだったのに対して、第8版では全ての番号付き見出し語に例文がつきました(例文音声も付属!)。これに伴い、レイアウトも統一感のある形になり、かなり見やすくなったと思います。第7版増補版で付属したおまけのディクテーションは削除され、受験生が求める情報が増えた印象です。

 現状、非の打ちどころがないと言って良い。これこそが「速読英単語」という単語帳の完成形だと思います。本書を1冊目の単語帳として採用するかの議論もありますが、単語と例文音声が付属し、部分的にターゲットと同じ使い方ができるなら問題は小さくなりました。※ターゲットのほぼ上位互換と捉えても良いのかもしれません。ターゲットの優位性は英検頻出単語の付属と出る順のみになりました。

Q.他の有名な単語帳は?
・『システム英単語』はそろそろ改訂版が出版されそうですが、まだまだ収録語数(2000+200)も十分あり、ミニマルフレーズの価値も衰えていません。
・最近改訂された『LEAP』は難単語が追加され、竹岡先生らしい充実した補足情報には変わらぬ価値があります。見出し語2300語は十分。
本書は音声利用もしやすく、全ての見出し語に例文が付属し、長文・リスニング対策、派生語・関連語も充実と1冊で一石二鳥以上の効果を上げられますが、その分、使いこなすのが大変なのは事実です。個人的な好みを言うと、非常にオススメではあります。

第7版増補版との違い

■英文の差し替えと追加(英文70→71に増加) ※一部タイトルのみ変更あり

IN (合計46)OUT (合計45)
・ジェンダーバイアスとその克服(1)(2)
・竹は不思議な植物(1)(2)
・胸やけにはレモンを(1)(2)
・国によって異なる笑顔の意味(1)(2)(3)
・科学者セシリアペインの学生時代(1)(2)
・言葉はどれほど人を傷つけるか(1)(2)(3)
・フェイクニュースの拡散(1)(2)
・メルボルンのデジタル緑化運動(1)(2)(3)
・hyggeとは(1)(2)(3)
・「評価」の落とし穴
・コーヒーと心臓疾患(1)(2)(3)
・ウナギの生態(1)(2)(3)
・香りと記憶の関係(1)(2)
・コティングリー妖精事件(1)(2)(3)
・「ゲーム化する」日常生活(1)(2)(3)
・スポーツに見る男女平等と賃金格差(1)(2)(3)
・夏目漱石のロンドン生活(1)(2)(3)
・人間とAIの未来予想(1)(2)(3)
・ジェスチャーの違い
・皮膚の役割
・紫色のもと
・「熱い」か「辛い」か
・数学の歴史(1)(2)
・英単語はいくつあるか(1)(2)
・結婚式の慣習(1)(2)
・ディズニーの大きな決断(1)(2)(3)
・触れることの作用(1)(2)
・サッカーの起源(1)(2)
・群集心理(1)(2)(3)
・クローン技術の是非(1)(2)
・ビタミンAの重要性とサツモイモ(1)(2)
・家族で食事することの重要性(1)(2)
・スーパーの便利さと運搬燃料(1)(2)
・熱湯の方がより速く氷になる?(1)(2)(3)
・AIについて(1)(2)
・ヒトの自然治癒力
・個人主義と協調主義
・テクノロジーは人間の職を奪うか(1)(2)
・外国語を学ぶ際に必要なもの(1)(2)
・アレルギーが増加する背景(1)(2)
・つらい経験を書くことの効用(1)(2)
・テレビゲームの影響力(1)(2)

■全ての番号付き見出し語に例文が追加
■ディクテーションの削除
■音声は3種類(natural、slow、natural British)
■番号付き英単語に重要度を表記()
→速読英単語の欠点であった単語の優先度が改善
■まとめてチェックが充実
→接頭辞・接尾辞の解説が大幅増加
→カタカタ語(人や属性、身の回りのもの)から多義語、生物、人体や身体の部位、地形・地理などわざわざ単語帳では取り上げないけれど重要なものを収録

本書に取り組む際の注意点

 本書は純粋な単語帳ではなく、単語帳の機能を有する多読参考書と思ってほしい。文章の中で単語を覚えるコンセプトは有用ですが、それでもわからない単語だらけでは意味がなく、英文の90%は知っている単語、かつある程度はスラスラ読めなければコンセプトを活かせません。そのため、本書に取り組む前に『読解のための英文法[必修編]』などで基礎的な英文解釈を終えておくことが望ましいです。

 英文から単語を覚えるとは、文脈から単語を推測する作業を含みます。それが有機的な結びつきを生み、記憶の定着率を向上させるわけです。そして、英文を読み終えたあとには必ず別冊の英文解説で文構造を正確に理解してほしいと思います。なんとなく読んで終わりではあまり意味がありません。また、音声利用の前に「発音記号と発声の仕方」と「リスニング対策」に目を通し、カタカナ英語から少しでも脱却できるように努めます。これによってリスニングの最低限の下地ができます。

理想を言えば、全統模試偏差値55~60になってから取り組むことを推奨します。そのレベルになったら程良い負荷で読み進められると思います。本書の単語レベルは偏差値50~65程度ですが、偏差値50から取り組むには負荷が大きすぎます。

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