『チャート式基礎からの中学国語』旧版—日本語文法と漢字を学び直せる・レベル・使い方・注意点【レビュー】

チャート式基礎からの中学国語
総合評価
( 3 )
メリット
  • 日本語文法と漢字を効率よく学習できる
  • 各章に分けられていてわかりやすい

対象・到達レベル

・日本語を使う全ての人、現役中学生から大人まで

・大学受験の現代文対策まで日本語の基礎が身につく

 日本人にとって意外と日本語文法は軽視されやすい上、あらゆる勉強の基礎は国語力ですから、誰もが取り組んでおきたい一冊になっています。国語力が不足しているだけで勉強の効率は著しく下がります。

中学国語の日本語文法と漢字に絞った内容

 チャート式と言えば、大学受験向けのチャート式数学(いわゆる青チャート)が有名ですね。数学の青チャートは網羅性と要点を重視した問題集となっていて、全てを押さえられたら難関を除く受験数学の標準レベルなら対応可能になるとよく語られています。本書もその特徴と違わず、要点整理された情報量多めの内容です。

 中学国語は「日本語文法・漢字・読解・古典(古文と漢文)」の4部構成になっていて、その中で苦手意識を持ちやすいのは日本語文法と古典と思われます。古典は実用性が低く、身近でもないために興味を持ちにくい。日本語文法はあまりに杓子定規に語られる内容と専門用語(品詞)に取っつきにくい。

 本書は日本語文法と漢字に焦点を当てたものになっていますが、大人の学び直しの目的としてオススメなのは日本語文法(と熟語の組み立て)です。日本語文法は英文法を学ぶ際に、日本語との相違点の理解に役立ちます。相違点の理解は、日本語的な発想で英語を捉えないようにできる期待が持てます。熟語の組み立ては、現代文の読解において知らない漢字が現れても意味を紐解けるようになります。

 ただし、本書は入門や基礎のような簡単な内容ではなく、標準レベルです。一から順を追って理解を促すというより、要点を詰め込んだ参考書なので解説が物足りないと感じる人もいると思います。現役の中学生や国語に苦手意識を持つ大人は、基礎からやさしく解説された別の参考書がオススメかもしれません。

苦手なもの、興味がないものに向き合うこと

 大人になって思えば、日本語文法をはじめとした日本語の知識と能力は英語やその他の教科を学習するために役立つことを実感しますが、中学時代にはその重要性に気づくことなく、つまらない時間だったと回顧します。同時に、本書の内容に興味を持てる中学生が確かにいたことを思い出します。その知的好奇心は大人並みです。

 好きこそものの上手なれ。どんな勉強も知的好奇心に導かれている状態が最も強く、義務感を取り除けない勉強は限界もすぐさま訪れることがよくわかります。逆に言えば、それほど子供にとっては高度な内容に触れていて、時に古文や漢文は必修ではなく、選択式にすべきとの批判が起こる理由も肯けます。数学とは違った意味で学習する意義を見失いやすい分野です。

 他方で、何でもいいから魅力を見つけて取り組んでみると、いつしか分野同士が繋がりを持ち、学ぶ意義が見出されるという感覚を少ないながらも経験しています。本当に無駄かどうかは、その時点だけではわからないものです。もっと言えば、無駄にするかどうかは個人の認識一つで大きく変わります。もしかしたら、そうした経験が大人になってからの人間らしさや合理性にまで繋がっているかもしれません。

 苦手なもの、興味がないものに向き合うこともまた学びになり得るという話でした。やはり意義を見出せなかったとなっても、自分という人間をまた一つ理解できたと思えればより良い経験と思います。

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