中学英語を本気で攻略するための本—真・英文法大全との比較あり

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タイトル中学英語を本気で攻略するための本
出版社かんき出版
出版年2026/1/7
著者関正生
目的中学英文法の復習
対象中学英文法を復習したい全ての人
分量560ページ
評価
AI英文法の疑問を解消する
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴

※本記事は公開以降、内容に変更はありません。

大人のための中学英文法

 本書は2026年に出版されたばかりの関先生による中学英文法の参考書になります。大人の学び直しの場合、中学英文法を包含した高校英文法が実質的に上位互換になるため、中学英文法に絞った学習の必要性がほとんどありませんでした。文法的な説明にも制限がかかっており、弊害があると言っても過言ではありません。そのため高校の総合英語か、同じ関先生による『真・英文法大全』の一冊で事足りると判断していました。

 しかし、果たして分厚い高校生向けの文法書を使いこなせるのか。範囲の広い高校英文法の中から重要度の高い情報を抽出できるのか。英会話に本当に必要なものを整理できるのか。こういった疑問から「中学英文法」に絞る方針があったのですが、どうしても内容として浅く、本質的な理解に繋がらない懸念から推奨するまでには至りませんでした。「I」には「am」、「you」には「are」といった情報は今更すぎるでしょう。

 そこで本書です。本書は大人向けの中学英文法ということで、現役中学生が学ぶような初歩的な内容は省かれ、例えば「冠詞=theやa(an)」は文章の中でどのような意図を持っているのか。役割があるのか。といった実際の運用を意識しながら中学英文法を扱っているため、本格的な英語力を想定すると欠かせない知識が詰まっています。本書はゼロから英文法を学ぶには適していませんが、曲がりなりにも中学英語を通ってきた高校生以上が復習するなら良い選択肢になっていると思います。ちなみに英文法の“ゼロ”とは、「I」には「am」などの初歩的な知識の他に、私たちの日本語文法(中学国文法)です。英文法で形容詞や副詞を学ぶのではなく、第一に日本語を起点にそれらを学んだあとに英文法を学びます。

実用性という意味では、本書は『1億人の英文法』と比較されることもあるかもしれませんが、印象としては大きく異なります。『1億人の英文法』は一から十まで会話、英米的な発想を解説しているのに対して、本書は教科書的な中学英文法に対するアンチテーゼであり、英文法の基礎をより本質的で柔らかくすることを目指している印象です。本書の方が易しく扱いやすい。入試や資格試験などを想定したときに役に立ちやすい仕様になっています。

本書の構成と解説の一例

 本書は中堅私大・地方国公立志望(=大人の学び直しなら高校課程修了の目安)にとって『真・英文法大全』以上に使いやすいと思います。『真・英文法大全』はレベル別に分かれており、辞書利用を想定すると間違いなく有用ですが、最初に通読して重要事項を土台にすることにおいては本書に優位性があります。『真・英文法大全』は約900ページ、本書は約560ページ。本書を土台に『関正生のThe Essentials 英文法 必修英文100』と『関正生のThe Essentials 語法 必修英文100』を重ねれば、大学入試に円滑に移行し、四技能に効率良く繋がる英文法・語法を押さえられるはずです。いわゆる文法語法問題に偏らない文法学習になります。

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構成・内容PART 0「中学英語の真の姿と本書での攻略法」
中学英語の「真の姿」―本当の「基礎」とは?
「丸暗記」ではなく「核心をつかむ」
中学英語は“成長”する
――etc
PART 1「英文の構成要素を理解する」
冠詞
名詞
代名詞
形容詞
副詞
――etc
PART 2「英文の骨格をつくる(1)」
be動詞と一般動詞(現在形)
be動詞と一般動詞(過去形)
進行形
疑問詞をつかった疑問文
――etc
PART 3「英文の骨格をつくる(2)」
文型
→日本語と英語の「語順」
→5文型の「用語」と「全体像」
助動詞
→助動詞に共通する性質と基本事項
→助動詞の役割と意味
接続詞
接続詞の全体像―等位接続詞と従属接続詞
――etc
PART 4「英文の厚みを増す(1)」
不定詞
→不定詞の正体と基本3用法
動名詞
→不定詞と動名詞の「整理」と「使い分け」
現在完了形
→現在完了形の応用―現在完了形が使えない場面
比較
→比較級の文構造
――etc
PART 5「英文の厚みを増す(2)」
分詞
→分詞の基本と全体像
関係代名詞
→関係代名詞の「働き」と「構造」
SVOCの応用
→人 to ~の形をとる動詞
仮定法
→仮定法の公式
→仮定法と直接法
前置詞
→前置の基本事項
→at, by, for, from, in, of, on, to, with, about, before/after, between/among, over/under, その他の前置詞(during/through/across)
→前置詞扱いの熟語(because of~など)
――etc
その他不規則動詞の変化表
復習の仕方
この本を終えた後の英語学習

 ※上記の各PARTごとの項目は一部を抜粋したものです。他にもたくさんあります。

 本書は「応用」でやや発展的な内容に触れていますが、全体的に情報量が抑えられているため、大人の学び直しや高校生による中学復習の一冊としてはちょうど良く感じました。ほとんど関先生による講義です。例えば「There is ~」=「~がある」と習いますが、それは最低限の読解に必要な訳としては問題なくとも、発展的な四技能、例えば英作文で用いる場合などを想定すると物足りません。そこで本書では「There is ~の成り立ち」として旧情報(theやmy)と新情報(a/an)に触れながら解説しています。※「A pen is on the desk.」は「A pen」の新情報が文頭に来ると違和感があるため(旧情報は前、新情報は後)、「There is a pen on the desk.」という特殊な形(There is構文)が生まれました。これは「There is ~」が登場したときのニュアンス理解にも繋がっています。このように中学英文法の知識をしっかりと中身のあるものに変えていくわけです。

「前向きな不定詞」と違って、動名詞は「現実的・後ろ向き」です。本書なりに動名詞のイメージをまとめると「反復・中断・過去志向」となります。このキーワードは動名詞を理解する上でとても大切なので、1つずつチェックしていきます。
中学英語を本気で攻略するための本 P384より引用

 本書のレベル感はこの引用くらいです。内容に関しては目新しいものは正直少ないのですが、本書の秀逸な点は“構成”です。「英文の構成要素→骨格→厚み」という構成はわかりやすく、大人が学生時代に感じていたであろう疑問点も取り上げつつ、さらに発展を意識した覚え方のコツなどもあります。数学で言うと『入門問題精講』と似ているかもしれません。文法学習は大雑把な理解になりやすいため、それなら最初から重要事項に絞って理解を深め、実際の運用まで想定できる方がより良いという気にさせられました。本書は土台。土台としての性能が高い。

土台の中身が充実しているほど発展性も運用力も高くなるため、大人向けとは言え、本書のような解説が高校生にも活きてくると思います。何よりそういう内容を含む文章に少しでも触れてほしい。

真・英文法大全との比較

 まず、『真・英文法大全』は例文の数も多く、問題も取り扱われ、語法情報も充実しているのに対して、本書は解説が主なので読み物としての印象が強くなっています。また、これは中学英文法の範囲だから当然ではありますが、本書が「英文の構成要素」から始まるのに対して、『真・英文法大全』は「時制」から始まっています(PART 2で品詞)。『真・英文法大全』は高校の総合英語に則った構成ですが、本書は土台を意識した解説順序、構成が利点として目立ちます。中学英文法を理想的な土台にするために再構成したものが本書。

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中学英語を本気で攻略するための本真・英文法大全
ページ数560900
難易度(大学偏差値目安)45~5550~70
価格2420円2420円
出版年2026/1/72022/3/30
補足具体的な試験対策というより、中学英文法の段階で本来身につけておくべき内容をまとめている。難関大入試や各種資格試験を想定しても十分なほどの情報量。読みやすい文法書としての地位が確立している。

 定冠詞Theに関する解説を比較してみます。

theは共通認識できることに使います。そこに居合わせたみんなが「せ~の…」で一斉に指をさせるようなことにtheを使う感覚です。この発想だけでtheのたくさんの用法を解明していきましょう。
中学英語を本気で攻略するための本 P35より引用

theは、あなたと私(そこに居合わせた人みんな)で共通に認識できるものに使います。みんなで「せ~の…」と一斉に指をさせるならtheを使う感覚です。この発想だけでtheの用法を解明していきます。たとえば、The sun rises in the east.「太陽は東からのぼる」は、「天体・方角にはtheをつける」と説明されますが、もし「太陽を指さしてみましょう」と言われれば、みんなで指をさせるのでtheを使うと考えればOKです(the moon/the earthも同じ発想)。方角もみんなで東を指さすことができるので、the eastになります。
真・英文法大全 P264より引用

 この解説には差がありますが、本書では「The sun rises in the east.」は例文として大きく取り扱われているため、実質的には差がありません。『真・英文法大全』では「theの語源」や「theについての細かい謎を解く」などがページ数なりの情報となっています。誤解を恐れずに言うと、中学と高校で重複する項目に関しては『真・英文法大全』の無印部分の解説と本書は実質的にほとんど同じと言っても良い気がします

 他方で本書はPART 3「英文の骨格をつくる(2)」にて語法情報に多少触れているものの、全体的に文法の解説に特化しています。これは重複を避けて高校以降に語法を集中させられるため、『関正生のThe Essentials 語法 必修英文100』などで効率良く押さえることが可能になります。『真・英文法大全』は一般的な文法書並みの網羅性を備えるために大量の情報が盛り込まれていますが、それを土台として利用する場合に重くなる、ノイズとして映る可能性は否定できません。文法を概観する程度なら問題ないのですが、土台として盤石なものにするなら情報は絞った方が良いでしょう。もちろん、900ページあろうとも隅々まで読み漁ってしまうような人ならその限りではありません。※『真・英文法大全』の解説は無印・応用・発展に分けられています。

 ただ、本書には高校英語で扱うテーマが含まれていませんから、『真・英文法大全』や総合英語は購入することになります。数学で言うところの青チャートのように、総合英語を辞書として手元に置いておく利点は大きいと思います。発展/重要事項・頻出・典型問題を確認するたびに周辺知識も拾うことで知識が拡張され、エピソード記憶としても残りやすくなるからです。新しい事柄の理解において直線的な理解を安易に目指さず、ある程度の幅と発展を意識できるようにしておくことはとても大切。なお、関先生の解説の重複を嫌うなら、情報量の多い『Vision Quest 総合英語Ultimate』がオススメです。

関先生の参考書は現役生を中心にボリューム層に刺さるわかりやすい解説が長所ですが、学習が進み、より思考を深化させたいと思う時に少々物足りなさを覚えるかもしれません。そんなときは富田先生の『思考する英文法』がオススメです(※誤植だけ注意)。富田先生は『英文読解のグラマティカ』にしても、大人の視座から手を緩めることのない解説が長所と思っています。現代文の力も伸びそうなほどの。

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