大学受験に必要な参考書・問題集を一覧にしてまとめました。現在、優れたアプリや参考書が数多く出版されているため、最難関大学であっても塾に通わずとも合格できるだけの環境を整えられます。大人の学び直しや再受験も想定した内容となっています。
小学復習のための参考書・問題集一覧
小学校の算数では、基本的な計算(四則演算、面積の公式など)と用語(分配法則、比の値、平均値など)を忘れてしまっている人もいると思います。大人の学び直しでは、小学校の学習指導要領に統計分野が入ったことが新しく、統計とは全く無縁だったという人も少なくないはずです。
だいたい覚えているという人も問題集だけはやっておきましょう。分からない箇所だけなら1、2時間で終わります。学生時代に数学が大の苦手だった人は算数の四則演算、特に分数と少数の掛け算と割り算で躓いた人も多いのではと思います。算数は単純な計算を学ぶだけではなく、概念に触れる重要な課程ですから、苦手な人ほど改めて参考書一冊読み込みましょう。
中学復習のための参考書・問題集一覧
中学数学の復習の程度は、教科書レベル+αがしっかり理解できるまでを想定しています。典型問題の意図を読み取り、公式や解法を知識から引き出して計算処理できること。各用語の意味を理解していることが目安です。難関高校(偏差値65以上)の入試に合格できるまで復習する必要はなく、(参考書選びの)偏差値的な目安は50~60、中堅私立や公立高校の合格水準(偏差値60)あたりまで学習すると十分です。
逆に言うと、偏差値60未満の高校に通っている場合、数学が大の得意(難関高校と肩を並べる)という人以外はだいたい中学課程を正しく理解できていません。必ず中学復習から始め、以下の参考書を終えたあとは白チャートで高校基礎レベルをマスターしましょう。
教科書
中学数学の教科書は学校によって難易度に差がなく、基本的にどの出版社を使用しても変わりません。ただ、章末問題の充実度などは変わるため、問題数の多い教科書を選んでおくと良いと思います。
現役高校生や大人の学び直しの場合、中学数学は教科書レベルを完璧に仕上げれば十分です。特にオススメは東京書籍から出版されている『新しい数学』です。こちらは問題数が多めなので、教科書レベルの確認には使いやすくなっています。
中学数学は難関高校入試で出題されるような難しい問題を解くというより、小学算数のような計算能力を身につけること、教科書の章末問題(標準レベル)を通じて運用能力を高めること、そして、各用語の意味と概念を掴むことにあります。高校数学への流れを円滑にするための肝を押さえておけば十分です。これは大学数学から見た高校数学の習熟度にも同じことが言えます。
中学数学が面白いほどわかるシリーズ
『中1数学が面白いほどわかる本』教科書基礎~標準
『中2数学が面白いほどわかる本』教科書基礎~標準
『中3数学が面白いほどわかる本』教科書基礎~標準
『高校入試 中学数学が面白いほどわかる本』教科書標準~入試基礎
教科書では味気なくてわかりにくい人にオススメの参考書です。現役中学生はこの4冊を仕上げたあとに、志望校の過去問に取り組むだけで合格水準に達します。だいたい偏差値60までの中堅高校が適正。偏差値65以上の難関高校の場合、以下の高校への数学シリーズをオススメします。
高校への数学シリーズ
大学への数学でおなじみの東京出版から販売されている『高校への数学』シリーズもオススメです。現役生には本シリーズのレイアウトが無味乾燥としていて受け付けないかもしれませんが、内容の充実度と精選された良問、解説は高く評価されています。
『レベルアップ演習』教科書章末レベルから入試基礎―高校偏差値目安60まで
『Highスタンダード演習』入試基礎から入試標準までの問題―高校偏差値目安65まで
※大学受験を想定した中学復習の場合、『レベルアップ演習』だけでも十分です。
高校数学(教科書~入試基礎固め)
まず、数学は文系と理系で要求されるレベルが異なります。その差はおおよそ偏差値5程度と仮定しています。例えば、文系数学なら白チャートで十分な場合、理系数学は黄チャートが適正です。
そして、志望校のレベルに合わせた網羅系参考書によって基礎固めしつつ、アウトプットできる本番形式の問題集を繰り返すことが数学の基本戦略になります。教科書基礎~標準を固めたあと、入試基礎レベルを固めることで全統模試の想定で偏差値55~60程度まで伸びます。
学校指定の教科書
教科書レベルと言っても、出版社によって、シリーズによってレベルは異なります。チャート式で有名な数研出版の場合、数学シリーズが頭一つ抜けて、次いでNEXTシリーズと高等学校シリーズが設定されています。それぞれしっかり仕上げられたら共通テスト準備までの力がつきます。人によってはそれ以上かもしれません。
教科書と市販の参考書の比較としては、教科書のみではやや勉強しづらく、基本的には授業と補完しながら使用するものになっています。市販の参考書の方が自学自習向きのものが揃っていると言って良いでしょう。ただ、わかりやすい解説ばかりを求める姿勢は本末転倒の結果を招く恐れもあり、大人の学び直しなら教科書を推奨するかもしれません。一般の人でも教科書取扱店で発注すれば手に入れられます。特に数研出版のNEXTシリーズは本質的な理解を促すことに重点が置かれているのでオススメです。
講義系参考書・問題集
講義系参考書は各単元ごとの解説が丁寧でわかりやすいという特徴があります。ただし、問題数が少ないため、網羅系問題集を併用する使い方がオススメです。基礎以降も適宜復習しましょう。
『初めから始める数学(偏差値40~45)』『元気が出る数学(偏差値45~50)』『合格!数学(偏差値55~60)』マセマ出版シリーズ
今はyoutubeなどで単元ごとの解説が無料で提供されているため必須ではありません。ちなみにyoutube以前は、数学は独学に向かない筆頭の科目でした。未だに講義系参考書は充実しておらず、昔からマセマ出版シリーズが推奨されています。数学が大の苦手という人にはマセマがオススメです。ちなみに最近のトレンドは後述する『入門問題精講』に移りつつあります。
網羅系参考書・問題集
網羅系参考書・問題集は、主に解法暗記を目的にしています。解法暗記とは、問題を解くために必要な知識(考え方)を覚えることです。小学算数で言えば、旅人算のようにちょっとしたコツを知っているだけで簡単に解ける問題がありますよね。高校数学においても、そうした解法を第一にたくさん覚えなければならないため、網羅系参考書・問題集によって押さえておく方針が有力となっています。
『チャート式 基礎と演習(白チャート)』【基礎の基礎からしっかりと固める】※多くの受験生にとっては白で十分です。高校の授業が進むにつれて、例えば数学IAを部分的に忘れてしまうことなどはざらにあるため、受験勉強に本格的に取り組む際の基礎固めとして『白』は理想的な構成になっています。到達レベルは河合塾模試で偏差値55程度を想定していますが、内容理解が深ければ60も視野に入ります。
『チャート式 基礎からの数学(黄、青チャート)』【基礎から発展まで幅広く】※理系にとっての白は黄のようなところがあり、難関大を目指すなら青を使いこなしてほしいところではあります。ただ、どちらであっても、県内上位(偏差値65以上)の進学校に通い、かつ数学が得意であることが取り組める条件です。そうでないなら使いこなせず、成績の伸びが鈍化する原因になります。ちなみに理系数学のIIICだけ「青→黄」「黄→白」と下げるのも有効です。
網羅系の最大の利点は安定度を高められることですが、その分量ゆえに仕上がるまでの時間と心理的なハードルの高い参考書になっています。また、そこまでの網羅性を求めず、過去問や別の問題集を使用した方が効率が良い場合もあります。取り組む時期としては中学3年生~高校1年生から。大人の学び直しや再受験の場合、難関大学(旧帝・医学部)を想定しなければ、必要ないと言っていいでしょう。辞書利用なら誰でも可。
チャート式の有力な方針
2024年7月現在において、様々な受験参考書に目を通した結果、最もわかりやすい数学の勉強法はチャート式を使用する方針かもしれません。しかし、それはいわゆる解法暗記だけを目的にした周回ではなく、チャート式と過去問(あるいは準ずる問題集)の往復による学習です。チャート式は辞書利用をメインに、必要に応じて解法暗記に取り組むという方針。これは周回と参考書の数を減らせるだけでなく、インプットとアウトプットのバランスが優れているので数学の実力が順調に伸びます。
ただ、チャート式は理解が乏しくなる懸念点があるため、前提としてチャート式の解説を十分と感じられる程度の基礎力は必要になります。この基礎力(用語、解法、公式、定理の理解など)を盤石にするのが白チャートですが、それでも足りないなら入門問題精講やyoutubeによる講義動画、スタディサプリ、後述する数学の本質を促す参考書に取り組みます。
また、白チャートの辞書利用は偏差値60以下の文系学部、偏差値55以下の理系学部においては有用ですが、それ以上になると心許ないため、白チャートを完璧に仕上げられた人やすでに基礎力を盤石に備えている人は志望校のレベルに応じた黄・青チャートを辞書として追加するのがオススメです。
チャート式の指標
【白チャート】地方国公立、中堅私大、MARCH(文系)
【黄チャート】MARCH(理系)以上早慶未満、旧帝大除く上位国公立(筑波、横国、神戸)まで
【青チャート】早慶、旧帝大、東工大、一橋、医学部
地方医学部なら問題のレベルからして黄チャートでも対応できるところはありますが、競争相手のレベルが高いため、青チャートで入試標準+αまで仕上げるのが望ましいと思います。旧帝大医学部の場合はそれに加えて難問対策まで考えなければなりません(レベルが上がるほど難問完答が合否を分けるため)。
大雑把に分けると上記のイメージですが、例えば青チャートを一から仕上げれば誰でも早慶・旧帝大レベルに達するわけではありません。必ずスタート時の自分自身のレベルと志望校のレベルの両方を考慮した上で決定します。自分の理解力に合ったものが最も効率の良い教材になります。
理想を言えば、学校の授業や定期テストで教科書レベルはしっかり固めておいてほしいとは思います。※独学なら入門問題精構やマセマだけでも終わらせる。それができれば(辞書利用を想定しても)黄か青チャート一冊で済むからです。まだ大学を真剣に考えられず、志望校も決まっていない人でも、教科書レベルを押さえられていれば大きなアドバンテージになります。
Super Quick 数学
『Super Quick 数学』—チャート式と同じ数研出版から基礎問題精講に近い参考書が出版されました。チャート式よりも網羅度は下がりますが、短期で重要問題を仕上げられることから一定の需要がありそうです。もしかしたら偏差値60前後の大学を志望校にする人にとってはかなり効率の良い一冊になる可能性もあり、一方で教科書基礎~入試標準まで手広く収録しているためにターゲットが広くて使いにくい可能性があります。入試基礎に絞るなら基礎問題精講の方が使いやすいです。
講義系と網羅系の中間に位置する参考書・問題集
チャート式ほどではないにせよ、教科書~入試基礎レベルまで網羅的に扱っている参考書兼問題集が問題精講シリーズです。網羅する範囲と量は盤石な対策に繋がりますが、受験は常に時間との勝負ですから、しっかり手の届く範囲を効率良く押さえる意味でバランスの良い参考書・問題集になっています。
『数学IA・IIB・IIIC 入門問題精講』教科書基礎~標準
『数学IA・IIB・IIIC 基礎問題精講』教科書標準~入試基礎
チャート式が1つの要点を3つの問題で固めるのに対して、問題精講は厳選した1つを掲載しているイメージです。チャート式導入前の入門問題精講はオススメの選択肢です。基礎問題精講は地方国公立やMARCHを志望校とする場合にはオススメできますが、それ以上の難関大を志望するならチャート式を推奨します。なお、基礎より難しい『標準問題精講』は著者が揃っておらず、中身の問題の難易度にもバラつきがあるため、最難関大を想定しないなら推奨しません。※最難関大であっても別の選択肢を優先したい。
入試基礎~標準
入試基礎まで固まったあとは、共通テスト、国公立、私立の3つの対策に分かれます。ここまで仕上げれば、全統模試の偏差値60以上を想定しています。このレベル帯までは典型、かつ標準的な問題が多いため、解法暗記と演習にしっかりと取り組めば、数学的センスにかかわらず伸びます。
共通テスト対策
『短期攻略 大学入学共通テスト 数学』—このシリーズは基礎編と実践編に分かれているので分量は多めですが、基礎的な考え方から実戦まで共通テストの対策として必要十分です。
共通テスト対策は共通テストに絞って取り組むというより、私立や国公立二次対策を進めながら共通テストに合わせるという表現が適切です。センター試験に比べると思考力を問う問題が増えたので、以前よりも私立や国公立二次対策が活きるようになりました。
国公立対策
入試基礎~標準レベルの対策で足りるであろう国公立とは、地方国公立から旧帝除く上位国公立(筑波・神戸・横国あたり)までを指します。
『文系の数学 重要事項完全習得編』『数学III 重要事項完全習得編』
『国公立標準問題集 数学campass 数学IA・IIB・IIIC』※記述対策込み
『入試の核心(標準編)』※入試標準の典型問題を150題にまとめた良書です。
『厳選!大学入試数学問題集 理系・文系』※入試の核心より問題数が多い(理系272題、文系160題)
『過去問(赤本)』『神戸大の数学 15ヵ年』※神戸大の数学は入試標準の良問が多い
私立対策
早慶未満の上智、理科大、MARCHまでです。数学IIICの演習が足りない場合の候補は今後掲載予定。
『文系の数学 重要事項完全習得編』『数学III 重要事項完全習得編』
『文系の数学 実戦力向上編』※文系数学ならここから過去問演習へ
最難関国公立・私立向け網羅系問題集
最難関国公立・私立(早慶)の場合、入試標準レベルであってもさらなる網羅系問題集に取り組んで安定度を高める方針も悪くはありません。もし、下記の問題集に取り組む場合、第一にチャート式の例題のみを解き、その後すぐに移るのがオススメです。チャートと往復しましょう。
『1対1対応の演習』※難関大受験生には有名なアウトプット寄りの問題集。入試基礎~標準までを網羅的に固められます。代替問題集が少なく、難問に応用可能な解法を身につけられる点も評価を高めています。
『新数学スタンダード演習』※1対1対応の演習よりも難しく、入試標準レベルを中心に発展入り口まで網羅しています。問題数は多くなるものの、『1対1対応の演習』のあとに取り組んだらほぼ全ての大学で合格点を獲れるようになるでしょう。
『新数学演習』※東京一工で出題されるような難問対策として取り組むにしても相当難しい問題が集められています。後述するハイレベル理系数学と同じくらいか、それ以上か。
『実戦 数学重要問題集』※解説が淡白なので、独学にはやや不向きです。
入試標準~発展(準備編)
入試標準から発展レベルにいきなり取り組むのではなく、いわゆる横割り本と呼ばれる単元を横断する解法や発想力を身につけられる参考書を間に挟むことを推奨しています。入試標準レベルまでは解法暗記と演習で誰でも伸びますが、標準以降は問題に対する正しい考え方を持っていないと太刀打ちできません。おそらく数学がセンスとして語られる最大の要因がここです。
数学の本質を理解する
『数学の発想力が面白いほど身につく本』※分野横断的な解法の雰囲気を掴むのに向いていますが、この手の参考書の中では内容が薄い部分もあります。難関大の理系志望には他を推奨したい。
『数学の真髄』※軌跡・領域問題がテーマに挙げられているため、東大受験生には特にオススメ
『問題文の読み取り方』※本格的に私立一般・国公立二次対策を行う前には一読しておきたい。
『記述式答案の書き方』※国公立二次対策にはもちろん、普段から読んでおきたい。
『公式で深める数学IA・IIB』※チャート式や基礎問題精講の周回途中に読んでおきたい。数学の理解度が一段階上がります。
『論理学で学ぶ数学』※数理論理学を駆使して受験数学をメタ的に攻略できるようになります。その発想方法や視点は旧帝理系志望なら一読の価値ありですが、基本的には東大・京大・東工大の難問対策に応えるものになっています。
『真解法への道』※入試数学の掌握が東大理3や京医向けなのに対して、本書は万人向けの難問対策参考書になります。エッセイのような解説が肌に合うなら読んで損はありません。
『入試数学の掌握』※解法暗記では手の届かない難問対策の考え方をまとめたもの。読者に寄り添うように、問題の考え方を学べます。本書を読むと、入試数学における難問こそが数学らしいと言えることも、数学の楽しさの本質が詰まっているような感覚を抱きます。
この手の理解を促す本は軽視されがちですが、解法暗記に取り組んでもなかなか成績が伸びない、あるいは文字通り丸暗記になってしまっている受験生には救いの一冊になる可能性を秘めています。
特に「チャート式+過去問(アウトプット型問題集)」のシンプルな方針を選択した人は『公式で深める数学』を一読する価値はあります。もともと理解度が高ければ必要ありませんが、解法暗記で凝り固まった思考を解きほぐしてくれます。チャート式で獲得した知識の正しい運用方法に気づき、受験数学が楽しくなること請け合いです。
ただ、最難関大レベルになると、この手の参考書に頼らなければならない時点で数学の本質的な理解、センスとして語られる無意識的な部分に差が生まれているため、数学を得点源にするよりも別の戦略が適している可能性も高まります。難問突破の鍵となり得るならオススメですが、難問前で詰まっているなら入試標準レベルまでの解法暗記に注力するべきかもしれません。
入試標準~発展
このレベル帯は過去問演習を前提に、必要に応じて取り入れる方針にしています。世界一わかりやすい九大の数学は入試発展の入り口、標準固めに使いやすい一冊です。また、どのレベル帯にも言えることですが、今取り組んでいる問題集だけで完結させず、理解が乏しいと感じた箇所は過去に使用した基礎~標準の参考書に立ち返って理解を深めてください。独立した知識ではなく、基礎から陸続きにある知識として認識した方が高い柔軟性に繋がります。
世界一わかりやすいシリーズ
『世界一わかりやすい九大の数学』『世界一わかりやすい阪大の理系数学』『世界一わかりやすい京大の理系(文系)数学』このシリーズは過去問を通じて、思考力を問う難問に対する考え方も同時に学べる問題集です。入試標準以上を求められる大学を受験するなら取り組んでおきたい一冊になっています。
〇〇大の理系数学(難関校過去問シリーズ)
『〇〇大の理系(文系)数学 難関校過去問シリーズ』は、過去問を通じて入試標準(神戸大、九大、北大、東北大)から、やや難(名大、阪大)、難(東大、京大、東工大、文系数学は一橋)までの演習を確保できる利点があります。国公立は全体的に癖がなく標準レベルまでは特に他大学でも有用なのです。※私立の場合、癖の強い大学・学部は過去問を5年、10年と遡る方が良い。
問題精構シリーズ
基礎固めまでは入門・基礎問題精講が有用でしたが、入試標準レベルでは1対1対応や入試の核心などの方が難易度のバラつきが少なく使いやすいものでした。しかし、入試標準を超えるレベルになると『標準問題精講』や『上級問題精講』の丁寧な解説と部分利用が機能しやすくなります。
『標準問題精構』『分野別標準問題精講』入試やや難以上(名大、阪大の理系志望)なら取り組んでおきたい一冊。標準と冠していますが、実際は標準を超えるレベルの問題も豊富です。そのため、標準問題精構だけでも最難関大含めて合格点は狙えます。分野別標準問題精講は癖もありますが、志望校の傾向に合わせた一冊として使えると思います。※苦手対策ではなく、志望校対策として。
『上級問題精講』※非常に難易度が高いですが、解説は丁寧なので東大・京大・東工大受験生には特にオススメの一冊です。この問題は解けなければならないというより、難問を通じて思考力を少しでも高められたらという程度の認識で取り組みましょう。最難関大であっても難問完答が合否を分けることは稀です。入試標準レベルの完答+部分点で十分。
良問プラチカシリーズ
『理系数学の良問プラチカ(数学IA・IIB、数学III)』※数学IA・IIBは入試基礎~標準なので、このレベル帯では不要と思います。一方、数学IIIは標準以上を扱っていて難易度が高いため、このレベル帯にはオススメです。
『文系数学の良問プラチカ』※理系数学に比べて、文系数学の良問プラチカは最難関である一橋や早稲田(商)、京大、東大などのかなり難易度の高い問題を扱っているため、文系数学の仕上げとして使えます。
やさしい理系数学シリーズ
ハイレベル数学の完全攻略
『ハイレベル数学の完全攻略』※やさしい理系数学と同じくらいの難易度ですが、解説は圧倒的に本書の方が丁寧です。そのため、入試標準を超える難問対策の最初の一冊として最も機能するかもしれません。旧版から内容の変更はほとんどないため、中古でも手に入りやすいのも受験生には嬉しい。
理系数学 入試の核心(難関大編)
『理系数学 入試の核心(難関大編)』※難易度としては上級問題精講に並びます。難問の中でも良質な問題を60題にまとめたコンパクトな問題集です。レイアウトも見やすくて解説も丁寧で言うことなし。問題数以上に力がつきます。難問対策は解法暗記的に網羅するではなく、一つ一つの問題と真摯に向き合い、新しいアプローチや試行錯誤の仕方を学びます。
真解法への道
『真解法への道 数学IAIIBC(ベクトル)』『真解法への道 数学IIIC』※このレベル帯にして最も解説が丁寧で“普通”の受験生が難関大に挑むために必要な考え方が載っています。個人的に非常にオススメですが、上級問題精講のような解説ではなく、エッセイ風味のある講義調です。
部分点の考え方
『東大数学で1点でも多く取る方法』安田先生の優しい語り口で部分点の考え方を学べます。
参考書選びに悩んだら
今は優れた参考書を見つけることは容易です。自分に合っているかどうかも1週間くらい取り組んだらだいたいわかるでしょう。その中で参考書選びに悩んだら、残された時間の中で取り組める最大の問題数と周回数(定着)から選んでしまって問題ないと考えます。言い換えると、志望校に合格するためにはチャート式が有力だからチャート式に取り組むのではなく、残された時間でしっかりと取り組める参考書が最も合格率を高められるという考え方です。
つまり、基礎問題精講よりもチャート式の方が優れているという議論にはあまり意味がありません。もちろん、残された時間が無限にあるなら問題数の多いチャート式の方が優れていると言いたくなりますが、実際にはどれだけ時間をかけられるか、理解する速度や定着に必要な周回数というのは個人差があまりに大きいため、詰まるところ、取り組める問題数と周回数が多く見込めるものを選ぶことになるでしょう。心配なら薄い参考書から取り組むのが無難です。
今は優れた参考書が当たり前に存在し、しかも熱心に差別化も図られているため、例えばかなり近い難易度と解説を備えた参考書で問題数だけ微妙に異なるというありがたい選択肢が転がっています。そうなると、単純に残りの期間で取り組める問題数を自身の経験から導いて購入するだけです。ただ、最難関大の難問対策はまだ参考書による解説の差が大きい部分があるので、そこだけは慎重に選んだ方が良いと思います。入試標準レベルまでの典型問題は正直似たようなものばかりになってきています。