改訂版 キクジュク Basic & Super―網羅性重視の高性能な熟語帳

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タイトル改訂版 キクジュクBasic
改訂版 キクジュクSuper
出版社アルク
出版年2023/12
著者一杉 武史
目的大学入試用の英熟語
対象現役生から大人の学び直しまで
分量Basic(784語・264ページ) Super(1123語・288ページ)
評価
AIコアイメージの理解を深める
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

優れたレベル区分と網羅性

 本書は2023年に出版されたキクタンシリーズの熟語帳です。「Basic」と「Super」に分かれおり、2冊で最難関大を想定しても心強い網羅性になっています。キクタンシリーズはターゲットやシステム英単語、速読英単語、LEAPなどと比べて知名度はありませんが、内容に関しては全く問題ないほど充実しています。特に大学入試用の熟語に関しては2025年現在でも有力なものが少なく、本書『キクジュク』は最有力候補に挙げられてもおかしくありません。

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BasicSuper
見出し語数7841123
英検3級~2級2級~1級
全統模試偏差値(目安)50~6060~70
音声単語、フレーズ(英のみ)、センテンス(英のみ)の3種類単語、フレーズ(英のみ)、センテンス(英のみ)の3種類
その他速読英熟語』の収録熟語数約880語と比較しても遜色ない高校基礎熟語を省いた1123語の網羅性は長所

 全ての見出し語にフレーズとセンテンス(例文)が付属しています。その上、フレーズとセンテンスの音声は英語のみという理想的な構成です。さらに後述するTipsでは基本動詞と前置詞/副詞の原意と用法、語順の働きなどにも触れ、チャプターの終わりには同意熟語・類義熟語の簡単な復習テストも付属しています。補足情報の派生語・関連語も一通り揃っているため、既存の有名な熟語帳と比べても明らかに高性能です。

 そして、本書のレベル区分はボリューム層となる大学偏差値45~60には「Basic」が難易度からして非常に使いやすく、それを超える難関大志望には「Super」の収録語数が魅力的に映ると思います。ただ、当サイトでは高校英語の単語/熟語に『DUO3.0』を推奨するに至っているため、大学入試に必要な1000語程度の熟語であればそちらで間に合ってしまいます。なので、本書は『DUO3.0』の例文形式が合わない場合、あるいは熟語に限って一般的な単語帳の形式(フレーズやセンテンス)で覚えたい人にはオススメです。本書の方が出版年が新しいことからも最新の入試傾向が反映されている安心感もあり、『DUO3.0』は単語/熟語を高速暗記するためだけに用いて、その後に腰を据えてじっくりと熟語に取り組む際に本書を用いると良いかもしれません。本書は使わないのはもったいないくらい良い熟語帳です。

現代受験英語は難単語・難構文が減りつつあり、語数重視の長文を短い時間制限の中で読む方が主流ではあります。難化を加味しない限り、かつてのような難しい熟語を網羅する方針は選択されなくなってきています。本書『Super』は難しい熟語ばかりというわけでは全くありませんが、単純な量という意味では難関大志望であってもやや過剰になる可能性はあります。

イントロダクションのTipsが有益

 本書には各チャプター冒頭に基本動詞や前置詞、副詞のコアイメージや語順の働きを解説しています。こういった情報はとにかく熟語を覚えたい現役生は見落としてしまいやすいと思いますが、日本人からは単純に見える基本単語や前置詞、副詞にも様々なニュアンスがあります。

動詞 + on A

働き:動詞の後に、主として「基礎、依存、対象」の前置詞onが続き、「Aに(基づいて)~する、A(のため)に~する」を表す

改訂版キクジュクSuper P118

 熟語を暗記するとき、定期テスト感覚で熟語と意味の1対1で覚えるのではなく、引用にあるような情報を頼りに熟語と意味の必然性を理解しながら覚えた方が応用が利きます。フレーズとセンテンスにも目を通し、音声を聴きながら音読も繰り返します。熟語の自然な表現を知るためにもフレーズとセンテンスの情報は重要です。

 また、本書は高校英語を対象にしていますが、中学英語からの流れで言うと事前に『DUO elements』で中学英熟語レベルを完璧にしておくと熟語暗記は非常に捗ると思います。その引用にあるTipsは有益ですが、それ以上に『DUO elements』は抽象的で捉えにくい前置詞/副詞のコアイメージの形成に大いに役立ちます。

コアイメージの形成とは、簡単に言えば「言葉の概念の理解」です。「go=行く」ではなく、「ある場所から去って進行していく」が適切。私たちの日本語の会話にしても凝り固まった意味をやりとりしているのではなく、比喩的な表現然り、その言葉の定義(ニュアンス)を逸脱しない範囲の柔軟性を備えていますよね。イメージというのは言語よりも柔軟なので、基本単語や前置詞、副詞ほどイメージ先行で捉えたいのです。

 今はどの参考書を選んでも大きな失敗がないくらいに優れたものが揃っていますが、『DUO elements』だけは唯一英語学習者には“必須”と強く推奨したいほどかもしれません。どこかでコアイメージの重要性に気づかなければならないのですが、それに気づかせてくれる参考書がまだまだ少ないのが現状です。

本書『Basic』と『DUO elements』は重複する部分はあるものの、コンセプトは違い、基本熟語ほど重要なので気にすることはありません。

速読英熟語・ターゲット1000・最前線英熟語1515との比較

 2025年現在、主要な熟語帳としては『速読英熟語』『ターゲット1000』『最前線英熟語1515』あたりになると思います。『解体英熟語』は出版年も古くなったために候補から除外。

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キクジュク速読英熟語ターゲット1000英熟語最前線1515
収録語数784+11231080(熟語880語)10001515
対象偏差値50~60/60~7050~6050~6050~65
レイアウト
音声単語(英+日)
フレーズ(英)
センテンス(英)
英文の音声
単語の音声
見出し語(英+日)
例文(英)
見出し語(英+日)
その他レベル区分が使いやすい。音声が充実。オリジナル英文の評価が分かれている。構文200語も収録。 『英熟語ターゲットR』という速読英熟語と同じ形式もある。出版年が新しく、最新の入試傾向を反映している。口語表現・比喩・ことわざ・イディオムも収録されている。

 難関大まで意識するなら『英熟語最前線1515』がトレンドになっている印象です。最新の難関大入試から出題実績のあるものが選出されている上に、口語表現・比喩・ことわざ・イディオムも収録されているので使い勝手が良いと思います。『ターゲット1000』は無難な選択肢として王道です。慣れ親しんだレイアウトでシンプルに覚えられます。

 2024年に24年ぶりに改訂した『速読英熟語』はオリジナル英文の評価が芳しくなく、積極的に薦めにくい事情があります。熟語は英文の中で覚えた方がより良いものの、収録する熟語の数が多くなればそれだけ英文に無理やり詰め込まなくてはならなくなりますから。全体的に丁寧に作り込まれているものの、英文だけ惜しいつくりになっています。文章で覚えることにこだわるなら『英熟語ターゲットR』を推奨します。

 他方で現役生をはじめ、大人の学び直しであっても、単語と熟語で2冊、3冊と増やしてしっかりと取り組める人はそう多くありません。結局は『DUO3.0』が最も使いやすいと結論づける気もします。『DUO3.0』は関連語・派生語まで含めると収録語数は約8000語です。これを隅々まで覚える方針がわかりやすいと言えばわかりやすいですし、それを推奨しても良いくらい非常に優れた単語帳です。

『DUO3.0』からさらに熟語を覚えたいという人には『キクジュクSuper』がオススメです。

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