高校 とってもやさしい英文法―英語初心者向けの必要最小限の英文法

スクロールできます
タイトル高校 とってもやさしい英文法
出版社旺文社
出版年2022/2/16
著者大岩 秀樹
目的英文法入門
対象英語初心者
分量176ページ
評価
AI文法用語の疑問を徹底的に解消する
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

英語初心者にオススメの一冊

 本書は『大岩のいちばんはじめの英文法』で非常に有名な大岩先生の参考書になります。『大岩のいちばんはじめの英文法』は2014年に改訂されて以降、新しい学習指導要領に対応したものが出版されていませんでした。それでも英文法の本質は変わらないため、講義系のわかりやすい参考書として今でも根強く支持されています。そういった背景がある中で旺文社から2022年に本書が出版されました。こちらは講義系参考書とは異なり、高校入門レベルの文法を簡潔にまとめた一冊に仕上がっています。

 700ページを超える文法書の通読を個人的には推奨しているものの、決して取り組みやすい分量とは言えません。また、それを正しく行えるだけの国語力や勉強への慣れなどを加味すると、大人の学び直し、および英語が苦手な現役生には本書がベストな一冊と言っても過言ではないと考えています。いずれは十分な量を備える文法書に目を通すとしても、その前の段階に本書を軽く読んでおくだけで学習効果は高まるでしょう。

 また、簡単な日常会話を目的に英語学習する場合の必要最小限を考えると、本書は解説がやや硬い部分があるとは言え、このレベル帯の参考書の中では有力な選択肢になっています。176ページが絶妙な分量です。本書よりもページ数が少なく、簡単さを謳う英語初心者向け参考書もあるのですが、ハッキリ言って中身がないものもあり、一度本書のように学校の勉強に近い形で向き合ってこそと考えた方が建設的と思います。本書シリーズの『高校 とってもやさしい英文読解』と合わせて英検3級~準2級レベルまでは網羅できます。

大岩先生の参考書では2024年に出版された『中学英語をもう一度はじめからていねいに』も悪くありません。こちらは約300ページになる文法書で単語と熟語、会話表現、読解問題も付属しているため、総合的な英語基礎力を身につけられる参考書になっています(英検2級まで)。必要最小限なら本書を推します。

英語初心者が文法学習で意識するところ

 本書の準備編は文法用語の解説から始まり、チェック問題で確認できるようになっている点が地味に優秀です。何気ない工夫に感じるかもしれませんが、英語初心者が文法を学ぶ際には第一に「文法用語」を正しく押さえる必要があります。これは幼少期から海外に住んでいる場合を除き、日本語環境下では英語を理屈で理解しなければならず、文法用語無しでは効率が下がるからです。ただ、文法用語とその理解には少々ややこしいところがあり、加えて常に文法を意識する必要がないのも事実としてあります。例えば、海外旅行の際にレストランや空港でやりとりする程度なら(ほぼ文法知識無しで)必要なフレーズを100個、200個と覚えてしまう方が早いでしょう。

 文法を前提にする英語学習とは、もっと広範な英語力を求める場合に必要になるものと言った方が誤解が少ないかもしれません。また、文法による理解が加わると、関連づけによって記憶の定着率と応用力が上がります。英会話を行うには膨大な表現を覚える必要がありますが、文法という本質的な部分さえ押さえておけば、一から十を知るように知識を圧縮したり、自ら拡張したりできます。海外留学などの要素が加わるとまた変わりますが、この意味では「文法無しで英語を話す」というのは日本語環境下では“難しい”という結論です。

 そして、本書の最大の利点は必要最小限でありながら、そういったややこしい文法から逃げていないところにあります。欠点としては『高校 とってもやさしい英文読解』も含めて良くも悪くも日本的、予備校的な英語参考書なので、ネイティブに近い理解は今ならAIに求めた方がより良いと思います。本書の例文は実践的に正しいとは限りません。基礎固めをしつつ、AIに質問し続けて疑問点を徹底的に排除すると定着も促されます。

英語学習はAIありきと言っても良い時代に突入しています。自ら疑問点を解消する行為はエピソード記憶として残りやすい。昔なら本書のような必要最小限は本当に必要最小限の意味しか持たなかったわけですが、今は誰でも手軽に知識を拡張できるので必要最小限である方が都合が良いとまで言える時代です。参考書に求める要素は本質的な知識を得るためのきっかけになるかどうか。

本書の接続先は「真・英文法大全」

 本書だけでも英検3級~準2級までの文法知識を一通り押さえられるため、日常会話を目的にするなら本書から文法問題集に移ってしまっても問題ありません。しかし、英検2級やTOEIC、TOEFLなどを想定するなら詳細な解説を備える『真・英文法大全』などに接続するのがオススメです。文法過多を心配する人もいるかもしれませんが、指導者も使える『英文法詳解』のようなものでもなければ、高校英語程度の文法知識はあればあるだけ役に立ちます。

 接続先として学校で配布されるような文法書でも良いのですが、おそらく最も読みやすいであろう文法書が関先生の『真・英文法大全』です。文法書は細かな知識を網羅するというより、英語脳を養いながら文法ネットワークを張り巡らせるものになります。なので、途中で挫折する懸念がある文法書よりも、とにかく読みやすいものが第一という結論です。その後は文法問題集に移り、そこで初めて細かな知識を覚えていくイメージ。

 では、最初から『真・英文法大全』に取り組むのはどうか。もちろん、それができるなら本書は必要ありません。ただ、『真・英文法大全』は読みやすいけれど情報量は非常に多くなっています。英語初心者にはどこがどれほど重要なのかわからなくなる懸念があり、その点で本書のような易しい参考書なら論点が少ないことで重要事項と優先順位への意識を高められると思います。もっともそれなりのレベルを目指すなら高校英語の体系化された知識は頭に入れなければならず、詰まるところ、全部が重要で優先順位もあってないようなものです。

そして、文法問題集のオススメは『文法語法良問500+四技能』です。空所補充整序英作文誤文訂正の3冊の合計1500問が盤石の知識固めになります。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!