総合英語EVERGREEN(旧FOREST)―オーソドックスな文法書

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タイトル総合英語Evergreen
出版社いいずな書店
出版年2022/11/1 1870円
著者川崎芳人・久保田廣美・高田有現・高橋克美・土屋満明・Guy Fisher・山田光
目的高校英文法
対象高校英語を学ぶ全ての人
分量672ページ
評価
AI疑問点を即座に解消する
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

定番の高校生向け文法書

 本書は2022年にいいずな書店から出版された高校英文法の参考書です。旧Forestは学校配布も多く、馴染み深いと感じる大人は多いでしょう。大人の事情で桐原書店からいいずな書店に出版元とタイトルが変更された経緯があります。昔から支持されていた文法書だけに内容に関してはオーソドックスで隙がありません。『EVERGREEN』に変更されてからも、現代高校英語の情報量が増えていく潮流にしっかりと合わせてボリュームが増えています。

 2025年現在、高校英語の文法書(総合英語)は非常に多くの選択肢があります。例えば『コーパス・クラウン総合英語』『Vision Quest 総合英語Ultimate』『総合英語 be 4th Edition』『総合英語FACTBOOK これからの英文法』です。これらアカデミックな文法書はお世辞抜きで全て高い完成度になっています。どれを選んでもハズレがありません。その一方でアカデミックとは一線を画す関先生の『真・英文法大全』や大西先生の『1億人の英文法』も目的によっては充実した内容に仕上がっています。そんな充実した文法書の中で本書は少々遅れを取っている部分があるのですが、決して悪いわけではなく、高校英語の学ぶための参考書として無難に残り続けています。

 そして、大人の学び直しにおいて、高校英文法は学習のはじめです。誤解を恐れずに言うと、中学英文法は高校英文法の下位互換と考えて問題ありません。文法をある程度深く理解したいなら「高校英語」を基礎にした方が実用英語の発展をより具体的にイメージできると思います。

アカデミックな文法書は実用性が低いとの批判もありますが、今は学習指導要領も改訂され、入試英語も実用性を意識するようになりました。以前ほどのいわゆる日本英語や文法過多に陥らない工夫が散りばめられています。この意味では出版年が新しい文法書を選ぶ方がより良いと言えます。

文法書を選ぶ際のポイント

 高校英語の文法書にハズレはありませんが、英語学習を効率的に行うためにいくつかのポイントを押さえたものがオススメです。

解説とレイアウトの相性

 全体的にどれもわかりやすい解説になっていますが、その中でも読み進めやすいと感じるものがあります。これは実際に手に取ったり、サンプルを眺めてみたりして確認してほしいと思います。

出版年が新しいもの

 これは前述した通り出版年が新しいものの方が実用英語への意識が高いため、大人の学び直しには特に意味のあるものになっていると思います。出版年の目安としては2021年の共通テスト以降です。

問題数

 文法知識のチェックに問題形式は役に立ちます。文法問題集を学習ルートに採用している人なら気にする必要はありませんが、もし文法問題集を省きたいなら大量の問題が付属しているものを選ぶと便利です。ただし、単元ごとに習ったものをそのまま適用する問題ではあまり意味がありません。

例文一覧と音声

 音声学習の利便性を考えると、例文は一覧としてまとめられているものがオススメです。文法書には文法事項の解説のために多数の例文と今はどの文法書であっても音声が付属しています。そんな例文音声は文法知識を思い出しながら音読することで高い学習効果を得られるのですが、例文が一覧になっていない文法書は音声が付属していても結局使わなくなってしまう人が多いのではないかと思います。そうならないためにも例文集が付属しているものを選ぶのがベストです。

高校英語の文法書の知識を身につけられたら、英検やTOEIC、海外留学などを想定しても十分です。

まずは文法書の通読から

 文法書は平均700ページの分厚さから通読よりも辞書利用してしまう人が少なくありませんが、最初に通読してしまうのがオススメです。通読すると文法ネットワークが頭の中に構築されるので、その後の文法知識の全てが自動的に整理されます。辞書利用は部分的な知識のエピソード記憶を促せても、体系化されるわけではありません。体系化されない知識は応用力と構造的な理解が乏しくなります。勉強は常に枠組みがあって、そこに個々の知識を整理しながら詰めていくイメージです。

文法書には文法用語がたくさん出てきます。読みにくいと感じる原因の多くは文法用語を正しく押さえられておらず、慣れてもいないからです。勉強の基本は新しい言葉の理解から始まると言っても良いかもしれません。成長痛は誰しも伴います。

 それにたった700ページでわかるとなったら、英語学習も簡単と思えるようになるでしょう。英語は数学のような難しさがありません。究極的には暗記です。誰でも継続によって成果を挙げることが可能な科目。ただ、文法書を読んでも理解があまり進んでいないという場合、根本的な国語力の改善を視野に入れた方がより良いかもしれません。大人の学び直し需要も大きい英語は参考書の選択肢も幅広くありますが、易しい解説を求めていくばかりでは時間効率が下がるため、どこかで文章読解の精度と速度を上げたいところです。

 また、本書をはじめとした学校配布の文法書は読みにくいということはありませんが、通読するなら関先生の『真・英文法大全』が最も読みやすいと思います。読みやすさと取っつきやすさは予備校講師が本領発揮する分野です。当サイトでは英語学習の初期段階に推奨するに至っています。もっとも関先生のそれは本書のような文法書を一度読んだ人にとって読み進めやすいところがあるので、どちらを最初の一冊にするべきかはまだはっきりと決まっていません。文法書の通読は英文法を概観しつつ、各文法用語に慣れることが第一の目標です。そのためにどちらでないといけないということはありません。その後の理解のしやすさにも大きな差があるわけでもありません。

真・英文法大全』は試験対策も盛り込まれ、実用性の高さが長所の一つとしてあるため、時間の無い現代人にとっては選びやすい参考書なのです。一方、本書のような文法書はアカデミックならではの礼儀正しさと重厚さ、情報への確からしさが長所です。年齢を重ねるほど本書を好む傾向があるような気がします。

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