| タイトル | 複利で伸びる1つの習慣 | |||||||||||
| 出版社 | パンローリング 株式会社 | |||||||||||
| 出版年 | 2019/10/12 | |||||||||||
| 著者 | ジェームズ・クリアー (著)、牛原 眞弓(翻訳) | |||||||||||
| 目的 | 勉強を習慣化させる | |||||||||||
| 対象 | 良い習慣を構築したい人 | |||||||||||
| 分量 | 328ページ | |||||||||||
| 評価 | ||||||||||||
| AI | 習慣の構築をサポートする | |||||||||||
| レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴
※本記事は公開以降、内容に変更はありません。
習慣化するための方法論
本書は原書『ATOMIC HABITS』の2019年に出版された翻訳版です。普段取り上げている参考書とは異なりますが、優れた参考書を使用する以前に勉強習慣が確立するかどうかの方が圧倒的に重要になります。そのため、本書のような書籍は当サイトとして取り上げておくべきと考えました。誰にとっても習慣化を科学することは必須。特に大人になると、子供の頃からの習慣によって成された自分自身を自覚することが増えますから、良い習慣と悪い習慣の差があまりに大きいことを誰もが知っているでしょう。悪い習慣を目の当たりにしたときの救いのなさが重く圧し掛かってくるわけです。
言い換えれば、多くの人は勉強しようと思ったときに「どのようにペンを動かすか」を大切なものと認識しますが、それは勉強習慣が確立したあとの話です。受験勉強にしても、一念発起した受験生が優れた参考書を探し回るところから始め、あろうことか初日から長時間の勉強を試みようとしますが、そもそも毎日1時間でも勉強してきたのかという話です。逆に言うと、成績を伸ばすための一連のサイクル(習慣)が完成したら、あとは時間の問題になります。より良い成果を挙げるための仕組みづくりという観点。利益を生み出す仕組み。知識が増える仕組み。健康を維持する仕組み。分断を生まない仕組み。人間は突発的な感情に支配されやすいからこそ、感情を抜きに、あるいは巧みに利用して振る舞うことが競争を勝ち抜く方法になるという着眼点は確かに重要なものに映ります。
特に子供の場合、まだまだ思考力(理性)が未熟であるがゆえに場当たり的な考えに支配されることは珍しくありません。無計画にその日の気分で取り組んだり取り組まなかったり。大げさではなく、ついついスマホを覗いてしまう習慣を断ち切るだけで集中力から時間効率まで一気に上がり、余裕を持って志望校に合格できるということも考えられます。本書のような自己啓発本は先入観から敬遠してしまう人もいるかもしれませんが、科学的根拠に基づいていますし、個人的には習慣の重要性からひとまず読んでおいて損はないと感じています。子供であっても、です。それに中高生が「参考書よりも良い習慣を確立できるかどうかの方が長期的な物事ほど結果に影響する」と理解していたら将来も安心でしょう。日々の行動の多くは無意識的です。その無意識に手を入れることが本書で語られています。
行動変化の4つの法則―習慣化の仕組みづくり
| 良い習慣の身につけ方 | 悪い習慣の断ち方 | |
| 第1の法則(きっかけ) | はっきりさせる | 見えないようにする |
| 第2の法則(欲求) | 魅力的にする | つまらなくする |
| 第3の法則(反応) | 易しくする | 難しくする |
| 第4の法則(報酬) | 満足できるものにする | 満足できないものにする |
本書は上記の表にある4つの法則を順に解説しているシンプルな構成です。正直、この手の本によくある各章の冒頭にあるエピソードについてはやや冗長的で都合の良いものを引っ張ってきただけのようで好きになれませんが、習慣化のための科学的な着眼点とアプローチについては勉強になります。
例えば、第2の法則にある欲求。これは無意識にやっている人もいるかもしれません。本書では数ある方法の一つとして「誘惑の抱き合わせ」を提案しています。誘惑の抱き合わせとは、自分がしたい行動としなければならない行動をセットにすること。人間は自分の好きなことと一緒にすることで、しなければならない行動自体が魅力的に映るようになっていくと言います。それはもしかしたら勉強が嫌いであったとしても、大好きな人が勉強に打ち込んでいる姿を見たら変わるということも挙げられるかもしれません。こういったことが本書ではエピソードを交えながら科学的な根拠に基づいて語られています。難しい数式やデータが出てくるわけではなく、各章の最後には「まとめ」もあるので全体的に読みやすいと思います。構成が秀逸。
習慣はドーパミン主導のフィードバックループである。麻薬の摂取、ジャンクフードを食べること、ビデオゲームをすること、ソーシャルメディアを見ることなど、非常に習慣化しやすい行動には、多量のドーパミンが関係している。
複利で伸びる1つの習慣 P125より引用
誹謗中傷の問題にしても、推しにお金と時間を過剰に注いでしまうことも、ギャンブルにしても、ドーパミンに振り回され、いつの間にか習慣化して抜け出せなくなっているのかもしれません。無自覚に快楽を刺激されるものほど適切な距離感が難しくなります。こういったことが意図せず誘発されてしまう人間という生き物を私たちは操縦しなければならないわけで、その仕組みについて理解することはとても大切だと思います。逆に言えば、その仕組みを利用して良い習慣を構築すること。この本の意義はそこにあります。
勉強を始める前に外堀を埋める
しなければならないことだが、どうしても乗り気になれないことが誰しもあります。そんなとき、しなければならないことの前にやれることをやっておく方針は有力です。例えば、勉強机の上が散らかっていたら勉強しようとする気持ちが起きないでしょう。であるなら、勉強机の上を片付けるだけでも勉強の一歩は踏み出されています。これは本書で言うところの第3の法則「易しくする」にあたります。逆に悪い習慣を断ち切りたいとき、例えばパソコンで動画ばかり観てしまうのなら、毎回パソコンのコンセントを抜いてしまえば良いのです。行動のためのハードルが上がると面倒になって自然と遠ざかります。
本書を読んでいると、人間は意外と単純であり、しかしその単純さゆえに知らず知らずのうちに行動が積み重なって良くも悪くも習慣化していることがわかります(習慣化は時間よりも回数)。さらに本書は人間の行動原理に基づいていますから、ビジネスや心理、組織づくりへの応用も考えられます。タイトルから想像される内容以上に有益に感じる点は多くありました。例えば「あなたに有利なゲームの見つけ方(P248)」では、習慣化に絡めて、自分に合ったものの見つけ方が語られています。有利なゲームを「得意科目」に置き換えてもいいですし、大きく言えば人生戦略に役立つ視点を得られます。内容は予想より硬派でした。
当サイトとしては、勉強開始前に習慣を変更するための期間を設けることを推奨しています。本格的な勉強前の助走期間。とにかくやってみる精神も大切ですが、場当たり的な取り組みは再現性が低くなり、何ができるのかできないのか、全体としてどこまで終わっているのかなどが不明瞭になりやすいのです。三日坊主で終わることもままあります。せっかく成長のために取り組むなら他の物事へ応用できる形で残すこと。人生の資産になります。つまり、本書のような習慣化についての書籍に目を通し、道筋を立ててみることは重要です。大好きな物事だったら勝手に習慣化されますが、多くの人にとっての勉強は必要に求められているものでしょう。ある意味、自分を信用せずに仕組み、習慣、環境といった無意識に働きかけて勝手に動けるようにするわけです。英語のリスニングなどは特に習慣にしないと成長を実感できませんからね。




