タイトル | ぜんぶ本の話【毎日文庫】 | |||||||||||
出版社 | 毎日新聞出版 | |||||||||||
出版年・価格 | 2024/11/5 | |||||||||||
著者 | 池澤 夏樹、池澤 春菜 | |||||||||||
目的・分類 | 読書のよろこびを知る | |||||||||||
問題・ページ数 | 320ページ | |||||||||||
総合評価 | ||||||||||||
対象・到達レベル (偏差値目安) | 日常学習 (ALL) | 教科書基礎 (40~45) | 教科書標準 (45~50) | 入試基礎 (50~55) | 入試標準 (55~65) | 入試発展 (65~70) | ||||||
対象・到達レベル
【対象】
・読書を愛する全ての人、読書に興味が湧かない全ての人、池澤親子が気になる人
【到達】
・読書家の豊かで知的な姿を垣間見られる
・本を読む行為の理解が深まる
当サイトで取り上げるべきか悩みましたが、他人への興味をきっかけに本を読み、文章に触れ、学びを深める可能性も大いにあるだろうということで取り上げてみました。かく言う私は声優「池澤春菜」さんを幼い頃に観ていたアニメから偶然知り、「活字中毒」を自称するほど本の虫であることを大人になってからこれまた偶然知り、「一体どういう感性を持った人なのだろう」と気になり始めて「乙女の読書道(著:池澤春菜)」を衝動買いしたという経緯があります。
そして、私はもともと人間に対する興味関心が高く、自分にはないものを持っている人の思考や感性への好奇心があります。特に小説をほとんど読まない人間にとって、小説(物語)を読み漁り、夢の中でも本を読んでいると言わんばかりの池澤春菜さんへの興味が湧かないはずはなかったのでした。学生の頃、図書室の本を全て読んだというとんでもない逸話もあるそうです。
本書の構成
まえがき
文庫本のまえがき
読書のめざめ 児童文学1
外国に夢中 児童文学2
大人になること 少年小説
すべてSFになった SF1
翻訳書のたのしみ SF2
謎解きはいかが? ミステリー
読書家三代 父たちの本
父の三冊
福永武彦について 池澤夏樹
ぜんぶ父の話 池澤春菜
あとがき
文庫本あとがき
本書に登場する主な書籍
池澤春菜さんの父親「池澤夏樹」さんは作家であり、本書の中で池澤春菜さんは最高の本読み仲間と語っています。本書の中に登場する書籍の多くは著名なものばかりですから、本好きな人にとっては聞き馴染みがあるでしょう。私からすると、正しく本を読める人は他人を理解する力の高さが顕著にあり、池澤春菜さんはその典型にも感じています。他人を尊重し、他人を正確に捉えようと文章を読み解いていく。本を読みながら、作者も読む感覚。創作された世界を楽しむ姿勢は十分に感じながら、同時に作者への理解の深さも感じるのです。
本好きな人にとって本書は池澤親子の読書談義としても読めますし、気になる本を見つけるための書評とも読めると思います。本好きな人にしかわからない感覚を共有しているために説得力があるはずです。
読み通せる一冊と出会うまで
小説に限らず、一冊の本を最初から最後まで充実して読み通せる経験を得られるかどうかの分岐は大きい気がします。当然ながら幼い頃から本を読む習慣がある人は国語力も高くなる傾向にありますが、その最初の一歩はどうしたら良いのかと悩むでしょう。
この問いに対してというわけではありませんが、池澤親子は「一冊読み通せる本が出るまで、いろいろ与えてみる」とインタビューで答えています。本は最後まで必ず読まなければならないものではなく、最後まで自然と読み通せるものとの出会いを待つ。という視点は個人的にありそうでなかったものでした。また、読書は他人から褒められる高尚な行為ではなく、単なる娯楽という捉え方で十分とも。つまり、まずはどんな本でも、どんな読み方でも良いのです。
そのうち読み通せる一冊と出会い、読書という行為の楽しさにわずかでも触れられたとき、二冊目に手を伸ばせるようになるでしょう。勉強を生涯にわたって手段にするように、一度でも自然な楽しさを得られたものは行動の選択肢の一つに組み込まれるはずです。そして、池澤春菜さんのように本を読み漁るようになると、以下の動画でわかるように、豊富な語彙力と言語表現の妙に驚かされるまでになるのかもしれません。