基礎英文のテオリア―英文法で迫る英文読解の基礎知識/英文解釈の比較あり

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タイトル基礎英文のテオリア
出版社Z会
出版年2023/7/28
著者石原 健志、倉林 秀男
目的英文解釈
対象英文法を意識した英文解釈に取り組みたい人
分量192ページ
評価
AI解説サポート
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴

2026/03/01 タイトルと著者情報、出版年について、類書と情報を取り違えていた点を修正しました。

英文法からの接続を意識した英文解釈の基礎

 本書は2023年にZ会から出版された英文解釈の参考書になります。本書シリーズの最初は2021年に出版された『英文解釈のテオリア』です。本書はその基礎編にあたります。なぜ、基礎編があとに出版されたのか。これは出版社にしかわからない事情ですが、そもそも英文解釈の基礎は必ずしも必要ないという立場があると思われます。例えば、高校の総合英語を通読して文法を理解し、文法語法問題集に取り組むオーソドックスな流れの中でも「文法書の例文+問題文」で1000以上の英文に触れます。解説の丁寧な参考書ならなおのこと。その英文だけでも入試基礎程度までの実質的な解釈にもなっていますよね。英文解釈の参考書の本来的な意義は「解釈の難しい英文」を紐解くところにあるわけです。

 もちろん、文法書と文法語法問題を解いた結果として身につく英文の理解にはいい加減なところがあったり、4択の空所補充が解けただけになっていたり、文法知識を読解まで正しく接続するためには本書のような英文解釈の基礎があった方が便利なのは間違いありません。また、本書を取り上げた理由として、中堅私大・地方国公立志望の一冊で済む英文解釈を探し回ったところ、30テーマ112例文が収録されているということで後述する『入門英文問題精講』と『読解のための英文法[必修編]』の使い勝手を上回る可能性があり、その上で英文法が強く意識されている点、薄くて一冊をきちんと終えやすい点が魅力的だったからです。レイアウトも見やすい。解説もわかりやすい。

 ただ、本書は確かに基礎から始まっているものの、文法知識がしっかりと身についていないと解説を読み進めるのにかなりの時間を要します。果たして本書を初心者も取り組める参考書と言えるのか。この意味で言うと『読解のための英文法[必修編]』の方が明らかに取り組みやすいのですが、最近取り上げている現代文の参考書からも、本書の文章を読んで理解できなかったらすぐに成績は頭打ちしてしまうのではないかという結論に引き寄せられています。文章が読み進めにくい=文法知識の定着が甘いと言い換えても良い。逆に本書の文章を流暢に読み、実力に繋げられたのなら大学偏差値65までは心配ありません。それに本書なら『英語リーディング教本』のような安定感のある読解が可能になります。

今はAIによる解説サポートがありますから、そういった心配も杞憂でしょうか。ちなみに『英文解釈のテオリア』の難易度は大学偏差値で言うところの55~65+αくらいです(東大や慶應の過去問あり)。

本書の構成と解説の一例

 本書の構成はシンプルです。全10章30テーマ112例文。1ページ単位。上部に例文・その他解説になっています。解説も例文の頭から順を追って思考プロセスを提示しているので、最終的には同じように読解できることを目指せます。例文音声と例文一覧PDFが付属する点も完璧です。

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構成・内容序章 英語の語順と品詞
第1章 名詞のかたまりをとらえる
第2章 主語になる要素をとらえる
第3章 動詞の後に来る要素を見抜く
第4章 形容詞のはたらきを理解する
第5章 副詞のはたらきを理解する
第6章 文に組み込まれたSVをとらえる
第7章 主語の前にある要素を見抜く
第8章 区別が難しい要素を見抜く
第9章 語順の入れ替わりを見抜く
第10章 構文の構造をとらえる
その他例文音声ダウンロード可能
例文一覧PDFあり

 本書は教科書の基本的な例文から始まり、第9章と第10章では挿入・同格・省略・倒置なども扱っているので英文法の範囲を一通り押さえています。難易度に関して類書との比較からわかりやすく位置づけるなら50~60ですが、解釈を通じた文法講義が展開されているので他の参考書よりも難しさを感じやすいかもしれません。大人の学び直しとしては薦めやすい。

people management の後に important という形容詞が出てきました。<名詞+形容詞>の形になっていますが、形容詞が1語で名詞を修飾する場合は、原則として名詞の前に置くので、ここでは叙述用法で使われていると考えられます。
基礎英文のテオリア P88より引用

 この引用は例文「The company considerd people management important for a variety of reasons.(P88より)」の解説の一部です。英文法を学んだ人からしたら何てことはない解説ですが、先に述べたようにこれを流暢に読んで理解できるだけの文法知識を備えている人はどれほどいるのか。

 他方で『読解のための英文法[必修編]』の方が易しいと述べた点については以下を確認してみてください。

see O C「OがCするのを見る」という第5文型のOCにネクサスの関係が現れます。文のSVは、She sawですが、OCの her mother enter にも「彼女の母親が入る」と、かくれたSV関係が現れます。her mother enterをS’V’として、ネクサスの関係を見抜きます。
読解のための英文法[必修編] P131より引用

 この引用は例文「She saw her mother enter the neighbor’s house.」の解説です。例文も解説も易しく感じられると思います。わずかな差ですが、現役生を対象にするなら『読解のための英文法[必修編]』が直感的に薦めやすい。しかし、そういった点を踏まえても本書を新しい英文解釈の基礎として採用したい理由があります。

 それは英文法から解釈が続いている感覚を押さえてほしいからです。原理的に英文法を理解していたら読めない英文はないという基礎基本へ立ち返る意識を持ってほしいとも言えます。現実に難構文・難構造を含んだ英文では難しくなりますが、易しい英文解釈は文法知識が多少曖昧でも読解の足掛かりになる一方で、英文法を学ぶ意義を希薄にし、初見の英文への対応力が落ちるのではという懸念があります。

もちろん、ここには程度の問題もあります。私たちが現代文を読解する際に無意識に文法的処理をして読んでいますが、それは読解に必要な程度に抑えられています。突き詰めるとトレードオフになる部分はあるものの、本書の解説を理解する程度の英文法の知識と運用は必須と言っても過言ではないと思います。ただ、こういった点が個人的な好みに過ぎないことも否定しません。実際、そこまで差はありませんからね。

 次に、レイアウトの見やすさと思考プロセス重視のわかりやすさです。すべての例文を頭から少しずつ読解していくプロセスは間接的に英米的な発想に触れているわけで、英文を返り読みしないようになるには手っ取り早いと思います。例文が易しすぎるわけではない点も地味に評価が高く、簡単な英単語が含まれていると「なんとなく読めた気分」になってしまいやすく、学習としては読めそうで読めない英文を解説によって紐解く方が力になります。もっともこれも細かな差です。80点と90点の違いについて語っているだけで、優先すべきは一冊をきちんとやり切れるかです。どちらも良い参考書という前提から語っています。※当サイトで単語学習を後回しにする理由も、解釈の段階での単語読みを避ける意図があります。

私たちは日本語の文法学習なしに日本語を身につけています。これと同様に日本人であっても、幼少期の環境によって英語をネイティブと同様に身につける人もいます。それを過ぎたあと、つまり私たちの日本語が確立したあとには文法による学習を避けて通れない気がします。近道できる余地があるとすれば、英米的な発想を深く理解することか。いずれにしても、英文を日本語的な感覚から無意識的に捉えるようになった時点で、本来の英米的発想に基づく英文への解像度は極端に低くなっているため、国内にいるならなおのこと、その解像度を上げる手段として英文法に多少なりともこだわることは否定されないだろうと思います。英語を学ぶとは、全く別の文化と思考を学ぶ(というより写す)に近い感覚があります。ここに気づこうとする意識がきっと大切。

英文解釈参考書の志向性の違い

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国公立型―思考力重視・和訳問題対策入門英文問題精講』『英文熟考』『入門英文解釈の技術70』『英文読解の透視図』『英文解釈教室
私立型―読解速度重視・長文対策読解のための英文法』『英文解釈ポラリス』『ポレポレ英文読解プロセス50
ハイブリッド型動画でわかる英文法』『英文解釈Code70
生きた英語型英文解釈のテオリア』『英文解釈クラシック
その他英語リーディング教本

 英文解釈の本質は同じなので分類するほどの大きな差はありませんが、例えば竹岡先生の『英文熟考』のように終始和訳問題と向き合わせる参考書は私大志望には重く、肘井先生の『読解のための英文法』の方が効率は良いでしょう。個人的に関先生と肘井先生は同じ慶應出身で語数の多い長文への志向性を感じます。昔ながらの参考書の現代的な評価はどれも国公立に適している印象で、西先生の『ポレポレ』だけは難構造が難易度の中心だった早慶対策に適していた背景から私立型に分類しています(和訳より読解プロセス)。

 ここ最近の参考書である『英文解釈Code70』は『英語リーディング教本』の要素を含みつつ、思考プロセスを重視、和訳問題で解釈の力を養おうとしている視点から国公立・私立のどちらが取り組んでも違和感がないということでハイブリッド型にしています。本書『英文解釈のテオリア』と『英文解釈クラシック』は大学入試以外の英文を積極的に取り扱っていることもあって偏差値的な難易度が見えにくく、どんな英文にも物怖じしない「英文解釈の地頭」を養っているということで「生きた英語型」に分類しました。『英語リーディング教本』は品詞・構造分析といった文法の論理を徹底的に適用して英文を追い詰める独自性から、一般的な英文解釈に取り組んでも成長をいまひとつ実感できない人には救いの一冊になる可能性があります。文法的な意味でのいい加減な読み方がなくなる参考書。『英文解釈Code70』で伸びた人の発展的な参考書としてもオススメです。本書もそれに近いと言えば近い。

なお、英文解釈はその性質上、難しくなるほど内容に幅が生まれます。本当に出題されるのかと疑問に思ってしまうものもあるでしょう。この点で『英文解釈Code70』は難関大の出題データから勉強する価値のある英文(全て過去問)を厳選している利点は付け加えておきます。最難関大志望には2026年現在、最後の英文解釈としてオススメする一冊。

 そして、『動画でわかる英文法』は『入門英文問題精講』と『読解のための英文法』を足して二で割った印象だったのでハイブリッド型に分類しています。ここ最近、中堅私大・地方国公立を意識した内容が多くなっていますが、これまで地方国公立には『入門英文問題精講』を、中堅私大には『読解のための英文法[必修編]』を推奨していました。今でもこれらを使用するメリットは大きいのですが、当サイトの方針として受験に特化しすぎない、将来に繋がる英語力を意識したときに「生きた英語型」は評価を高めても良い気がします。

 この点で言うと、竹岡先生の『入門英文問題精講』は基礎にしながら和訳が中心で好ましい負荷です。英文解釈は究極的に和訳問題がシンプルで最も力がつくでしょう。地方国公立志望には理想的な一冊。しかし、人間は思考の重さを感じたときに巧妙に負荷を逃がす=いい加減な取り組みに陥ることがままあります。そうさせないための講義動画が秀逸な配慮ですが、和訳を繰り返す以前に備えてほしい知識と思考は何かと考えると、本書が魅力的な選択肢として浮上します。難易度は重複するものの、本書のあとに『入門英文問題精講』に取り組んでも良いくらいかもしれません。英文解釈における和訳演習は初学者にとって諸刃の剣です。繰り返しますが、どれも正しく使えば一冊だけで全統模試偏差値60以上になってもおかしくありません。ただ、そこまで伸びなかったとき、何が原因か。文法的な視点から英文を正しく読み解けていないのではないか。といった問題に事前に対処できるのが本書です。

今はAIによって和訳しにくい英文と出会うたびに解説をサポートできますが、その解説の理解を深める知識(≒間違いに気づく知識)として何を備えておくべきか。意識できるとより良いか。この答えとして英文法への帰着が大切と考えるに至っています。

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