タイトル | 英文詳説 日本史 JAPANESE HISTORY for High School 英文詳説 世界史 WORLD HISTORY for High School | |||||||||||
出版社 | 山川出版社 | |||||||||||
出版年 | 2024/3/23(日本史) 2019/8/30(世界史) | |||||||||||
著者 | 【日本史】佐藤 信、五味 文彦、高埜 利彦、近藤 成一、亀井 ダイチ 利永子、亀井 ダイチ アンドリュー 【世界史】 橋場 弦、岸本 美緒、小松 久男、水島 司 | |||||||||||
目的 | 高校で学ぶ日本史と世界史 | |||||||||||
対象 | 英語で歴史を学びたい人 | |||||||||||
分量 | 512ページ(日本史) 459ページ(世界史) | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
AI | 読み取りにくい箇所のサポート | |||||||||||
レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
英語で学ぶ歴史
本書は2019年に世界史版が出版され、2024年に日本史版が出版されました。英文詳説とあるように全ての文章が英語になっていて、率直に素晴らしいコンセプトと実現まで結びついた労力に感服する参考書です。本書の元は山川出版の歴史教科書とは言え、英文になっても日本の高校教科書や資料集と同等に非常に高い完成度にあります。一般参考書なので値段こそ少々高いものの、内容に関しては文句のつけようがありません。
本書は歴史教材なのか、英語教材なのか。これは日本人なら英語教材寄りだと思います。英語学習しながら歴史を学ぶ。欲を言えば、タイトルや著者名など隅々まで英語で統一してほしかったところですが、中身に関しては洋書と言って差し支えないので満足しています。日本史は英訳の都合で伝わりにくい用語が都度日本語で補足されています。世界史にはそれが一切ないので、英語学習を目的にどちらか一冊選ぶなら世界史がオススメ。歴史的な説明で頻出する用語を別途押さえる必要があるとしても、英文は英検2級あればなんとか読み進められると思います。ですが、ページあたりの情報量の多さと歴史教科書ならではの政治・経済・文化などの硬質なテーマと単語を考えると、英検準1級以上、早慶レベルの文章を読んでいる感覚に近いものがあります。
ちなみに本書の元になった山川の歴史教科書は、現在学校で採用されている『日本史探究 詳説日本史』の一つ前の教科書になります。本書と照らし合わせながら読みたい人は中古で探すしかありませんが、最近になって『日・英 くらべて読める 山川日本史』が発売されました。また、現在の教科書と一つ前の教科書との比較では構成の変更や近現代史の詳細な解説、最新の研究成果、新発見の事実などが盛り込まれていますが、本質的な内容はほとんど変わっていないと言って良いと思います。一つ前の教科書は原始から現代まで時系列で網羅的に押さえるものになっていたので、現役生が本書で英語と歴史を同時に勉強する使い方も現実的に可能です。
本書の構成
―Japanese history―
Part I The Primeval & Ancient Eras
chapter 1 The Dawn of Japanese Culture
chapter 2 The Formation of the Ritsuryo State
chapter 3 Aristocrastic Rule and Native Japanese Culture
Part II The Medieval Era
chapter 4 The Establishment of Medieval Society
chapter 5 The Evolution of Warrior Society
Part III The Early Modern Era
chapter 6 The Establishment of the Bakuhan System
chapter 7 The Evolution of the Bakuhan System
chapter 8 The Waning of the Bakuhan System
Part IV The Modern & Contemporary Eras
chapter 9 The Establishment of a Modern State
chapter 10 The Two World Wars and Asia
chapter 11 Japan under Occupation
chapter 12 The Rapid Growth Era
chapter 13 Turbulent Times for Japan and the World
―World history―
Part I
chapter 1 The Ancient Orient and Mediterranean World
chapter 2 Ancient Civilizations in Asia and the Americas
chapter 3 Formation of the Inner and East Asian World
Part II
chapter 4 Formation and Development of the Islamic World
chapter 5 Formation and Development of the European World
chapter 6 Evolution of the Inner and East Asian Worlds
Part III
chapter 7 Prosperity in Asia
chapter 8 Formation of the Early Modern European World
chapter 9 Evolution of the Early Modern European World
chapter 10 Establishment of the Modern European and North American World
chapter 11 Development of Modern Nation-States in Europe and North America
chapter 12 Turmoil in Asia
Part IV
chapter 13 Imperialism and Nationalist Movements in Asia
chapter 14 Two World Wars
chapter 15 The Cold War and Independence of Third World Countries
chapter 16 The World Today
※ページ数は英語版の方が10ページほど多くなっていますが、図表や史料の配置はほとんど同じです。
Reseach topic suggestions
1. What were the features of the natural environment in the various areas where the earliest civilization were formed?
2. What were the relations between the centralized ruling structures of the ancient empires and the socio-economic structure of each regional world?
3. What was the philosophy and/or religion at the base of the ruling structure in each of the ancient empires that appeared in different regional world?
英文詳説 世界史 WORLD HISTORY for High School P97より引用
世界史の日本語版にある「考えてみよう」という学習の手引きまでしっかりと英訳されています。つまり、日本語版を本当にそのまま英訳したものに仕上がっています。
歴史の教科書には一般常識的に語られる様々な文脈が登場しますから、そこで使用される単語や言い回しを知れる利点は計り知れないかもしれません。海外の人に日本の歴史を説明する場面でも使える表現が多々あります。加えて、やはり現役生にとっては英語と歴史を同時に高いレベルで学習できる、具体的には早慶対策の最高の参考書に挙げられてもおかしくありません。本書のポテンシャルは相当高いと思います。
英語に慣れる多読参考書の一冊として
英語は最終的に多読多聴を行っていくのですが、正確な和訳とできたら文構造を理解できるサポートがあると段階的な学習になります。英語だけで理解を完結させることはすぐにはできません。徐々に英語の割合を増やしていきます。本書だけで言うと99%英語なのですが、日本語版の教科書、あるいは『日・英 くらべて読める 山川日本史』を用意すれば50:50になります。これは英語学習を一通り終えた人の多読参考書としてちょうど良い。映画の字幕版みたいなものです。今なら文構造の疑問はAIによって回答を得られますから心配ないでしょう。※簡単な英語で英語を理解する方針も有力です。
ただ、多読多聴は特に読む場合には必ず音読を行います。音読を行うなら発音の学習を事前に終えていてほしいのが本音です。文法知識が正しく身についている人は、音読しながら英文の構造を理解しながら読めます。発音の学習を終えていると、さらにリスニング能力まで伸ばせます。というように読めば読むだけ、聴けば聴くだけ英語のあらゆる情報が多角的に浸潤する状態です。また、本書のように教科書の文章は非常に綺麗ですから、実際にスピーキングやライティングで使用できる表現もたくさん見つかります。
しかし、ほぼ洋書の本書に初めて取り組むという人にとってはかなり大きな負荷がかかります。その中でもし挫折しそうになったとしても、今までに使用した参考書や辞書を引きながら、時にはAIに質問しながら最後まで読み切ってほしいと思います。あまりにレベル差を感じるときは投げ出しても良いのですが、頑張ればなんとかなるなら頑張りたいところです。英語に限らず、あえて不自由な状況に身を置くと人間は藻掻きますから、全身が筋肉痛になって一回り大きくなれます。日本語の参考書に慣れていると、そうした機会がなかなか生まれません。