HISTORIA[ヒストリア] 日本史/世界史探究精選問題集【改訂版】

タイトルHISTORIA[ヒストリア] 日本史探究精選問題集【改訂版】
HISTORIA[ヒストリア] 世界史探究精選問題集【改訂版】
出版社Gakken
出版年2025/6/26
著者日本史 佐藤 四郎、舩倉 淳
世界史 平尾 雅規、市川 賢司
目的日本史/世界史 網羅系問題集
分量日本史 672ページ
世界史 618ページ
評価
レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達

【対象】
・日本史/世界史の網羅系問題集を探している人
・共通テスト対策、私立志望の受験生
・実際の入試問題で知識を覚えたい人

【到達】
・全統模試偏差値65以上
・基礎から標準までの空所補充・正誤問題に慣れる

 本書は2025年6月に改訂された新課程対応(歴史探究)の網羅系問題集になります。個人的に理科科目の『良問問題集』に続き、歴史科目の『HISTORIA』の改訂は待ち望んでいました。本書に近い問題集は数多く出版されているものの、本書のように600ページを超える手厚い解説が付属しているものはありません。英語で言うと『文法語法良問500』のように、理解を深めながら知識も補完できる最高の参考書です。

 もともとGakkenと言うと、小中学生向け、および勉強が苦手な高校生向けの参考書が多い印象がありました。例えば、当サイトでも取り上げた『320例文で効率よく覚える 中学英単語・熟語2000』をはじめ、『高校入試 数学をひとつひとつわかりやすく。』、『やさしい高校数学(数学Ⅰ・A) 改訂版』のやさしいシリーズ、『宇宙一わかりやすい』シリーズ、共通テスト対策で有名な『きめる!共通テスト 情報I』のきめる!シリーズが目立ったところでしょうか。受験のボリューム層(偏差値45~60)を捉える出版社というイメージ。

 そんな中で本書は珍しく難関私大にも通用する問題集になりますが、問題自体は基礎~標準が多め、難関向けは少なめです。解説の深さが難関大にも通用するというのは間違いありません。先に挙げたシリーズからもわかるように、Gakkenの解説は他の出版社よりも顕著にわかりやすさが意識されています。分厚い問題集だから大変ではなく、解説を読むだけでも力になる効率の良い問題集です。なお、解説が充実している参考書は大人の学び直しにも向いています。

歴史科目の網羅系問題集

 歴史科目は講義系参考書が充実しているものの、理科科目で言うところの教科書傍用問題集『エクセル化学』や『エクセル物理』のような網羅系が意外とありません。空所補充の問題集ならあるにはありますが、一問一答形式に近いコンパクトな位置づけで本書とは少し趣が異なります。

 まず、本書の長所は過去問ベースの問題構成に、用語カバー率を意識したオリジナル問題を加えているところにあります。速読英単語の長文にしてもそうですが、できるだけ本番に近い問題に数多く触れた方が良い。しかしそうは言っても、過去問だけでは偏りが生まれるため、重要用語のカバー率を損なわないようにオリジナル問題によって補強するコンセプトはよく考えられています。

 次に、入試の論点を押さえながら一問ごとの解説が丁寧であること。これは類書よりも明確に優れています。用語や正誤問題を扱っている上で解説が詳しいということは単純暗記を防ぎ、入試で得点するための理解に結びつきます。入試基礎から標準までの知識を網羅する問題集としては理想です。

平安初期とは桓武天皇と平城天皇・嵯峨天皇の時代であるが、桓武天皇と嵯峨天皇をターゲットにして準備すればよい。桓武天皇については、遷都・蝦夷征討・律令政治の再建に関する出題が多く、嵯峨天皇については平城太上天皇の変(薬子の変)・格式編纂に関する設問が多い。平安初期という時代は、律令制と現実の乖離が大きくなり、政府はその対応を迫られた時期である。こうしたことを背景に、社会の実情に合わせて機能する令外官が設置されていく。この令外官も要注意である。
HISTORIA日本史探究精選問題集 P34より引用

 また、上記の引用のように単元ごと時代ごとにポイントを押さえ、重要用語は太字で表記されています。通史を100題に分割したことで勉強の進捗も管理しやすくなっていると言えるでしょう。本書の定義では「難関大」=「明治大・青山学院大・立教大・法政大・中央大・日本女子大・東京女子大・津田塾大・学習院大・関西大・関西学院大・同志社大・立命館大・南山大」、「最難関大」=「早稲田大・慶應義塾大」としており、難関大未満を志望する受験生は「難関レベル・最難関レベル」の問題を省いて使用することもできます

 一方、本書が国公立向けではなく、私立向けである点に触れておきます。それは採用されている過去問が私大ばかりというべきか、歴史科目に必要な知識問題の網羅に私大の過去問が都合が良かったと言うべきか、国公立で出題される論述問題は含まれていません。共通テスト対策として機能する理由は、正誤問題を取り扱っている点と手厚い解説によって理解しながら覚えられるからです。一般的な国公立志望なら本書で共通テスト対策を建前に基礎知識を頭に入れたあと、志望校のレベルに合わせた記述式問題集に取り組むのも良いと思います。難関国公立志望には『日本史標準問題精講』がオススメです。※まだ改訂されていない点は注意

早稲田大学の「政治経済学部」では共通テストが必須になりました。この流れが今後も広がっていくかはわかりませんが、本書のように共通テスト対策も兼ねられる参考書が支持されていく流れは生まれそうです。

歴史科目の参考書ルート概要

STEP
【科目の理解を深める段階】時代の流れと枠組みを構築する

『授業』
『教科書』or『講義系参考書』
※偏差値60以上の大学を志望するなら教科書を軸に、60未満なら講義系参考書を軸にし、もう一方は補助的な位置づけにします。

STEP
【知識を固める段階】入試問題を解くためのインプット

『一問一答』
『共通テスト(センター試験)過去問』
『HISTORIA 日本史/世界史 探究精選問題集』
※一問一答は目的に応じて過剰にならないように。個人的なオススメは『日本史一問一答[基本版]
※問題形式で知識を強化するなら、本書と共通テスト(センター試験)の過去問が有用です。

※『HISTORIA』よりも軽い問題集なら『日本史探究用語 2レベル定着トレーニング』『世界史探究用語 マルチ・トレーニング』などがオススメ。

STEP
【志望校対策】問題形式に応じたアウトプット

歴史科目は「空所補充(用語知識)、正誤、史料、論述」が4本柱としてあり、他に年代整序や図・グラフ、写真・図像、時事問題との融合など志望校によって特殊なパターンがあります。基本的にSTEP.2までの時代の流れと枠組み、知識を前提に、それらの問題に対応していくことを目指します。
※知識不足を感じたらSTEP.2に適宜戻ります。

本書の解説が重いと感じるなら、STEP.3に位置づけても良いと思います。歴史科目はいかに目的に応じた知識の体系化を行えるか。インプットの仕方が全てと言っても過言ではなく、その意味ではインプットとアウトプットの境目が曖昧です。

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