タイトル | 大学入試 英文解釈クラシック: 論理を捉えて内容をつかむ | |||||||||||
出版社 | 研究社 | |||||||||||
出版年・価格 | 2020/9/16 1650円 | |||||||||||
著者 | 久保田 智大 | |||||||||||
目的・分類 | 英文解釈 | |||||||||||
問題・ページ数 | 224ページ | |||||||||||
総合評価 | ||||||||||||
対象・到達レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
対象・到達レベル
【対象】
MARCHレベルまでの英文を流暢に読解できる人
【到達】
早慶レベル
まず、本書の例題として用いられている英文は古典的なものを数多く扱っています。著者の「予備校講師」という経歴から本書を「難関大対策の英文解釈」と考えることもできますが、本書の冒頭の説明や構成から考えるに、難関大を目指す受験生が躓きやすい点を古典的な名文を用いて解消するのが目的のようです。
そのため、具体的な大学群としてのレベル感が不明瞭で評価を分けています。例文の難しさもあまり統一感がなく、難関大対策になり得る点も著者の経験、感覚に基づくものです。しかし、こうしたことは仕方のないことだろうとも思います。というのも、ある一定以上の大学における英文は偏差値で簡単に推し量れるものではなく、設問の設定次第で英文の難易度=試験の難易度とはならないからです。英文解釈は基礎基本のレベル感こそわかりやすいものの、難しくなるほどそうした枠組みは意味を成しません。
和訳問題集という位置づけ
本書は「難関大対策」として一から英文解釈を学ぶためのものではなく、すでにある程度完成した状態で最後に取り組む和訳問題集と位置づけるのが良いと思います。解説も講義というよりは整理。わかりやすくて丁寧というより、頭の良い人の考え方を参考にするものです。数学で言うと『ハイレベル数学の完全攻略』に近いイメージ。例文音声が付属していますから、問題を解き終わったあとの復習もしやすくなっています。
しかしながら、やはり評価の難しい参考書です。大学受験という枠組みで本書が適切に機能するタイミングやレベルが見えてきません。早慶志望でも『読解のための英文法(難関大編)』+『ポレポレ英文読解プロセス50』や『英文熟考 上下巻』などをしっかり終えたら基本的に十分でしょう。難解な英文向けの解釈というなら、丁寧な解説を軸にするべきで本書は心許なく見えます。となると、やはり最後の仕上げ、和訳問題集がちょうど良い気がしてしまうのです。
最難関大向けの英文解釈は出版年が古いものが多く、そもそも『ポレポレ』も早慶向けを謳っているわけではないため、本当の意味でそうした大学の対策ができる英文解釈は目立ってありません。強いて挙げるなら『英文解釈code70』が最も使いやすく見えますが、個人的には『京大入試に学ぶ 英語難構文の真髄』にも可能性を見出したいと思っています。こちらは解説も高いレベルで丁寧にまとまっています。欠点は音声が付属しないこと。

早慶の過去問のみを扱った英文解釈が出版されたら大ヒットするでしょう。もっとも現代受験英語は難構文より語数の多い長文読解が主流になっているため、最難関国公立の和訳問題を除き、早慶であっても解釈に時間をかけない方針が有力になっていると思います。
大学受験から洋書への橋渡し
大人の学び直しなら、本書はオススメです。特に一度大学受験でしっかり英語を勉強された方なら、古典的な名文とともに解釈を学べる参考書として評価できると思います。大学受験から洋書への橋渡しになるものは他に『英文解体新書』などもありますが、その枠組みで言うと本書は導入に位置付けられます。より講義調で理解したいなら『英文解釈教室』という有名な参考書もオススメです。※英文解釈教室は大学受験の枠組みですが、レベルが非常に高いので洋書導入に用いても差し支えないはず。
他方で、一般人にとっては「英文解釈は終わりがない」と言っても過言ではないものです。最終的には翻訳の世界ですから。そのため、やみくもに手を出すのではなく、大学受験や英検などの目的に応じ、安定して得点できる“程度”の力で満足する方が現実的で実用的かもしれません。これは大学数学などにも言えることで、終わりを決めないと終わらない世界というのが大学以降の学問です。英文解釈は学びが多くておもしろいのですが、だからと言ってやみくもに手を出すべきではない世界でもあります。