タイトル | 2025 実戦 化学重要問題集 化学基礎・化学 | |||||||||||
出版社 | 数研出版 | |||||||||||
出版年 | 2024/11/6 | |||||||||||
著者 | 数研出版編集部 | |||||||||||
目的 | 入試化学典型問題 | |||||||||||
分量 | 問題168ページ、解答184ページ、別冊付録32ページ | |||||||||||
評価 | ||||||||||||
レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
対象・到達
【対象】
・教科書レベルを終えた人、基礎知識を固め終わった人
・全統模試偏差値55から、難関大志望
・丁寧な解説より簡潔な解説を求めている人
【到達】
・大学入試化学の典型問題を一通り押さえられる
・A問題だけでもほとんどの大学の合格レベルに達する
本書は2025年に数研出版から出版された化学の重要問題集です。いわゆる「重問」として受験生の間ではかなり定評があります。その地位は数学で言うとチャート式に近い。以前に取り上げた『化学の良問問題集』は問題の構成からしても本書をかなり意識して編纂されており、それだけ本書が化学の入試問題集の中で盤石の地位にあると考えられます。
また、本書は教科書傍用問題集として進学校での採用実績も多く、内容に関しても入試化学の典型問題をしっかりと押さえているため、学校配布の本書に取り組んでおけばお金もかからず間違いないという認識まで確立しています。教科書傍用問題集に位置づけられる参考書は『新課程 視覚でとらえる フォトサイエンス 物理図録』のような資料集と同様に、価格に対して内容の充実度が高くコスパの良さを実現しています。
しかし、本書には欠点とまでは言わないにしても、気になる点が2つあります。1つは教科書傍用問題集特有の解説の少なさです。授業によって補完される前提なので、化学が得意な進学校の生徒以外はなかなか使いこなせません。もう1つは『化学の良問問題集』と比較したときの問題数です。当然のことながら問題数が多いほど網羅度は高くなります。進学校での採用実績が多いという点を噛み砕くと、大学進学を意識した定期テストや通塾率の高さなどがあるからこそ本書が適切な問題集として位置づけられている可能性があります。こうした点を加味すると『化学の良問問題集』の方が万人向きで独学にも推奨しやすかったのです。ただ、後述するAIによる補完が機能するなら本書の気になる点は解消され、問題数も削減できてよりシンプルな方針で取り組むことができます。
本書の構成
1 物質の構成粒子
2 物質量と化学反応式
3 化学結合と結晶
4 物質の三態・気体の法則
5 溶液
6 化学反応とエネルギー
7 反応の速さと化学平衡
8 酸と塩基の反応
9 酸化・還元と電池・電気分解
10 非金属元素(周期表を含む)
11 金属元素
12 無機物質の性質・反応
13 脂肪族化合物(有機化合物の分類を含む)
14 芳香族化合物
15 有機化合物の構造と性質・反応
16 天然高分子化合物
17 合成高分子化合物
18 巻末補充問題
※問題数269題
※QRコード経由で思考のヒントを確認できる
本書の特色
高等学校で学習する化学(化学基礎+化学)の内容を効率的に学習し、短期間に大学入試の準備を完成できるようにしました。したがって、本書では大学入試の問題を参考にして、出題頻度が高いと思われるもの、類似の問題が将来も多く出題されると予想されるもの、演習・学習効果が高いと思われるものなどの良問を厳選してあります。
数研出版 実戦 化学の重要問題集 目次より引用
まず、本書のわかりやすい利点として毎年改訂されていることです。さらに教科書を出版している数研出版の傍用問題集なので、誤植も少なくて安心して使用することができます。この点で『化学の良問問題集』は改訂頻度が本書ほど高くありません。しかしながらこの利点はとりわけ大きいものではなく、化学と物理は毎年改訂するほどの変更は正直ありません。物理に至っては20年前の参考書でも通用すると思います。強いて挙げるなら、共通テスト以降の思考力・判断力問題が最近のものでは意識して追加されている程度です。他方で「生物」に関しては物理や化学と比較すると情報の更新頻度が高いため最新のものが推奨されます。※もちろん、全て最新のものがより良い。
次に、レイアウトに関しては特筆するものはありません。見にくいわけでもない。大人であればむしろこうした硬派な紙面に安心感を覚えますが、現役生だと積極的に採用したいとは思えないかもしれません。この点においても進学校向きです。進学校の生徒は勉強への慣れと一定の国語力から参考書への対応力が高く、本質的に役に立つかどうか、簡潔で的を射た解説以外のこだわりは少ないと思います。『1対1対応の数学』で有名な東京出版にしても支持する層は進学校が中心。ちなみに『化学の良問問題集』のレイアウトには多少の工夫が見受けられます。
要項:問題を解く際にポイントとなる化学法則や現象のまとめ
A問題:入試の基本事項を身につけるための標準問題
B問題:応用力を養うためのややレベルの高い問題
巻末補充問題:思考力・判断力・表現力を必要とする問題も収録
※化学を得点源にしたい人は巻末補充問題まで解くことが推奨されています。
本書には合格点を狙うための基礎知識と典型問題が一通り揃えられているため、シンプルに「教科書+過去問+本書」だけでも理論上問題ありません。とは言え、入念に基礎固めする意味で『エクセル化学』などを加えるとより良いと思います。『エクセル化学』は応用問題が国公立二次・私立一般レベルですが、基本的には教科書~入試基礎までを固める目的で使います。本書は過去問に限りなく近い実戦問題の位置づけです。
また、本書は受験勉強に不慣れだと使いこなせない懸念があると述べました。最悪丸暗記に陥って応用力が身につかないのですが、これはそこまで気にしなくても良いと思っています。もちろん、最初から丸暗記を避けられるなら避けるべきですが、おそらく丸暗記に陥るような人は最初から理解を求めるよりもどこかで失敗して考えを修正する方が結果的に早く進めるからです。重要なのは丸暗記によって失敗したあと。それに丸暗記は全くの無駄ではなく、理解の下地にはなっています。どんな形であっても暗記した事実はプラスです。しかもこうした失敗を乗り越えたあとは勉強の質が大きく向上します。
化学の良問問題集との比較
結論から言うと、どちらを選んでもほとんど変わりません。今でも良問問題集は独学で典型問題の網羅性を重視したい人には適していますし、本書は教科書を出版している数研出版ならではの強みがあります。その強みとは、本書が教科書からの接続を意識して設計されており、さらに本書だけで多くの大学入試に対応できる点です。たった2冊で化学を終えられます。そんなことが現実的に可能なのかというと、おそらくAIを活用すれば可能です。AIの活用はアウトプットの質を高められるため、従来ほどインプットを重視しなくて済みます。今はもうアウトプットから簡単に知識を広げ、理解を深められるのです。
重要問題集(重問) | 良問問題集(良問) | |
問題の種類 | 過去問ベース | |
問題の構成 | ほぼ同じ典型問題を取り扱っている | |
章立て | 全18章 | 全15章 |
問題数 | 269題 | 342題 |
論述・記述問題数 | 60題 | 69題 |
ページ | 問題P168+解答P184+付録P32 | 問題P239+解答P239 |
レイアウト | ||
その他 | 改訂頻度の高さから近年の入試問題の取り扱いがある。 | 基礎問題と古い入試典型問題で問題数が多くなっている印象。重問を全体的に少しずつ肉付けしたイメージ。 |
どちらの参考書を使っても過去問や模試で実践的に枝葉を押さえていくことは変わりません。なので、本書と『良問問題集』の問題数は誤差の範疇、実践の偏りをカバーできる差もほとんどないと言って良いと思います。どちらも完璧にできるなら、入試化学の問題は見たことがあるものばかりになります。それでもどちらがオススメかというと、悩ましいですが「重問」かもしれません。毎年改訂していることで最新の入試問題が取り扱われやすく、教科書出版の強み、価格の安さ、終わらせやすい分量と全体的に地味ながらも洗練されています。数研出版の化学の教科書を軸にしているなら重問以外の選択肢はありません。良問は発売されてから1年はまだ良いとしても、それ以降は改訂していない不安がどうしても大きくなっていく欠点があります。先に述べたようにそこまで頻繁な改訂は不要なものの、受験生にとっては少しでも新しい方がより良く感じるでしょう。
AIで解説の行間を埋める
本書に集められている問題は良問ばかりの典型問題ですが、先に述べた通り解説は(簡潔というより)簡素ですから行間を埋めなければなりません。本書に取り組む前に教科書や講義系参考書、エクセル化学などで高校化学全体を概観して基礎用語を入念に押さえたとしても解説は不十分に感じやすいと思います。不十分な解説から教科書や講義系参考書に戻れるならまだ良いとしても、率直にそれは手間ですからサボってしまうと丸暗記の沼に落ちていきます。数学や物理にしてもそうですが、受験勉強に不慣れで化学そのものも苦手な人ほど数多くの説明に触れて多角的な理解を促す必要があります。説明が浸潤しないようなら根本的な国語力を改善。
そこで今は月額3000円ほどで利用できる生成AI(ChatGPTやGeminiなど)がとんでもなく優秀なので、本書のような問題の質は高いが解説に不安のある参考書でも活用できる道筋があります。無料版でも問題なさそうですが、念のため有料版を推奨します。もちろん、AIが意図した通りに答えてくれるようなプロンプト(命令)やパーソナライズを事前に理解しておく必要があるにはありますが、とにかくわからないところを自分なりに質問するだけでも理解は確実に深まります。しかもこうしたひと手間はエピソード記憶として残りやすい。
ただし、質問の肝が押さえられていないうちは逆に効率が悪くなってしまいます。何がどうわからないのか、どこを理解できれば良いのか、何に気づかなければならなかったのか。前提知識となる教科書や講義系参考書の一切を省いて本書に取り組むことを想像したらわかると思います。第一に高校化学全体を俯瞰できる程度の下地はつくっておくこと。その下地が万が一AIの答えが間違っていたときに気づくアンテナとしても機能します。下地は教科書がオススメですが、講義系参考書でも問題ありません。