表現のための実践ロイヤル英文法―レベル・難易度・特徴・評判【レビュー】

タイトル表現のための実践ロイヤル英文法
出版社旺文社
出版年・価格2006/5/25 1980円
著者綿貫 陽、マーク・ピーターセン
目的・分類表現のための英文法
問題・ページ数
(完成日数)
728ページ
総合評価
対象・到達レベル
(偏差値目安)
日常学習
(ALL)
教科書基礎
(40~45)
教科書標準
(45~50)
入試基礎
(50~55)
入試標準
(55~65)
入試発展
(65~70)
※[入試基礎=日東駒専・共通テスト・地方国公立] [入試標準=MARCH・標準~上位国公立(地方医学部含む)] [入試発展=早慶・旧帝大・医学部・一橋・東工大(科学大)]

対象・到達レベル

・高校英文法を一通り終えた人、ライティング向けに文法知識を洗練させたい人

・ネイティブの感覚に近い表現を身につけられる

・日常学習向け、大人の学び直しにも最適

 本書は文法書の中でも有名な『ロイヤル英文法』シリーズの「表現」に特化した文法書です。ネイティブの感覚に近い自然な表現を文法項目別に解説しています。表現と冠しているようにスピーキングでも活用できますが、どちらかと言えば、書き言葉、ライティング向けの内容です。

 以前に紹介した『読解のための上級英文法』と硬めの文章、かつ大学入試に直接的に役立つわけではない点が似ています。大学入試に絞って言えば、本書の解説ほど緻密に仕上げる必要はなく、英作文対策の参考書だけで十分です。

本書の構成

第1章「文」文の構成、文型、品詞・句と節、文の種類

第2章「動詞」動詞の種類、動詞の活用、句動詞

第3章「時制」基本時制、完了形、進行形

第4章「助動詞」助動詞の種類と特徴、助動詞の用法

第5章「態」能動態と受動態、受動態の用法

第6章「不定詞」不定詞の形、to不定詞の用法、to不定詞の基本構文、原形不定詞の用法

第7章「分詞」分詞の形、分詞の用法、分詞構文

第8章「動名詞」動名詞の形と機能、動名詞と現在分詞・不定詞

第9章「法」法の種類、条件文と法、仮定法を用いた重要構文

第10章「疑問詞」疑問詞の種類と用法、間接疑問

第11章「接続詞」接続詞の種類、等位接続詞と接続副詞、従位接続詞

第12章「関係詞」関係代名詞、関係副詞、複合関係詞

第13章「前置詞」前置詞の種類と用法、用法別前置詞の使い分け、動詞・形容詞と前置詞の結合

第14章「名詞」名詞の種類、名詞の数、名詞の格と性、名詞を用いた重要構文

第15章「冠詞」冠詞の種類と用法、冠詞の位置と省略

第16章「代名詞」人称代名詞、指示代名詞、不定代名詞

第17章「形容詞」形容詞の種類と用法、数量形容詞

第18章「副詞」副詞の種類と形、副詞の用法と位置、注意すべき副詞

第19章「比較」比較変化、比較形式、比較を用いた慣用構文

第20章「時制の一致・話法」時制の一致、時制の一致の例外、話法の種類、話法の転換

第21章「否定」否定語句、否定構文

第22章「一致」主語と動詞の一致、その他の一致

第23章「倒置・省略・強調・挿入」倒置、省略、強調、挿入

第24章「文の転換」文の種類の転換、主語の転換

※本書には例文暗記を収録した音声CD付きのものもあります(300例文)。

 EVERGREENなどの文法書と構成は似ていますが、常に表現を念頭に置いた解説になっている点が異なります。例えば、「~について」の「about」も、論文のような硬い文章においては「on」が使用される傾向にあるなどは一般的な文法書にはあまり記載されていません。参考までにmayの用法について引用しておきます。

mayの用法

(1)許可「~してもよい」

canより形式ばった言い方。許可を求める場合にはcanよりも丁寧であるが、相手に許可を与える場合には横柄な印象を与えることもある

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Helpful Hint 20 maybeと「たぶん」

 副詞のmaybeは, <可能性を表す助動詞may+be動詞>なので, 意味もそのとおり,「~の可能性がある」ということにすぎない。それでも, なぜか,「maybe=たぶん」と暗記している日本人の英語学習者が多いようである。これは英語の現実とはかけ離れた誤解である。たとえば、来年あたり富士山が爆発する可能性はまったくないわけもないので, “Maybe, Mt.Fuji will erupt next year.”(富士山は来年爆発するかもしれない)と言えるが, この英文は「富士山はたぶん来年爆発するだろう」などのような意味には決してならないのである。

表現のための実践ロイヤル英文法 p82-83

 2006年出版当時はこの手の文法書がとても少なかったことから英語上級者や英語科の大学生、英語教員に重宝されました。今でこそ本書の解説にあるような情報は各処で目にするにようになりましたが、文法書ほどの情報量を備え、ライティング能力を伸ばす際の指針として機能するものは未だに本書くらいかもしれません。

 一般的な文法書との違いを挙げると、一般的な文法書では「関係代名詞とは何か?」から始まるのに対して、本書はその点を理解している前提で「関係代名詞が用いられる場面とは」から始まることです。一般の文法書では手の届かない疑問を余すことなく解説しています。ただ、本書の暗記例文300(音声付き)は必ずしも必要なものではありません。

EVERGREEN、一億人の英文法との使い分け

 最初の一冊には、文法全体を押さえられるEVERGREENがオススメです。EVERGREENは600ページを超える分量ですが、わかりやすく解説するために文字数を割いているだけで要点の理解にはそこまで時間がかかりません。本書や一億人の英文法と比較すると、EVERGREENがオールラウンダーの働きをしていることがよくわかります。各4技能のさらなる内容への橋渡しとして理想的な位置づけです。

 このあとはスピーキングを目的にするなら一億人の英文法、ライティングなら本書に接続するのがオススメです。どちらも表現のための文法書なので内容には似通っている部分もありますが、一億人の英文法はネイティブの感覚を紐解く会話に役立つヒントが多く、本書はライティングにおける文法や語のニュアンスの厳密性を押さえていく内容になっています。本書の解説は硬く、学術的な印象を覚える点は好みが分かれるかもしれません。

 そして、一億人の英文法のあとは口語表現辞典などを加えて、ネイティブの表現の理解とストックを進めるのが良いでしょう。日本人にとってはどちらも同じ意味に感じる表現も、ネイティブからすると違和感を抱くものが数多くあります。覚えた単語と文法から無数の表現を考えていくのではなく、ネイティブの常識に合わせて自分の知識を整理する方がより良いと思います。

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