大学受験スーパーゼミ 徹底攻略 英文解釈の技術―レベル・難易度・特徴・評判【レビュー】

タイトル大学受験スーパーゼミ 徹底攻略 英文解釈の技術
出版社桐原書店
出版年・価格2008年~2009年、2018年(超入門)
著者桑原 信淑、杉野 隆
目的・分類英文解釈
問題・ページ数
(完成日数)
200~240ページ
総合評価
対象・到達レベル
(偏差値目安)
日常学習
(ALL)
教科書基礎
(40~45)
教科書標準
(45~50)
入試基礎
(50~55)
入試標準
(55~65)
入試発展
(65~70)
超入門入門基礎
※[入試基礎=日東駒専・共通テスト・地方国公立] [入試標準=MARCH・標準~上位国公立(地方医学部含む)] [入試発展=早慶・旧帝大・医学部・一橋・東工大(科学大)]

対象・到達レベル

・英文法を一通り押さえた人

・英文解釈を多めに取り組みたい人

・超入門も含め、文章が硬く、全体的に英語初心者向けではない

 本書のシリーズは、英文解釈系の参考書の中で最も分量が多いものになります。出版年が古いこともあり、今よりも解釈の技術が必要だった時代特有の詳しさが売りです。英文解釈系の参考書は他に「読解のための英文法」や「英文熟考」などもありますが、解説との相性から好きに選んで問題ありません。解釈に寄りすぎず、手っ取り早く終えたいなら「読解のための英文法」を推します。

 分量の多さは、英文の種類の多さ。本書のシリーズは超入門から「60+70+100+100」の合計330のテーマを扱っています「読解のための英文法」や「英文熟考」はシリーズ合計100テーマくらいです。これは数が少ないから良くないわけではなく、そもそもの英文法をしっかり理解していれば、読解に必要となる解釈はそこまで必要ないという意味になります。試験の得点に必要な解釈の数は多くなく、全文の意味をできるだけ正確に読み解きたい場合にはテーマが多いに越したことはないということ。

 現代受験英語においては解釈に寄る利点はそこまでなく、特に本書の「英文解釈の技術100(対象偏差値65~)」を必要とする人は少ないでしょう。京大志望(英文和訳と自由英作文が重い)だったり、難関大の英文学科志望だったりすれば有用かもしれません。なお、本書は超入門であっても、文章の硬さから易しい印象とはなっていない点は注意が必要です。中学英文法から怪しい人は別の参考書がオススメ。

音声は最も活用しやすいが、時代的な古さと癖はある

 今の時代にCDか。という嘆息は漏れそうですが、本書の音声CDは学習した英文のみが流れる点は評価できると思っています。下手に日本語音声を介さないことで効率的に学習を進められます。英語学習における音声利用は、第一に構造を意識しながら聴くことです。その点において、特に英文解釈系の参考書の音声は使いやすくなくてはなりません。

 本書の最後には今まで学習した英文のみが一覧で並んでいますから、わざわざ該当箇所に戻る必要もなく、学習した構造を頭に思い浮かべながら聴くことができます。この配慮は想像以上に大きく、効果的な音声利用のできない解釈系の参考書はその良さも半減してしまいます。

 他方で、本書で取り上げられている英文が少々古い点はデメリットかもしれません。英文解釈の本質は変わらないとは言え、時間のない受験生にとっては現代的な背景知識を醸成するような英文である方が望ましいでしょう。また、解釈系の参考書は著者によって文に割り振る記号や略語が異なり、さらに本書のような古くからある英文解釈は著者の独特の言い回しなどの癖が出やすい点も注意が必要です。癖の少ない説明を求めるなら『読解のための英文法』が個人的にはオススメです。

2024/05/11に新装版として音声ダウンロード版が出版されました。内容に変更はなく、音声CDからダウンロード形式に変更になったのみです。

英文解釈の本質

 本書のシリーズの中では『入門英文解釈の技術70』『基礎英文解釈の技術100』が使いやすいものになっており、この2冊でほとんどの大学に対応可能です。シリーズ合計330テーマは重く映るかもしれませんが、英文解釈は難関大向けであっても、内容自体は難しくないため一読しておいても損はありません。一読しておけば、読み解きにくい英文と出会った際に辞書として再利用しやすくなります。優先順位を考えるなら『超入門』と『英文解釈の技術100』は省くか、対象レベルと内容の相性を考えると他に優れた参考書があります。

 また、英文解釈は英語学習のルートに組み込まれることが当たり前になっていますが、絶対に必要なものという認識は少々誤解があります。基本的に文法書(EVERGREENやロイヤル英文法)の内容を十分に理解していれば、多くの英文の意味はわかるようになります。その中でも癖のある構造を持ったものは文法書で解読するより、英文解釈を頼りにした方が効率的という話に過ぎません。私たちの日本語と同様に、文法は文法として、実際に用いられる場合には文脈や時代によって構造は変化し、その変化に振り回されないために必要となるものが英文解釈です。

 言い換えれば、英文解釈は英米的な発想を学ぶヒントが散りばめられているものであり、本書のようなシリーズ330テーマは単純に読み物としておもしろいものだったりします。文章との相性が悪くなければ、理解を深められるため、特に大人の学び直しにはオススメです。

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