肘井学の読解のための英文法が面白いほどわかる本

タイトル肘井学の読解のための英文法が面白いほどわかる本
出版社KADOKAWA
出版年・価格2022/2/18 1540円
著者肘井 学
目的・分類大学受験用の英文解釈
問題・ページ数304ページ
総合評価
対象・到達レベル日常学習教科書基礎教科書標準入試基礎入試標準入試発展
※全統模試目安 [教科書基礎=40~45][教科書標準=45~50][入試基礎=50~55][入試標準=55~65][入試発展=65~70]
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部

対象・到達レベル

【対象】
・高校英文法を一通り終えた人、本格的な長文読解前の準備

【到達レベル】
・必修編(偏差値60まで)―共通テスト、日東駒専、成成明学、地方国公立合格レベル
・難関大編(偏差値65まで)―早慶準備レベル 準難関国公立(横国筑波神戸)、MARCH合格レベル

 本書は高校英文法を一通り終えた人(文法的知識、問題演習)を対象に、本格的な英文読解に入る前の参考書です。必修編だけでも多くの英文に対応できるようになりますが、MARCH・準難関国公立に安定合格したいなら難関大編まで取り組みましょう。

本書の構成

【必修編】SVの発見、名詞句、名詞節、形容詞句、形容詞節、副詞句、副詞節、to doの識別、-ingの識別、過去分詞の識別、thatの識別、itの識別、asの識別、接続詞、倒置、省略、強調構文、呼応、ネクサス、挿入、比較、複合関係詞、第4文型、第5文型、SVO to do型、SV A from B型、SV A of B型、SV A with B型、SV A as B型、SV A to B型、SV A into B型、受動態

【難関大編】SVの発見、不定詞の主語、動名詞の主語、付帯状況のwith、強調構文、名詞構文、因果構文、分詞構文、強制倒置、norとsoの後ろの倒置、if節の倒置、as以下の倒置、As~,so…、文型倒置、移動、SVMO、分離、挿入、AというよりむしろB、the+比較級, the+比較級、クジラの構文、譲歩のas、名詞限定のas、関係代名詞のas、関係詞の省略、接続詞の後ろの省略、thoseの後ろの省略、whateverの後ろの省略、共通要素の省略、what if~?、so~that…、so that S 助動詞、連鎖関係詞、名詞・前置詞・関係詞、前置詞・関係詞・不定詞、関係詞の二重限定、第4文型の応用、第5文型の応用、知覚動詞の応用

 英文解釈とは正確な和訳に繋がる知識習得のためのものですから、最難関国公立を中心に、和訳問題が頻出する大学なら本書よりも難しい参考書に手を伸ばす必要があります。その際は『英文熟考』や『英文読解の透視図』、『ポレポレ』などがオススメです。

 本書は『読解』のための英文法なので、文章の大まかな意味を理解して設問に答える程度の難易度に設定されています。全体的にコンパクトにまとまり、初学者でも取り組みやすい難易度と言えるでしょう。

【音声が使いやすい】本書の最後にそれまでに解説した例文が一覧で並び、英語のみの音声はとても使いやすいと思います。英文読解系の参考書は性質上、構造を漏れなく被りなくまとめているため、音声の利用価値は単語帳のものに比べて高いです。

本書の欠点と相性

 本書の必修編は最初の一冊に積極的に薦められるくらいにオススメですが、全体的に解説はあっさりしていると言えばあっさりしているため、本書に取り組む前に『総合英語』と『文法問題集』でしっかりと「文法+α」まで押さえておくと円滑に接続できると思います。

 本書は懇切丁寧な解説というより、難しい印象を与えない配慮のもと解釈の要点を簡潔にまとめている参考書です。そのため、本書に取り組む前の状況次第では、簡単そうに見えるがゆえになんとなくの理解に終始して、英文解釈の重要な基礎部分を疎かにしかねない懸念は確かにあります。他方で竹岡先生の『入門問題精講』や『英文熟考』などは読者に考えさせる構成と言い回しが長所としてあり、本書と比べると英文解釈らしい思考を要求しています。

 この辺はどちらが優れているかというよりは相性の問題が大きい気がしますが、解釈はパターンと割り切り、あまり時間をかけたくないなら本書がオススメです。本書はあくまで「読解のため」であり、英文熟考などは「和訳のため」と考えたらわかりやすいかもしれません。

どこまで英文解釈をするべきか

 何のために英文解釈を勉強するのか。また、どこまで英文解釈を勉強すれば良いのか。この疑問は受験生なら誰もが考えたことがあるのではないでしょうか。その答えは正確な和訳をどれほど要求されるかに依ります

 先に述べたように和訳問題が出題される大学なら英文解釈に力を入れた方が良い。特に難解な文章の和訳には相応の知識が必要になります。しかし、文章の大意が理解できれば十分に得点できる場合、試験で差が出やすい要点を効率良く押さえおけば十分です。この点を重視するなら本書を選ぶ価値があります。

 英語は言語であり、文章を読むなら正確に理解したいと思う気持ちが誰にでも芽生えるものですが、英文解釈の先の先にあるものが翻訳、一般的な受験生には終わりがないと言っても過言ではない領域です。巷で早慶なら『英文読解の透視図』まで取り組む方が良いと語られていたとしても、実際に英文を読み、明らかに解釈の力が足りないと感じたときに初めて検討しましょう。必要なら取り組むものであって、やればやるほど得点が伸びるわけではありません。常に目的に合わせた過程を、アウトプットの結果からインプットを検討する逆算的な思考が受験においては大切と思います。

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