英文読解の透視図―レベル・難易度・特徴・評判【レビュー】

タイトル英文読解の透視図
出版社研究社
出版年・価格1994/1/20 1540円
著者篠田 重晃、玉置 全人、中尾 悟
目的・分類難関大向け英文解釈
問題・ページ数
(完成日数)
248ページ
総合評価
対象・到達レベル
(偏差値目安)
日常学習
(ALL)
教科書基礎
(40~45)
教科書標準
(45~50)
入試基礎
(50~55)
入試標準
(55~65)
入試発展
(65~70)
※[入試基礎=日東駒専・共通テスト・地方国公立] [入試標準=MARCH・標準~上位国公立(地方医学部含む)] [入試発展=早慶・旧帝大・医学部・一橋・東工大(科学大)]

対象・到達レベル

・入試標準レベルまでを十分に終えた難関大志望者

・硬い文章への抵抗感が小さい人

・受験英語における難解な文構造でも自信を持って理解できるようになる

 本書は1994年に出版されたものですが、ポレポレ英文読解プロセス50と並んで未だに難関大志望者に支持されている英文解釈系参考書です。その内容は文章こそ硬いものの、数学で言うところの入試数学の掌握のように確かな手ごたえを与えてくれる良書となっています。万人受けしやすいであろう読解のための英文法などと比べると、本書は著者との相性が出やすいとは思いますが、読者を唸らせる濃密、かつ説得力のある文章に単純な読み物としても薦められるものになっています。

本書の構成

はじめに
本書の構成と使用法
テーマ一覧

第1章 英文構造の透視図
第1講 要素の確定・移動
A)S+V+副詞句+O,S+V+副詞句+Cの構造
B)O+S+Vの構造
C)C+be動詞+Sの構造
D)S+V+C+Oの構造

第2講 成句的動詞表現とその後続要素の確定
A)S+V+A+前+Bの構造の確定
B)成句的動詞表現の後続要素の移動

第3講 接続詞 and/but/or の結ぶもの
A)文構造上確定できる場合
B)文構造上確定困難な場合

第2章 省略・倒置・挿入・強調の透視図
第1講 省略
A)共通語句の省略
B)接続詞の後のS+Vの省略

第2講 倒置
A)強制倒置の生じる場合
B)その他の倒置

第3講 挿入

第4講 強調
A)強調構文の考え方
B)強調構文の見分け方

第3章 仮定法・比較表現の透視図
第1講 仮定法の諸問題
A)仮定法における条件節表現
B)仮定法と助動詞の問題

第2講 比較表現全般における諸問題
A)比較対象の確定
B)比較対象の省略
C)as/than 以下の倒置
D)比較対象の前方への繰り出し

第3講 重要比較表現における諸問題
A)最上級的意の内在
B)no+比較級+than … の研究
C)the+比較級 … , the+比較級~

卒業編
卒業問題

※本書は一般的な英文解釈系の参考書と同様に、テーマ別(全48回)に例文があり、それを解説する形になっています。

 1994年と言うと、まだまだ早慶の英文は複雑な文構造が難易度の中心であったと言っても過言ではありませんでした。難単語(熟語、構文)、マニアックな文法、論理パズル的構造が問題を難しくしていたのです。その中で本書の役割と言えばいかにして複雑な文構造を簡潔にするかに重点が置かれ、本書の内容を十分に理解できれば現代受験英語においては特に文構造の理解に困ることは一切なくなると語られるほどです。

 ただ、本書は誰にでも扱えるものではなく、硬い文章を正確に読み解ける国語力に加え、目下の課題が複雑な文構造の理解に絞られた早慶志望のみが扱えるものになっています。誰にとっても英文解釈系の参考書は読み物として単純におもしろいのですが、本書のような最難関大向けの英文解釈は表面的な理解すらままならないことが少なくないように思います。

ポレポレ、読解のための英文法(難関大編)、英文解釈の技術100との比較

 難関大向けの英文解釈は他に『ポレポレ英文読解プロセス50』、『読解のための英文法(難関大編)』、『英文解釈の技術100』あたりが候補に挙げられます。これらを難易度順に並べるとすれば、最も易しいのは『読解のための英文法(難関大編)』です。こちらは別記事にて述べた通り、難関大編と謳いながらもそれほど難しくありません。

 本書と他2冊は同じ程度の難易度ですが、本書がやや難しいものになっているかもしれません。難関大志望ならどれか一冊を十分に読み込めば対応できます。シリーズの一貫性と段階的な理解を求めるなら『英文解釈の技術100』がオススメですポレポレは入門レベルに『英文読解入門基本はここだ!』が出版されているのですが、2冊の難易度があまりに離れているためにシリーズとして考えない方が無難です。本書とポレポレは特に最難関私立の受験生にピンポイントに刺さる参考書になっていると言えます。

 総じて私立の方が入試“英文”の難易度は高い傾向にありますから、国公立志望は東大であっても本書に取り組む意義はそれほどありません。ただ、東大を受験する層にとっては「本書こそがわかりやすい参考書」と評価するであろう内容になっているのも事実です。少なくとも受験英語の範疇にある英文解釈ならば、一読しておくだけで読了前よりも英語が簡明に見えてくる利点は間違いなくあります。難関大の問題を解けるだけの力はあるにはあるが、もう少し余裕を持って読解したいという人にはちょうど良いものになっているでしょう。

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