| タイトル | 英作文のトレーニング[はじめる編] [必修編] [実戦編] [自由英作文] | |||||||||||
| 出版社 | Z会 | |||||||||||
| 出版年 | 2017/3/13 | |||||||||||
| 著者 | (はじめる編)渡辺 寿郎、(必修・実戦編)Z会編集部、(自由英作文)成田あゆみ | |||||||||||
| 目的 | 大学入試向け英作文対策 | |||||||||||
| 対象 | 現役生から大人の学び直しまで | |||||||||||
| 分量 | [はじめる編]264ページ [必修編]232ページ [実戦編]304ページ [自由英作文]260ページ | |||||||||||
| 評価 | ||||||||||||
| AI | 英作文のチェック | |||||||||||
| レベル | 日常学習 | 教科書基礎 | 教科書標準 | 入試基礎 | 入試標準 | 入試発展 | ||||||
※入試基礎=日東駒専、地方国公立 入試標準=MARCH、関関同立、準難関国公立(地方医含む) 入試発展=旧帝大上位、早慶、医学部
加筆修正の履歴
2025/10/29 全体的に読みやすいように大幅な加筆修正をしました。
和文和訳から始まるシリーズ4冊の英作文対策
本書は2017年にZ会から出版された英作文対策の参考書です。本書シリーズは4冊あります。はじまる編は和文和訳から始まり、必修編で典型表現を押さえつつ、実戦編と自由英作文編で難関大対策が行えるようになっています。大学入試の英作文対策は数多く出版されていますが、英作文と言えば竹岡先生、その中でも『英作文が面白いほど書ける本』がおそらく2025年現在では最も有名です。それに対して本書は2017年出版と古くなりましたが、シリーズ4冊の長所を強調するように丁寧な解説は大人の学び直しにもオススメの一冊になっています。
そもそも英作文対策における和文和訳とは何か。これは英訳しやすい日本語に一度変換することです。例えば、以下の引用を参考にしてみてください。
朝刊が休みの日は手持ちぶさただ。いつもはあわただしい朝の時間が特に長く感じられる。しかし, 朝のコーヒーを楽しみ, 駅までゆったりと歩けるのはこの日だけだ。休刊日もまんざら捨てたものではない。
改訂版 英作文のトレーニング 実戦編 P164より引用
これは実際に京都大学で出題された問題です。京都大学の英作文の難しさは昔から有名で『京大入試に学ぶ 和文英訳の技術』といった参考書が出版されているほどですが、その問題文の和文和訳となるポイントは「手持ちぶさた」や「まんざら」になると思います。これらの日本語をどのように英語で表現するか。本書では「手持ちぶさた→することが何もない」や「まんざら→余分な時間をどう扱っていいかわからない」という考えを提示しています。このように同じ意味を逸脱しない範囲で変換することで英作文しやすくなっていますよね。
また、和文和訳の説明で気づいた方もいるかもしれませんが、和文和訳は英語力というより国語力です。本書の「はじまる編」では難解な英訳特有の和文和訳の解説から丁寧に始まっていますが、英作文の参考書によっては軽く触れる程度でほとんど省いているものもあります。それは難関大を想定しないなら和文和訳はほとんど不要と言って良いからです。入試基礎レベルまでなら問題文の意図さえ掴めたら直感的に英訳できるものばかりと言えます。
本書の構成
| 【はじめる編】 | [講義編]和文和訳、文法的に書く、発想を変える、簡単に書く、95%訳出する [文法確認編]時制をマスターしよう、主語と動詞の一致に気をつけよう、可算・不可算と冠詞を連動させよう、5文型を征服しよう、助動詞を活用しよう、受動態を使う時、準動詞は圧縮した文、仮定法は空想ムード、代名詞は小粒でも光る、比較は面白いよ、前置詞は名詞とタッグ、関係詞は使う、接続詞で節を作る、強調・否定・無生物主語を書く [重要表現編]特によく出る表現、特に区別が必要な表現、特に誤りやすい表現 |
| 【必修編】 無料音声ダウンロード可能 例文集あり | [第1章]主語をどうするか [第2章]どの文型を使うか [第3章]単数か、複数か、冠詞はどうするか [第4章]どういう動詞を使うか [第5章]時制をどう処理するか [第6章]修飾表現についての注意 [第7章]準動詞を使いこなす [第8章]関係詞の正しい使い方 [第9章]仮定法か事実の描写か [第10章]受動態か能動態か [第11章]否定表現を使いこなす [第12章]比較・比例の表し方 [第13章]文の組み立て方 |
| 【実戦編】 無料音声ダウンロード可能 例文集あり | [標準編]例題1~30 [上級編]例題31~65 [自由英作文編]例題66~70 ※全て大学の過去問 |
| 【自由英作文編】 | [解説編]自由英作文とは何か、論理的な英作文とは何か、解答の組み立て方(賛否型)、ディスコースマーカー、賛否型以外での解答の組み立て方 [研究]賛否の表現、提案の表現、名詞節を使いこなす、a manか, the manか、イラストや写真の説明に便利な表現、手紙やメールのフォーマット、増減の表現、コンマ・コロン・セミコロンの使い方、何を主語にするか、感情を表す表現、無生物主語、高い/低い・多い/少ないの形容詞と名詞、現在完了か・現在形か・過去形か [問題編]標準問題・資料問題・発展問題 |
本書は基礎から丁寧な解説になっているとは言え、シリーズ4冊は大学受験レベルとしてオーバーワークの可能性があります。もちろん、本書シリーズを完璧に終えられたら入試英作文は満点を獲れるでしょう。しかし、現実的に英作文対策は前述した『英作文が面白いほど書ける本』の1冊で終えて、わからない問題が出ても部分点をかき集める方針が受験戦略としては採用しやすいと思います。もし、本書シリーズで英作文対策をするなら高校1年生からじっくりと取り組める場合のみと言って良いかもしれません。それほど細かなニュアンスもできるだけ正確に拾い上げながら解説しているため、内容の理解はできても身につくまでにはかなりの時間を要します。
ただ、2026年以降の入試英語は難化が予想されている上に、共通テスト以降の実用英語重視の流れからもライティング領域に手を入れていく可能性はあります。2025年現在でも入試英語は語数の多い長文からわかるように、制限時間の厳しさは一昔前より明らかに上です。それに合わせていくのであれば、本書はとても良い選択肢になっています。
英作文がもたらす効果とAIによるチェック
英語学習は四技能を意識した方が伸びるという意見を聞くことがあります。これは個人的にも大いに賛同できる方針です。ライティングの場合、実際に自分で書いて表現することで責任感が芽生え、正確な知識の定着を促します。リーディングのみではなんとなく読んで満足しがちですが、ライティングではスペル間違いにさえ神経を尖らせ、ネイティブも違和感のない表現やニュアンス、論理展開が身につくことによって英米的な発想にも大きく近づけます。
また、ライティングの観点から知識の関連づけが増えると、単語や熟語の暗記も捗ります。特に熟語は覚えにくいと感じている人が少なくないため、実際に自分で表現することによって定着を促した方が効率が良いと思います。個人的には「句動詞(=動詞+前置詞/副詞)」を覚えるならスピーキング、難関大頻出の熟語のような硬い単語や熟語はライティング、特に自由英作文の効果が大きいです。
そして、英作文の学習をするならAIによるチェックと知識の拡張を積極的に行いましょう。昔なら辞書を引くように、今ならAIとの対話がエピソード記憶を促進します。英語に関することは下手に日本人に聞くよりもAIに聞いてしまう方がもはや早くて正確です。AIの信憑性が気になることもないわけではありませんが、それはプロンプトの問題に帰結することも多く、個人的には大学入試レベルなら問題ないと言ってしまって良い気がします。少なくとも本書のような参考書との連携で十分と言えるはずです。


